ない
ひとつひとつに大事なものがあります
ひとつひとつの事柄がそんなに大事だなんて 私はとうに気が付かなかった
私にわかっていた事柄は私のことを大事にしてくれるような人は私に求められているような人は存在しないということでした
私にはかつて似たような状況で思い悩んだような経験がありました
それは似たような状況で思い悩んだ私の経験が次第に薄れていって
今見てきたはずのことが全部噴水のなかに溶けてしまったかのようでした
私にはかつてそうして思い悩んだことがありました
私にはかつてそうしたことを話せる友達もいたようでした 私には
かつてのような思い出はひとつもありませんでした
私にはかつてのような思い出は一つ残らず存在しない嘘のようなものでした
他人に話せるようなことなどなく打ち明け話など 私には存在しないようなことなのでした
彼らはいつだって違う方向を向いている
私はいつだって自分の内側に視線が行っている
そうした日々の中 気がついたことがありました
彼らに何かを求めるのは間違っている
私に何か期待されるのは間違っている 信じ合えると人は言います
私には信じ合えるような人のことがまるで信用できないのです
彼らには笑顔のようなものが貼り付いていて その嘘を見抜いてしまったら もう二度と人間扱いしてもらえないような気がして 私は目を閉じるのでした
笑わないでください 怖くなります
笑わないで
私の方を見ることもやめてください
私には いないことが ある
いつだって 私には いない ことが必要なのです