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不可怪な事件②

 

 一登の家を後にした三人は再びホテルのスイートルームへ戻った。羽川はノートパソコンを開き何か作業をしており、小鳥遊と夜凪は一登の部屋で手に入った情報をまとめていた。


「とりあえず、秋山と同じように一登は行方不明になったと考えて良さそうね」


 小鳥遊は頭の中でわかったことを順序立てながらそう話した。


「あぁ。しかもオカルト同好会のブログとやらに、あいつのノートと同じことが書かれてたな。そいつが犯人なんじゃねぇのか?」


「うん、犯人じゃなくても何か知ってるかもしれない。あのオカルト同好会の管理者に話が聞けたら良いんだけど」


「なら、あれだな。もう一つ記事があっだろ、それを見せてくれ」


 夜凪にそう言われ、小鳥遊は写真に収めたその記事を見せた。


「これだ。5月25日の18時にオカルト同好会の集まりがあるって書いてるだろ、そこに乗り込めばいい」


「私達、会員じゃないけど大丈夫かな?」


「何とかなるなだろ」


 そんな話をしていると、羽川がパソコンを閉じ、口を開いた。


「二人とも、実はまだ君達に話していないことがある。それは、警察でも機密情報なんだ。今からそれを言うからよく聞いて欲しい」


 二人は頷いた。羽川は話を続けた。


「最近、広範囲で連続強盗事件があったのを覚えているかな?」


 小鳥遊達もこの事件は知っていた。強大な犯罪組織が日本各地で強盗をはじめとした様々な犯罪を引き起こしていた事件だ。少し前に組織の幹部が逮捕され、全国ニュースでも大々的に報道されていた。


「2月8日、強盗などの犯罪を指示していた組織の幹部三人が日本に強制送還され逮捕された。まだボスは捕まってないんだけど……まあ、その三人についてだ。実は3月2日より、署内で行方不明となっている。脱走の痕跡はなかった。ボスに口封じに消されたとかみたいな噂はあるけど、現在も謎のままだ。世間への発表は伏せているし、この事件に関しても上は捜査を中止するように言っている。つまり、私はこの連続強盗事件が秋山さんの調べていた行方不明事件と関連していると踏んでいる」


