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〈4〉教会と神啓と駄神と

〈4〉



「ディナ、6歳の誕生日おめでとう」


「ディナ、おめでとう」


「お父様、お母様、ありがとうございます♪」


 お父様とお母様から御祝いの言葉を贈られ、私は2人ににっこり微笑みを返します。勿論家族だけでは無く何人かの貴族の方達も見えられていて、中には見知った顔の人── 例えばリンドリー侯爵様の姿も見受けられ、口々にお父様お母様と私の所まで来て祝辞を述べてくださります。執事のレイエスやメイドさん達に、エミリオ君も一斉に拍手を送ってくれています。


 そうです! 今日は私の6回目の誕生日なんです! まだ6年されど6年、色々と中身が濃かった気がします──何だか随分と年寄りくさい物言いですね?! まぁ実際転生前から数えたら年齢的に恐ろしい事になりますけど!!


「さて、ディナよ」


 皆んなが(しず)まるのを待って、お父様が私に語り掛けます。


「6歳を迎えたと言う事は、お前は一人前と見られる歳になったと言う事だ。未だ大人ではないがな。だが自らの考えで行動する事に責任を負うと言う事には変わりない。これからは良く考えて行動する様にしなさい。良いね?」


 そう言うお父様の顔付きは厳しく、目付きは優しげでした── イケメンなお父様は顔芸が得意なのですね、等とそんな失礼な事を考えながら私は大きな声で「はい、わかりました」と答えるとお父様は大変満足したみたいに何度も頷きました。


「ではディナ、明日はわたくし達と一緒に教会に行きましょう」


 お母様は少し悪戯(いたずら)っ子みたいな顔をして、私にそう言いました── それってつまり── ?!


「あなたが待ち望んでいた「神啓(しんけい)」を授かりにまいりますのよ」


 やっぱり!! お母様の言葉に私は満面の笑みで「はい! とても楽しみです」と答えるのでした。


 まぁ楽しみは明日に取っておいて、今夜は美味しい料理を堪能しましょう!



  * * * * *



 明けて翌日─────


「ふわぁ───」


 お父様とお母様に連れられ、やって参りました教会に! 馬車の中からではイマイチはっきり見えなかったのですが、馬車を降りたら目の前にドーンとそびえ立つ数多くの尖塔! ()()()()()()()()()写真で見たイタリアミラノの大聖堂そっくりでございます! 当然行った事はございませんけど!


 ある意味興奮気味の私を連れて、大聖堂の大きな門扉をくぐる両親。


 中も驚く程に広く、白亜の高い壁と高い天井に、四方のステンドグラスの窓から外の光が差し込みキラキラ感満載でございます。その奥に見える祭壇には大きな神様の像が(まつ)られていました。

 ──そう言えば今まで転生した世界でも教会が必ずあり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()── まぁ気の所為(せい)だとは思うんですが。


「これはこれは、クルザート公爵様。ようこそ我が教会本部にいらっしゃいました」


 何処(どこ)からか現れた如何(いか)にも司祭! と言う出で立ちの男性が、深々と私達親子に向かい頭を下げます。


「マルシオ大司教か、邪魔をする。この子は我が愛娘のアルムディナ、今日はこの子に神啓を授かりに(うかが)った」


 するとマルシオ大司教と呼ばれた男性は胸の前で手を組み、微笑みながら語り掛けてきます。


「ほほう、すると昨日はアルムディナ様の生誕日でありましたか」


「うむ、昨日で6歳を迎えた」


「それはおめでとうございます。では早速神啓の支度を整えますので、(しば)しお待ちを」


 そう言うとマルシオ大司教様は、側に使える司祭と思しき人に一言二言(ひとことふたこと)声を掛け、司祭さんは祭壇に幾つもある魔法の提灯(ランタン)に順番に明かりを灯しました── ひときわ輝きを放つ祭壇─── 。こういうのを確か、光輝燦爛(こうきさんらん)って言いましたっけ?


 そんな事を考えていたらマルシオ大司教様に「こちらに」と呼ばれました。どうやら神啓の準備が整ったみたいです。横に立つお父様とお母様の顔を見ると二人共に頷きます。私は手招きする大司教様の元に、内心ワクワクしながら向かいました。


「アルムディナ様、よろしいでしょうか?」


 祭壇の真ん前で進み出て神様の像──神像を仰ぎ見ていると、マルシオ大司教様から確認の言葉が来て私は頷きます。


「では── 祈りを捧げてください。祈りの中でアルムディナ様は神の御声(みこえ)をお聞きになるでしょう」


 私は両膝を床に着き、手を胸の前で組み合わせると目を閉じ意識を集中しました。



  * * * * *



 ── 気が付くと私は、光が舞い踊る()()にいました。


 ………………………… あれ? ここは何処?


 私は確か、教会の祭壇の前で祈りを捧げていた筈なのに?? それにいつの間にか身体も大人になってるし!


 いやちょっと待ってください…… ここには見覚えがあります!


 すると私の目の前で不意に、辺りの光が集まり人の姿を取りました。そして私に向かって話し掛けて来ます。


『久しぶりですね、枢木(くるるぎ)朋乃(ともの)。いえ、今はアルムディナと呼ぶべきでしょうか』


「か、神様?! やっと会えた〜!」


『そんなに嬉しい? なら私もあなたを輪廻の輪の流れに逆らわせた甲斐が───』


 まさかの感動の再会? いいえ── 違います。


 ───── ツカツカツカツカツカ──


 私は神様に小走りに近付くと


 ──── ボコッ!!


