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〈1〉10回目の初めて

〈1〉



 私は今、戸惑っています。


 何をかって? 皆んなは朝目覚めたら、それまでとは全く違う人生を生きていかないと駄目になっていたら戸惑いません? 今の私がまさにソレなんです。


 あぁ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。


 私は枢木(くるるぎ)朋乃(ともの)、れっきとした27歳の日本人のOL…… でした。何故「でした」なのかは、私には()が付くから。それこそ()O()L()はおろか、()()()()── ()()()()にもなるのかな…… ?


 そんな私は現在、絶賛異世界転生中なのです! しかも10回目と言う有難くも無い記録と共に!


 まぁ本人の感覚では深い夢の中に居る事を意識出来ていると言う範疇(はんちゅう)なんですけどもね。


 何故私がそんな目に遭っているかは、話すと長くなるのでまたの機会に!と言う事で………… 。


 ……そろそろ新しい10回目の人生に到着するみたいです。だって意識と言うか思考が出来なくなって来たから──── 。


 次こそは()()()()と良いんだけどなぁ……… ()()()()()



  * * * * *



 再び覚醒(めざめ)たのは、ふわふわの柔らかい産着(うぶぎ)(くる)まれて抱きかかえられてた時。


「?──**──**──******、****──**──***──」


 目の前には、某何処(どこ)ぞかのアニメの超絶美少女フィギュア並みの美人が、私の顔を覗き込んで何か言っています。()()()()()()()()…… 言葉が全くわかりません、うん! あ、喋り方は()で行かせていただきますのでご容赦ください。

 でもまぁ、この人が私の母親(ママ)なんだと思います…… たぶんですけど、ね。何やかんや考えてたらママが(おもむ)ろに服をはだけて、形のいい乳房(おっぱい)を出して私に含ませます。うん、どうやら授乳(ミルクの)時間だったみたいです!


 飲み終わると程なくして部屋のドアを開けて、これまたイケメンすぎる男性が入ってきます。たぶんこの人が父親(パパ)…… かな?


「****!──****───******──********?!」


 嬉しそうに顔を(ほころ)ばせてながら話し掛けてくるパパ── すんません、この世界に来たばかりで何言ってるかさっぱりわかりません!


「おぎゃー! おぎゃー!」


 私の叫びはただの泣き声になってしまいます──まぁ赤ちゃんですしね!

 泣き声を上げる私を見て、更にテンションが上がるパパとママ………このままだとエンドレスなんですけど………… 。

 程なくして私は、母乳(ミルク)でお腹いっぱいなのも手伝い、いきなり睡魔に襲われそのまま寝てしまいました。だって赤ちゃんなんですもん!



  * * * * *



 あれから何ヶ月か経って、ハイハイ出来る様になりました! わー、パチパチパチ~☆

 これで行動範囲が拡がる! と思ったんですけど…… 行動範囲=ベッドの上から、行動範囲=部屋の中に変わっただけでした。もっとも赤ちゃんの身では、この部屋の中も充分広うございます。それに、何処に行くにしてもママがべったりだし……… 。


 それと! ようやく言葉を理解出来る様になりました! ある単語の意味がわかれば、一定の文法を当てはめて文章を構成するなんて、転生10回も(こな)すと流石に楽勝です、ふふん!

 もっとも生後何ヶ月かの赤ちゃんが、喋るのは兎も角、言葉を理解しているなんてママやパパが知ったら卒倒モノですねぇ、きっと……… 。


 兎に角、私がママやメイドさん達から聞き取った(堂々と盗み聞きした)話からわかった事は──まず私の名前! 私は「アルムディナ」と言うのだそうなのですよ! それとママの名前は「デイフィリア」、パパは「アルナルド」と言うのだそうです。パパとママはかなり高貴な身分らしい事も知りました。これも()()()()()()()、少し飽きて来ているのは秘密だけど……… 。

 それと、私が今いる国は「オシェル王国」と言う結構豊かな国らしいです。とりあえず()()()生活の苦労はしなさそうだなぁ、とぼんやり考えたり。


「さぁ、アルムディナ♡ママとお外に行きましょうねぇ♡」


「だぁーだぁー♡」


 更に何十日か経って、ようやく外出許可! とはちょっと違うかな…… 。とにかくママが私を抱っこして初めて部屋から出してくれました~! 長い廊下を歩き、途中何人かのメイドさんや使用人に頭を深く下げて挨拶されながら、ようやく来ました外の世界! と言っても、お庭なんですけどねぇ~。

 まぁお庭と言いましたけど、これむしろ何処かの庭園なんじゃね? と思うほど広い! 色とりどりの綺麗な花が咲き乱れる中、ポツンと白亜の四阿(あずまや)が置かれている風景は海外に来たみたいです。もっとも私の海外知識は、台湾かインドネシアぐらいなんですけどね!


 私のボキャブラリー不足で申し訳ございませんが、他に比喩(ひゆ)出来ないのは勘弁して欲しいんです、本当に!


「だぁーだぁー♡」


 私がそれなりに感動していると、ママが「あらあら♡」と嬉しそうに私の小さな手のひらに指を優しく添えてきます。本当に優しいママで良かったなぁ~と、割りと切実に思っていたりしたのは誰にも言えない秘密です!