 小鳥遊達にとって初耳の情報だった。秋山が調べていた行方不明事件がこんな大事になっていたとは予想していなかった。羽川は続けて話した。


「君達には主に、超常現象的な事柄について調べてもらいたい。私も協力する。組織の幹部は私のおかげで捕まったようなもんだからね、いくらでも聞いてくれ」


 羽川の話を最後まで聞いた夜凪は口を開いた。


「あんたも物好きだな、俺たちにこんな機密情報を話してまで協力を依頼するなんて」


 確かに、私達にこんなに情報をくれるなんてありがたい話だと小鳥遊は思った。


「私達も有名になったってことじゃない?」


 小鳥遊がそう言うと、羽川は軽く笑って答えた。


「物好きじゃないと解決できないこともあるんだよ」


 そして、羽川は一枚の写真を取り出した。


「これがこの犯罪組織のボスだ。元々フィリピンにアジアを構えていたそうだが、今はフィリピンを脱出し行方をくらましているようだ」


 写真には細身ながらも鍛え上げられた体をもつ男が写っていた。上裸に青のジャケットを羽織っており、髪は肩につくくらいの長さをしている。


「いかにもボスって感じの風貌ね」


 奇抜な見た目と、静かな迫力のある顔などから小鳥遊はそのような感想を抱いた。


「私の方から伝えておくことはこれくらいかな。ちなみに、この部屋は一週間くらい借りてあるから好きに使ってくれていいよ」


「え、ここスイートルームだよ? いいの?」


 小鳥遊は驚いて聞き返した。


「うん」


「わーい、太っ腹!」


 スイートルームに入ったことすらない小鳥遊はとても喜んでいた。


「じゃあ夜も遅いし、今日は私は帰らせてもらうよ」


「待て」


 羽川がそう言って、荷物をまとめようとするのを夜凪が止めた。


「連絡先を交換しておかないか?」


「ああ、そうだね。忘れてたよ」


 羽川は紙を取り出して夜凪に渡した。紙には羽川の電話番号とQRコードが載っていた。


「小鳥遊、グループを作って羽川のを入れといてくれ」


 夜凪はそう言って、小鳥遊に紙を渡した。


「じゃあ、私はこれで。何かあったら連絡してくれ。私の方でも捜査を進めておくよ」


「ありがとねー、羽川さん。また明日ー」


 小鳥遊に見送られ、羽川はスイートルームを後にした。




 羽川がいなくなったところで、小鳥遊は夜凪に尋ねた。


「さて、私達はどうしよう?」


「俺はここで寝る」


 夜凪はソファに転がった。


「え、もう寝るの? 明日のこととかは」


「とりあえず寝てからだ。後、羽川のことだが……悪意はなさそうだ。今のところ心配はいらないだろう」


 そう言って、夜凪は目を閉じた。


 折角なので、小鳥遊もスイートルームに泊まることにした。時間も時間なのでまた明日調べることにし、ベッドに転がった。


 秋山の残したノート、行方不明になる方法、強大な犯罪組織との関連性、そんな今日手に入れた情報について考えているうちに小鳥遊は眠りに落ちた。




 眠りについてしばらくしたころ、小鳥遊はある夢を見ていた。それは、皆で対戦ゲームをしている夢だ。


「おまえずっと一位じゃねーか」


 これは秋山の声かな。


「じゃあチーム戦でもやる?」


 小鳥遊は夢の中でそう答えた。


 そんな夢を見ていたところで、小鳥遊は目を覚ました。




 今は25日の朝。


 小鳥遊は起き上がった。なんだか懐かしい夢を見ていた気がするなと思いながら、。身だしなみを整えた。ソファの方を見に行くと、夜凪はまだだらりとして眠っていた。


「朝だよー」


 小鳥遊がそう言っても起きる気配はない。


「私、ビュッフェ食べに行ってくるからねー」


 小鳥遊はそう言って部屋を出た。


 羽川がスイートルームをとってくれていることもあり、小鳥遊達は無料で朝食ブッフェを食べられるようだ。


 ブッフェの場所には、朝食らしい様々なメニューが並んでいた。


「いっぱいあるなー。とりあえずは、鮭と白飯ね」


 美味しそうな料理を取り終えた小鳥遊は、席についた。そして幸せそうな様子でそれを食べていた。


 少しして、小鳥遊のスマホが鳴った。スマホを見てみると、グループに羽川からのメッセージが送られていたようだ。


 開いてみると、どうやら昨日の夜に夜凪が羽川に一つを依頼をしていたようだ。内容は行方不明者の身辺情報を調べて欲しいとのことだった。


 それに対する羽川の返信はこうだった。


『5月6日の行方不明事件も、パソコンをおいて行方不明になったそうだ。同じ関連とみていいだろう。でも、行方不明事件だけでみると量が多すぎてこれ以上調べるのは難しい』


 やっぱり、単に行方不明事件となると絞るのが難しいようだ。それでも、調査を続けていればこの不可解な行方不明事件を解決できるはずだ。


「さて、今日はどうしよう。とりあえず拠点に戻ろうかな」


 小鳥遊がそう呟いた。


「そうか」


 そう言って水を持った夜凪が、小鳥遊の横に座った。


「あれ、いたんだ。なんか食べてけば?」


「いい、腹は減ってない」


 夜凪はそう言ってスマホを取り出し、グループにメッセージを打ち込んだ。


『了解。一応、オカルト同好会についても調べておいてくれ』


 夜凪はスマホをポケットにいれ、水を飲み干し、口を開いた。


「昨日言った通り、今日はオカルト同好会の集まりに乗り込む。それでいいだろう?」


 ちょっと気が引けるけど、現状できることとしてはそれが良さそうだ。


「うん。じゃあ、そのためにもブログに書いてあった暗号みたいなのを解かないとね」


「あぁ」


 小鳥遊と夜凪はその場を後にし、深怪究明団の拠点へと向かった。




 小鳥遊と夜凪は拠点についた。拠点には皆で遊ぶためのゲーム機やボードゲームだけでなく、今まで調べてきたオカルト関連の本や暗号関連の本など様々なジャンルの本が置いてある。また、机の上には、ついこの間の儀式のための通り魔事件解決後に撮った写真もある。秋山はそのときは病気でダウンしていたため、写っているのは小鳥遊と夜凪の二人だけだ。


「じゃ、頼んだ」


 夜凪はそう言ってソファに座った。


 小鳥遊は暗号関連の本を何個か読み漁った。その中に、ブログの暗号に使われていると思われるものがあった。それは、スキュタレーだ。暗号文を棒などに巻きつけ、文字を一定間隔とばして読むことで解読できるものになっている。


