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1話 凪ぐ海、賑わう港

 満身創痍になりながらも身を起こした少年が這うように倒れている大男のもとに寄り、その首に掛かっていたメガホンのようなものを手に声を張り上げる。


「魔王・イドンを…たった今、リターウ国・リンガ島出身…レン・ナイトレイ、及び同地出身…カイ・オオノ、そしてリターウ国・リンダオ島出身、オーヴィル・テーズが…打ち倒した!…魔王の時代は……もうだめあと頼むわ。」

「…続きは言わねぇぞ。俺も…もう限界だ、寝る。………ごがぁああああああ…。」


 大男…魔王の打倒を宣言した少年、レンは次の言葉を紡ぐ体力も尽きたのか再びその場で倒れた。次に声を発したのは少年のすぐそばで倒れていた全身の筋肉が持ち味の少年、オーヴィルに至っては立ち上がる気力すら残っていなかったらしくそのままいびきをかいて眠ってしまった。

 その場にいて唯一意識を失っていなかった少女、カイがレンの言わんとしたことを引き継いだ。


「今の言葉通り、私たちの手により、魔王は打ち倒されました!私たちの国は…魔王の手から人の手に戻ったのです!」


 しばらくの間静寂が場を包み、それから遠くからの歓声が四方八方から聞こえた。カイは重くなる瞼を辛うじて開きながら言葉を続けた。


「もう怯えなくていいんです!命も、暮らしも、魔王に脅かされることはないんです!…目指しましょう。人が人らしくいられる国を。」



 さらに大きくなる歓声を聞きながら機械の電源を切ると群青に染まる空を見上げて呟いた。


「一年か…長かったけど…やっとだ、やっと…。」


 彼女は回想する。ここに至るまでの物語を。そしてそれは夢の中にいる二人も同じく…。

 遡ること一年と二ヵ月前、所はリターウ国・リンガ島、北西の港町。北西の港はリターウの首都・リンダオ島に直行できることや島にない者が手に入りやすいことから人の往来が盛んで、リンガ島では役場がある南部に匹敵する賑わいを見せている。

 町の港から少し離れた浜に一隻の舟が着く。船の主である少年・オーヴィルは箪笥と同じくらいの大きさの箱を軽々と持ち上げて船を出た。ちなみに箱の中身と合わせると重量およそ600㎏、本人は軽々と持ち上げているが、歩くたびに大きな音を立てている。誰も手伝わないのは、これが()()()()()()になってしまっているからだろう。市場の長老がいることに気付くと小走りでそちらに向かった。


「よぉ爺さん!これどうすりゃいい?」

「よぉ兄ちゃん。そこに置いといてくれ。中身確認して代金払うまでいつも通りにしてて大丈夫だぞ。」

「はいさー!」


 ドスン…と重量のある音が辺りに響く。手についた埃を払い背伸びをする。手を下ろしてきょろきょろとあたりを見回し、目的の人物がいないことに気付く。目が合った漁師を手招きして聞いた。


「なあマイルズのおっさん、あいつどこ行った?」

「あいつか、工房に籠ってるんだろ。俺もここ一週間くらい顔見てねぇんだ。」

「…あぁ、そういうことか。サンキュー。」


 心当たりがあったオーヴィルは満足気な表情で礼を言うとそのまま南の方へ駆け出した。北西の町から南方向に10分進むと海に面した小高い丘がある。その丘に建つ大きな屋敷の隣に、これまた一つ小さな屋敷のような建物があった。『ナイトレイ工房』…そこが彼が目的とする人物の住む場所だった。

 鉄製の門をノックするとメキ、バキ…と不穏な音が鳴り、それからしばらくして門が開いた。


「よぉ、この間リクエストもらったアレ、まだ完成してないぜ。まあ進捗だけでも確認したいってことなら遠慮なく入ってくれ。」

「おう!」


 煤で全身が真っ黒に染まった少年が出迎える。彼こそがオーヴィルの目的の人物であるナイトレイ工房の家主兼職人、レン・ナイトレイである。

はじめまして、朧の夢です。

展開としてはある程度王道のファンタジーバトルストーリーを目指しています。1話で出てきた人物の大半は今後重要な存在になってくるので(フレアのことも含めて)覚えていてくだされば幸いです。

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