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俺と沙羅、彩乃は席に着き朝食を食べる。
「そういえば今日からだったね、学校は。もう高校生か。早いものだね」
そうなのだ。俺と沙羅は今日から高校生となる。とは言っても、通っている学校は中高一貫校なので、学校が変わるということはない。また同じ学校に通うとなると新鮮味に欠けるので、俺としては少し残念だったりする。
「そうよ!私もついに華の高校生!だから、パパ!もう子供扱いするのはやめてよね!」
「ハハハ!何を言ってるんだい?まだ君は子供じゃないか。例えば、ほら。後ろ髪、はねてるよ」
幸宏さんは指摘する。たしかに沙羅の綺麗な金髪はちょこんとはねていた。
「あっ!?」
沙羅は可愛らしい寝癖を必死に直そうと手で何回も抑えるが、寝癖はまたぴょんとはねてくる。寝癖を直そうと必死な沙羅の様子がおかしくて思わず笑ってしまう。
「なに笑ってんのよ!ああ、もう!どうしたら直るの?」
もう少し慌てふためいている様子を見ていたかったが、ここらが潮時か。
「お嬢様、蒸しタオルで押さえると直りますよ」
「そうなのね。じゃあ、蒸しタオルをお願い」
「ただいま」
俺は厨房のほうに向かう。まずタオルを水に浸し力一杯絞る。水を絞り切ったらレンジへ。30秒くらいに設定して、タオルを温める。
「お嬢様、蒸しタオルでございます」
「ありがと」
沙羅は俺から蒸しタオルを受け取る。少し熱そうにタオルをお手玉のようにひっきりなしに右手へ、左手へと移動させている。温め過ぎたのだろうか。今度からは気をつけなくては。
「お兄様は今日から高校一年生になるのでしたね。私はまだ中学生なのでお兄様と離れてしまいます」
こんな感じに彩乃が俺に懐いてくれてるのは嬉しい。でももうそろそろ彩乃には兄離れしてもらいたいものだ。彩乃は今年で中学校も三年生となり、来年には俺と同じ高校生になるのだから。
そうこうしているうちに朝食が終わる。幸弘さんと沙羅は自室へと引き上げるが、俺と彩乃には仕事がある。すぐさま食器を下げに厨房へ。皿洗いをしに向かう。
「君たたち今日から学校だろう?ここは私たちにまかて早く支度をしてくるといいよ」
厨房担当の中野さんがそう優しく言ってくれた。ここはありがたく恩に着るとしよう。
「ありがとうございます!じゃあ、おねがいしますね」
俺は厨房を後にする。
「今日の皿洗いは中野さんにしてもらうことになった」
「そうですか。後で私もお礼を言っておかなければなりませんね」
「じゃあ、俺らもしたくするか」
「そうですね」
俺らは諸々の支度をしに自室へと戻った。