 思いっきり拳骨でその頭を殴り付けました!


『痛っ?! いきなり神を殴る?!?』


「黙れ! 私は()()()()また会えたらこうするつもりだったんだから!!」


『な、何をそんなに怒っているのかな?!』


「何をそんなに怒っているのかな、だぁ~?!? あんたのとんでもない祝福のお陰で、転生を10回も繰り返した私の身にもなってみなさい!」


 全身で今まで溜め込んでいた怒りを爆発させる私。完全に素が出ているのはご愛嬌(あいきょう)です。


『えっ?! そんな事が?』


「全く、とんでもない祝福(呪い)だわ!!」


『だ、だって私はあなたの望む事を望む通りにしてあげようと──』


「── 確かに私は「真実の愛」が欲しいとは言いました! ()()()()()()、何で転生先で男性に告白されて、その愛が「真実」では無いと(わか)ると直ぐにリセットされるみたいに転生させられなきゃいけないんですかぁーー!?」


 私の怒りの告白に目をパチクリさせる神様。


『……ちょっと待って。なにその効果?! 私があなたに与えた祝福は『真実の愛を得る為には如何いかなる犠牲も(いと)わない』と『幸せで裕福な家庭』だけなんですけど?!』


 …… オイ、ちょっと待て!!


「裕福な家庭は兎に角、何その怖い祝福?! そんな如何なる犠牲も厭わないだなんてナニ! 私の人生そのものすら犠牲にしているじゃないの!?! もう少し加減を効かせてよ!!」


 もうなりふり構ってられません! 全く、なんつー祝福を………… !


『そんな事を言っても、一度与えた祝福は取り消せないんですけど……』


 何やら言い訳を口にする神様を見て更に激高(ヒートアップ)する私。


「なら、せめてアフターケアぐらいしっかりしてよ?! あんた、一度転生させたら放ったらかしだったでしょうが?!」


『それは……』


「言い訳禁止!!!!!」


『……… 申し訳ございませんでした』


 やおら土下座する神様。神様の世界にもあるんですね、土下座って………… 。


「いや、土下座されても何の解決にもならないし! さっきも言ったけど、祝福は変えられないならアフターケアで何とか出来ないの??!」


 すると(あご)に手を当て必死に考え込む神様。そして──


『うーん………… なら視える様にしましょうか、()()()


 といきなり提案して来ました。


「─── はい?」


『あなたのその虹色の眼を魔眼に変えて、愛情を()()()するの。そうすればあなたに対し本当に愛情を持つ人を見つけられるでしょう?』


「── それは…… 良いかもしれないけど、常に見えていたら、それこそ人間不信に(おちい)りかねないから却下!」


『そこはあなた自身の意思で、必要な時以外は発動しない様に出来ますし』


「──うーん、そっかなぁ。それなら良いかもだけど…… だけどそれ、最初から与えておいてくれたら全て丸く収まっていたんじゃないのかしら…… ?」


『うぐ! そ、それはそうだけど──』


 私の的確なツッコミに思わず言葉に詰まる神様── 女神様を見て、私は思い出しました── この女神様はこう言う女神様(ひと)だった事を! そもそもあの時だって──────



  * * * * *



『─── さん、枢木朋乃さん』


「……………」


『枢木朋乃さ~ん、目覚めてくださらないですか~~』


 耳元で名前を呼ばれて、私はガバッと起きたのだが……… あれ? ここは何処? 私確か、駅の階段を踏み外して………………… 。


 一瞬病院かと思ったんですが、周りを見たら何もありません。より正確には様々な光がキラキラと乱舞する空間── と言えばいいのでしょうか?


 身体がふわふわ浮いている感じなのだけど、足はしっかり踏み締めていると言う不思議な感覚─── 。


『気がついたかな?』


 不意に後ろから声がして振り向くと()()()()()()()が立っていました── えっ、さっきまで誰もいなかった筈なのに?!


 そんな私の動揺などお構いなく、()()()()勝手に話し始めます。


『では改めて── 枢木朋乃さん、あなたは死にました』


 ───── はいぃ~~?


 私が死んだ? んじゃ今ここにいる私は誰? いや、そもそもこの人は何処(どこ)の誰なのよ?! 軽くパニくる私に白い人は


『── ここは次元の境界、現世(うつしよ)常世(とこよ)の境目で、あなたはいわゆる魂の存在で、私はあなた達が「神様」と呼ぶ存在。いいかな?』


 そう話し、私は黙って頷きます── 肉体は無いですが! そっかぁ……私、死んじゃったんですね……… 享年27歳…… 意外と呆気なかったかな…………… 。


『あら? 死んだのは受け入れるのね、意外』


 ── まぁ、()()()()実際死にたかったし…… ね。


 ん? そう言えば()()()()()()()()()()いわゆる死亡原因が気になります。


『──そんなに死因が知りたいのかな?』


 ──そらまぁ、自分がどうして死んだか気にはなりますから……ねぇ……… 。


『……知らない方が良いと思うんですが…………(ボソッ)』


 今何か、聞き捨てならない事を言われた?!



 えっ、それどーゆー事なの?!?

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