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その言葉を聞いた瞬間、手から力が抜けた。



「うっ、ゲホゲホ。」


「はっ、ははっ。」



嗚呼、嗚呼。

分かっていたけども、改めて聞くと、馬鹿らしくなるな。

こんな奴を理想だと思っていたなんて。



「理由なんて、ないのか。」



生理的に受け付けない。

確かにそれではもうどうにもならないな。

しかし、そういう奴も居るのが事実。

獣人族ってだけで、これ程嫌われるなんて。

嗚呼、嗚呼。



「姫、あなたが王族でなければ、今すぐ殴ってやりたいですよ。」


「ひっ。」


「本当には殴りませんよ。どれほど殴りたいと思っても、あなたは、この国の王族ですからね。だから、いくら腹立たしくとも殴りませんよ。」



そういえば、ホッと安堵のため息を着く様子にますます苛立つ。



「ふふふ、そうよね。だって、結局はあなたは王家の犬だものね。私を殴るなんて出来るわけないっつ!!!?」



いい切る前に、顔スレスレに拳を壁に叩き込む。

ズドンッと言う鈍い音がしたが流石は王宮だ。

ヒビが少し入ったぐらいだ。

結構力を込めたはずなんだがな。

やはり王宮は、頑丈だな。



「なっ!何を!?殴れないって、今!?」


「嗚呼、俺の事を、獣人族を貶したことに関しては殴ることは無いって言ったのですよ。この国の王族と我が先祖は互いに約束しましたからね。その約束を俺が違える訳にはいけませんから。」


「えっ?」


「例え、歴代の中の王族に我々を嫌うものが居たとしても、我が一族をこの国で守護してくれるならば、我々も王族を、この国を守る盾となるという約束ですよ。しかし、ミミ、彼女に手を出したというのならば話は別だ!」


「ひぃっ!!」


「我が愛しい妻に手を出したというならば、容赦はしない。我が一族の約束が縛るというのならば、俺は今すぐにでも一族から抜けてやる!そうすれば、何も俺を縛るものは無いっ!!」


「はっ?一族を抜けるって、それって公爵という地位を捨てるということよ!?そんなことを本当にするというの!?」


「嗚呼、勿論!俺はミミさえいれば、それでいい。地位などどうでも良い。」



ミミに何かをしたというのならば、俺は正常ではいられない。

公爵としての身分が邪魔になると言うのならば、捨てる。

いつかスーニャに言われたことを思い出す。

俺は冷徹過ぎるって。

人でも物でも、効率が良いと思えば犠牲にする。

そんな俺を冷徹だと。

しかし、今の俺は昔のようにはできない。

ミミを犠牲にするなんて考えられるわけが無い。

何よりも優先すべきは愛しき我妻だ。

地位も、立場も、王家との契約も、全てミミを天秤にかけることさえできないのだ。



「だから、今すぐに話せ。死にたくはないだろう?」


「ひっぃっ!!!」


「早くっ!!!」



怯えた姫の言葉はたどたどしくて苛立つが、聴き逃せばミミが益々危険にさらされる。

我慢して聞き終えた瞬間、走り出す。

俺の足ならば一瞬で、計画の為の部屋につく。

勢いで入れば、馬鹿面を浮かべたどこぞの馬鹿がいた。

締め上げれば、ここにミミはまだ来ていないと。

怯える糞に、すぐにここから居なくなるように言うと逃げるように部屋から出ていく。

その後ろ姿を見ながら、連れてこられるはずのミミを待つがなかなか現れない。

来た瞬間ミミを助け出し、連れてきたやつを捕まえてやろうとしたが、姿は全く見えない。

一瞬、騙されたかと思ったが、あの状況であの姫が嘘をつくほど頭が回るとは思えないし、言ってた通りにバカがここで待っていた。

他に部屋を用意するという手もあるが、そこまで用意周到な奴らではないだろう。

俺が聞き出して、ここまで一瞬だ。

作戦変更を企てて、それを伝える時間などなかったはず。

ならば、その計画通り、ミミがここに来るはずだが。



「もしかして、ミミは気がついて逃げ出した?」



そういえば、ミミは感がいいのだと言っていたし、彼女は実家では狩りをすると言っていた。

普段の屋敷での様子でも、普通の令嬢よりも動きがよく、狩りもしていたことから軽やかに動くとエレナが言っていた。

そして、連れていた者も普通の令嬢だと油断していたはずだ。

しかし、ミミは普通の令嬢ではなく、今も屋敷の仕事を率先してこなす程動き回り、力もそこそこある女性だ。

油断している者を交わし、逃げ出すこともできるだろう。

野生の動物を相手に狩りをしていたのだから、気配の消し方も知っているのだろうから普通の者が見失い、そのままミミが逃げ惑っているのもありえる。



「夜会会場に戻っていれば良いが、そのまま帰ればまた連れ戻されるとも思っているならなかなか帰れないはず。」



どこかに隠れながら居るのならば、見つけるのはなかなか難しい。


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