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混乱している中、もう1人の殿下はニコニコと笑っている。
あっ、この笑顔だ。
この笑顔が違和感の正体だ。
「あの、もしかして、こちらの方は女性の方ですか?」
「えっ?分かるのかい!?」
「えっえぇ。」
「本当か!流石は姐さんの血筋だっ!もしかして君は姐さんの孫かい?姐さんがいっつも自慢していた!」
「ねっ姐さん?」
「嗚呼、ミーファ姐さんだよ!」
ミーファ、その名は私のお祖母様の名前。
ってことは姐さんとはお祖母様のこと?
「お祖母様ですか?」
「嗚呼!そうだ!なんとなんと!まさか、嫁殿には会えないけども、姐さんのお孫さんには会えるとは!なんといい日だ!!」
「えっ!えっ?」
「母上、落ち着いて。スーティン嬢が混乱しているよ。」
「母上?」
えっと、今、母上と言いましたか?
もしかして、この方は。
「嗚呼、すまない。自己紹介もまだだったのに。私はプージャ・レオルドだ。あのレオルド国の第1妃だよ、一応。そして、この子の母親だ。ミーファ姐さんとは姉妹の契りを交わしたんだ。」
「しっ姉妹の契り?」
「嗚呼、姐さんはね、それこそ、私が幼い時に色々とお世話になってね、憧れていて、私が陛下の嫁に行く時も色々あってね、その時にも助けてもらって、そして、その時に姉妹の契りを交わしたんだ。だから、陛下も姐さんのことを知っているよ。」
「えっえぇ?!」
「いやー、姐さんのお孫さんが居ることは知って居たけど、この目はスーティンの目とはっきりと分かるね。君も弓をするのかい?」
「えっ、まぁ、その実家の時にはよく狩りに出かけてました。」
「ほうほう、ん?実家?あれ?」
えっと、どうしたのでしょう。
何かおかしな事を言いましたかね?
「んっ?んっ?もしかして、だけども、今、君はどこかに嫁入りしてるのかい?」
「えっ、あっはい。」
「なんだってえええええええ!!!?」
「ええっ?」
急にどうしたのでしょうか?
プージャ様が急に叫び始めてしまい、困惑するばかりです。
どうしたら良いのでしょうか!?
「母上、落ち着いて。」
「落ち着いてなんていられるかっ!!姐さんのお孫さんが結婚してるんだぞ!!あれほど自慢していたお孫さんがだぞ!!本当ならば、ウチに嫁にしたいと願っていたお孫さんだぞ!!」
「えっ!?」
今、なんて言いました?
嫁にしたい?
いや、聞き間違いですよね?
「昔っから言っていただろう!姐さんのお孫さんが女の子ならば、きっと素晴らしい子だから是非ともうちの嫁に、つまり、お前の嫁にしたいと!」
「えぇ、聞いてたよ。昔っからね。しかし、彼女はもう結婚しているんだよ。」
「嗚呼!!なんてことだ!息子さんの時にはあまりにも年の差がありすぎて、それこそ弟としか見れなかったが、今回、息子さんが早く結婚して、長女が生まれたと聞き、それがまさかのお前と年の差が4つしか違わないと聞いて、運命だと思ったのに!!なのに!なのに!」
「すまない。母上ミーファ様に対してすぐポンコツになるんだ。」
プージャ様の様子にどうすればいいのか困惑してると、ラートム様が、こっそりと話してくださいました。
しかし、プージャ様のこの様子は常になんですね。
呆れたようにプージャ様を見るラートム様の様子は慣れたようですし。
「あの、殿下。その、先程のプージャ様の話にあった、その、結婚とかって、私はその祖母からは聞いた覚えは無いのですが。」
「嗚呼、大丈夫。それは勝手に母上が言ってるだけだから。ミーファ様も話は聞いて聞いたけど了承はしてなかったし、本人に任せるって言っていたからね。だから気にしないで。」
そうですか。
良かった。
その、私の知らないところでこんな話が出ていたのかって思ったら怖くなってしまって。
もし、この話をお祖母様が了承していたならば、とても大変な事です。
だって、私は旦那様ともう結婚してますから。
もし、知らなかったとしても、口約束だとしても、国際問題になりかねませんよね。
片方がもう結婚してるだなんて。
だから本当に安心しました。
でも、それならば何故、ラートム様は先程あんなことを?
「ラートム殿下、その、なら何故、先程、独身だったらなって?」
「あっ、嗚呼。噂に聞いていたスーティン嬢がとても面白い人だったからね。だから、母上の言うように結婚しても良いかなって思ったんだ。」
「ええ?殿下とお会いしたのは数分ですが。」
「別に時間は関係ないさ。君に興味が沸いたからね。でも、まぁ、もう結婚しているご婦人にそんなことを言うのは混乱させちゃうね。ごめんね。」