  * * * * *



 やがて私も1歳になる頃にはハイハイから(つか)まり立ち、そしてよちよち歩きを始め── 言葉も「おーぎゅりょ、りぴょ」みたいな意味不明な発音から「ママ」「パパ」「ワンワン」と言う単語の嵐を経て、足腰がしっかりした、たどたどしくも喋れる只今2歳児でございます。

 どうやら()()()()の子供は、()()()()()少し発育が早いみたいなので安心した次第です。何でって? 周りの()()()()より発育が凄く早かったら、色々不味いでしょう?


 まぁそんな私の心配は無駄で済んだので、正直ホッとしました!


 この頃になると今まで居た家から出て、とても大きなお屋敷で暮らす事になりました。繰り返します、()()()()()()()()()です!

 どうやら今まで住んでいた家は離れで、このお屋敷が主屋(おもや)なのだそうです。

 何でも出産は離れで行い、生まれた子供が話が出来る様になるまで、母子で暮らすのが高貴な身分──ぶっちゃけ貴族ではデフォなのだとは、メイドさん達の会話(おしゃべり)で知りました。それで私が話せる様になったので──と言う訳らしいです。


 それにしても……このお屋敷は廊下が広い! 部屋が広い! 使用人がたくさん! 今まで9回転生した先々でお世話になったお屋敷も広かったけど、これは一番の広さだと思います、はい!

 (なん)たって()てがわれた子供部屋が、大人40人ぐらい余裕で入れそうな広さなんですよね~。しかも部屋付きメイドさんが2人も居るしで、まさに至れり尽くせりです!


 ()()()()()()()()()()()、やはりお姫様気分はテンションが上がりますねぇ、うん!



  * * * * *



「アルムディナ~、良い子にしてたかな~」


 主屋に移り住む事になって一番変わった事は、父親(パパ)頻繁(ひんぱん)に私に会いに来る事です。

 何でも母親の赤ちゃんの育児が落ち着くまで、父親は自分の子供に会ってはいけないと言う事が昔から決まっていて、逆に言うと同居=面会解禁なのだそうで………… 。


 今まで会えなかった分もあるんだろうけど……… ちゃんと仕事はしてるの、パパ??


「あい、ちゃんとちてるよ、ぱぱ♡」


「そうかそうか! 本当に良い子だなぁ~アルムディナは」


 そう言いながら私を抱き上げて、頬擦(ほおず)りしてくるパパ。正直言って顎髭(あごひげ)がチクチクして痛いです………… 。


「ぱぱ、やーよ!」


「あぁ!? ごめんごめん!」


 私がやおら抗議すると、頬擦りを止めるパパ。やれやれ…… 私の珠のお肌が荒れたらパパの所為(せい)ですからね!


「ゔ~~~」


「いや、本当にごめんねアルムディナ、パパが悪かった!!」


 上目遣いで目を(うる)ませながら(にら)みつけると、平身低頭で頭を下げるパパと、それを見て吹き出しそうになるのを懸命に(こら)えてるメイドさん達の姿が── 。


 ──仕方ない、許してあげますか。


「もうちない?」


 私が尋ねると、物凄い勢いで首を縦に振るパパ。首が落ちますよ?


「じゃあ、ゆすちまちゅ。でもこんどちたら、めーよ」


 そう言いながら、パパの頭を小さな手でナデナデしてあげる私。抱き上げられているから出来るんですけどね!


「ありがとう~! アルムディナ~~」


 感動と安堵で今にも泣きだしそうな顔なパパ──渋いイケメンさんが台無しですよ………… 。



 * * * * *



 そんな事してたら、執事のダンディーなおじ様がドアを開けて入ってきてひと言告げました。


「旦那様、リンドリー侯爵閣下がお見えになっております。こちらにお通ししてよろしいでしょうか?」


「ほぅ、セイモンが? 良し、通せ!」


 パパが良く通る声で(うなが)すと程なくして、一人の男性が執事さんに連れられて部屋にやって来ました。この人が、えっと、リンドリー侯爵様?


「失礼します。クルザート公爵閣下」


「良くぞ参られた、リンドリー卿」


 パパは私を左腕で抱っこしながら、右手でリンドリー侯爵と握手する。


「ほぅ、その子がクルザート公の御令嬢であらせられるか。デイフィリア様に良く似られてますな」


「うむ! アルムディナと言う。今後ともよろしく頼む!」


 リンドリー侯爵が私の小さな手を取り、手の甲に口づけをしてくれました。


「アルムディナ様、セイモン・アルバ・リンドリー侯爵です。良しなに」


()いもんこーちゃく、こちらこしょよろちく」


 私の(つたな)い挨拶に笑顔を向けてくれる侯爵。何となくパパと同い年っぽい感じがする、これまた渋いイケメンさんでございます。


 それより、です! 今のパパとリンドリー侯爵の会話に聞き捨てならない台詞があった気が……確か、パパを「公爵閣下」って?!


 その日私は、私自身が公爵の令嬢に生まれた事を初めて知りました。


 えぇ~~~~~~ ?!

本日はあともう一話投稿してあります。そちらも続けてお読み下さい。

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