〈22〉もう一つの結末と女神再臨と 〜いわゆる大団円〜
〈22〉
ここはいわゆる神様が住まう天界。
数多の神様の中でただひとり、あらゆる現世を見る事が出来る「現世の鏡」を真剣に見入る神様が── 。
枢木朋乃を転生させたフレイヤ神、その人(?)である。
鏡には王宮の大広間でのダンスに興じる朋乃──アルムディナとレヴィが写し出されていた。
『あーもう! そこでもっと積極的に行かないと!』
何やら焦れた声を上げているが、それこそ大きなお世話である。
鏡の前にテーブルと椅子を用意して、腰掛けながら写し出される映像に文句を言う様は、まさにテレビの前を陣取った何処ぞの有閑マダムみたいである。これでテーブルの上にお茶とお茶菓子が有れば完璧であるが── 。
やがて鏡には、打ち上げ花火の光の中で愛の告白を受けるアルムディナが大写しに── 。
『そこよ! そこで熱い接吻を交わすのよ!!』
ひとりで勝手に盛り上がらないで欲しいものである──気分は正に独り韓国ドラマ鑑賞会の様だ。
そんなこんなでフレイヤ神がひとり盛り上がっていると、肩を寄せ合い寄り添う二人から白よりも純白な眩い光が天空に向かい放たれるのが写し出されたのだ。
その映像を目の当たりにしたフレイヤ神はガタッと椅子から立ち上がり、ひと言叫んだ。
『──やったわ!!』
程なくして、先程の映像と同じ純白に輝く光の玉がフレイヤ神の元に近付いて来てフワフワ周囲を漂ったかと思うと、やがてその輝きはフレイヤ神の右目へと吸い込まれていった。
『おかえりなさい、私の能力。そして私が与えた祝福も──』
そう言って、そっと瞼の上から右目に触れるフレイヤ神。
彼女がアルムディナに与えていた魔眼は、フレイヤ神の力のひとつだったのだ。
フレイヤ神は鏡に映るアルムディナ──朋乃に向かい
『これであなたに与えた祝福も魔眼も消えました。元々祝福とは、願いが成就すれば神の元に戻って来るものですからね』
独り言の様に呟いたのだが続けて
『まぁ、これで私もフレイ兄様や主神様に怒られなくて済むけど……』
最後の余計なひと言でその前の台詞が台無しである。
『兎に角、おめでとうございます。アルムディナ──いえ、枢木朋乃さん。10回目の人生を思う存分楽しんで、今度こそ生を全うしてくださいな』
レヴィの胸に顔を埋めるアルムディナ─朋乃の幸せそうな様子を見ながら優しく語りかけるフレイヤ神。
『それにしても──何でもっとガツガツ行かないのかな?! ほらもっとガバッと行きなさいな! ンもう、このレヴィって子は草食系男子? ヘタレ? フェミニスト?』
女神様は意外と俗っぽかった。
─True end─




