車とあなたと私の小さな物語2
実家に7年ぶりに帰ってきた
田舎の農家だ我が家は
昔は、専業でやっていたが
今は兼業
でも、それも風前の灯火
田んぼのほとんどは人に貸している
時間もあるので、使わなくなった納屋を片付けを始めてみた
そして、出てきたのがこのクルマ
調べてみると、なんとスポーツカーのエンジンを乗せた軽トラらしい
数年前までは祖父もエンジンを掛けていたみたいだけど…
鍵を回してみると、
バッテリーが上がっているのか掛からない
モノは試しと、トラクターからブースターを繋ぎエンジンを掛けてみると
息継ぎをしながらもなんとか掛かった。
軽く吹かすと安定してきた
免許を取って以来のマニュアル
走り始めてみると意外に楽しい
春の匂いから、夏草の匂いに
雲も高く夏の空に
「俺も農業やってみようかな」
「少しずつ始めてみよう」
「何も見えなくなっていた今の自分を変えられるかもしれない」
「このクルマの様にもう一度」
動き始めた29歳の自分だった
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突然息子が帰ってきた。
帰ってきたと思えば、納屋の掃除を始めている
もう半日以上
心配しながらも、いきいきした顔を見て安心している。
突然のエンジン音
でも懐かしい
父が元気だったころは、よく聞いていたエンジン音だった
夏草の匂いが、更にあの頃を思い出す
おにぎりでも握って持っていってあげよう
そんな、初夏の昼下がりだった。