「スキュタレーね、また面倒くさい方法を……」


 小鳥遊はブログに載っていた暗号文を紙に書き、適当な棒に巻きつけた。文字は次のような三列になった。


TEIKOKU

HOTELTY

PREMIRE


「帝国ホテルプレミアか?」


 席を立ち、横から見ていた夜凪がそう言った。


「TYというのは東京かな? ちょと調べてみるね」


 小鳥遊はスマホを取り出し、検索してみた。すると、帝国ホテル東京に一部屋プレミアルームがあることがわかった。


「ここで間違いなさそうね」


「ああ、後は18時に乗り込むだけだ」


「羽川さんにも連絡しとくね」


 そうして、オカルト同好会が集まる場所が判明した。




 そして気がつくと、時間はもう12時を回っていた。


「お腹すいたー、ラーメンでも食べに行こうよ」


 小鳥遊はそう言って、昼食に夜凪を誘った。


「気分じゃないんだか……」


「チャーハンくらいなら奢ってあげるわよ?」


「冷やし中華でいい」


「今5月だけど?」


 そんな話をしながら近くのラーメン屋へと向かった。メニューには、なんと冷やし中華が存在していた。


「本当にあった……」


「じゃ、お前の奢りな」


 昼ご飯を食べながら、小鳥遊は口を開いた。


「昼はどうするの?」


「今食べてるだろ」


「何するかって話よ、ばか」


「考えてないな」


「あ、大将! 替え玉一つ」


 小鳥遊は元気よく追加の替え玉を頼んだ。


「……よく食うな。太るぞ」


「どうせバイトで猫ちゃんとか追いかけるし大丈夫よ」


 すでに冷やし中華を食べ終えた夜凪は暇そうにして小鳥遊が食べ終わるのを待っていた。


「あ、さっきの話だけど。私、チェスの方法途中まで試してみようかな」


「俺はそこらへんぶらついとくよ……何かあったら連絡しろ」


 そうして、店を出た二人は一度別れ、小鳥遊はスイートルームへと戻った。




 ホテルに戻った小鳥遊はパソコンを取り出した。秋山のノートや、オカルト同好会のブログにあった方法を試すためだ。


「パソコン苦手なのよねぇ」


 小鳥遊はそう言いながらパソコンを起動し、オンボードへとアクセスした。


「チェスのロビー666……、たしかDuckHunt」


 小鳥遊は例の方法の通りにして、ロビーに入った。しかし、30分ほど経っても誰もロビーには入ってこなかった。


 秋山のノートでも何も起こらなかったときがあったみたいだし、何か条件でもあるのかもしれない。小鳥遊はそう思い、秋山のノートの写真をよく読んだ。その中に気になる文があった。それな次の一文だ、


『13日や6日にも行方不明事件があったようだ。俺の仮説が正しければ、20日だ』


 この文によると、秋山は7日ごとにそれが発生すると考えたのかもしれない。そして実際に、秋山は20日の13時45分にそれに成功し、行方不明となった。そう考えれば、次にこれが発生するのは27日、つまり明後日となる。


 そう考えた小鳥遊は、この方法を試すのをやめた。


「あ、そうだ。そういえば私たち活動してから結構立つけどネットでなんか言われてたりするのかしら」


 小鳥遊はネットで深怪究明団を検索してみた。しかし、特に深怪究明団に関することは出てこなかった。


「まだまだそこまで有名になってないかぁ」


 小鳥遊はパソコンを閉じた。


 オカルト同好会の集まりまではまだ時間がある。小鳥遊はソファでベットでゴロゴロしていたが、ふと思い立った。もうすぐ結成一周年なので、深怪究明団今までの活動をまとめてみようと。


 小鳥遊は紙を用意し、そこに今までの深怪究明団の活動内容を書き出した。




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2022年

5月28日 グループ結成

7月15日 東京で吸血鬼を討伐

9月20日 京都で妖怪と共に疫病神撃退

11月20日 小笠原諸島にて、地球外生命体による島の壊滅を阻止

12月1日 千葉にて、山岡の大魔術師ルインの書の私的利用を阻止


2023年

1月6日 長野県の魚人のアジトをつきとめ、討伐

2月10日 グール使いを探しにフィリピンに乗り込む、特に何もなく旅行で終わる

5月23日 儀式のための通り魔事件を解決



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 こうやって書き出してみると結構私達頑張ってるなぁ、と

小鳥遊は思った。そのとき小鳥遊は思い出した。そして、夜凪に個人でメッセージを送った。


『私達の秘密の質問、羽川さんにも言ったほうがいいかな?』


 秘密の質問とは、深怪究明団内で決めた質問と答えだ。身内を確認するために作ったものだが、今のところ出番はない。質問と答えは次のようになったいる。


【夜の星は何処へ流れるか】

【山に沿い、海へと消える】


 何故このよう秘密の質問になったか小鳥遊はあまり覚えていなかった。けれども、深怪究明団の皆と関係あるような形でこうなったような気がしていた。


 少しすると、夜凪がら返信が来た


『別に言わなくていいだろう』


 小鳥遊はそれを見て、別に使うこともないかと思った。


 少しして、グループの方に羽川からのメッセージが入った。


『オカルト同好会だけど、警察内でマークしてる要注意団体とかではなさそうだよ。特に情報もなかった』


 小鳥遊は時刻を確認した。オカルト同好会の集まりがある18時まであと1時間ほどだ。


 小鳥遊は荷物をまとめ、スイートルームを出た。


 


















 


 


 


 



 

 

 

 

 

 





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