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「そんなに会場から離れてないと思うのだけども。」
可笑しいなと感じたのは早い段階だったから、すぐに逃げたけども。
一直線で会場に逃げてしまえば、どういう人たちなのか分からないから、会場にさらに仲間がいたらそれこそ逃げられなくなるから色々曲がりながら逃げた。
とりあえず1人だったから流れたけども、何人もとなると早々に逃げられなくなるもの。
どうにかして空いている部屋を見つけて、やり過ごしたけども、ここから出て、見たこともない廊下で困りました。
「このまま居ても、またさっきの人が戻ってくるかもしれないから、少しでも早く旦那様と合流しないと。」
気配を消しながら、周囲を警戒しつつ歩みを進める。
一応、過去に狩りに出ていましたから、気配を消すことはお手の物です。
セッカからも満点をもらえるほどですから。
それこそ、相手にしてたのは森の獣ですし、人よりも敏感なので、普通の人なら多分分からないかと思いますが。
しかし、ブランクもありますので、絶対とは言えませんから、用心に越した事はないですから、周囲を警戒しつつですね。
「さて、夜会での音楽は聞こえてますし、そう遠い場所ではないとは思いますが。」
外から小さく聞こえる夜会の音。
とても近いわけではないようですが、とても遠い訳ではなさそうです。
まぁ、周囲に気をつけながらなので、なかなか前に進めそうにはないですが。
「一体、誰がこんなことを?」
考えられるのは姫様ですが、一体、私と旦那様を離してどうするつもりなんでしょうか?
今日はある意味絶好のチャンスであり、最後のチャンス
でしょうね。
彼女にとって。
これ以上悪あがきをすることは出来ないでしょう。
彼女はこの後、隣国に陛下と共に向かわれることになってますし、そうなったらもう逃げれません。
「しかし、一体何が目的でしょうか?」
私と旦那様を離すのは何らしかを仕掛けようとしているから。
今回の夜会には都合よくどちらの両親もこず、仲の良いスーニャとも離れ離れだから誰も助けに来れない。
今日は最後のチャンスだが、格好の的のような時でもある。
邪魔者は誰もいない。
しかし、一体それでどうしようというのでしょう?
考えられるのは、旦那様と既成事実を作る?
いや、それならば私までこうやって呼ばなくても良い。
旦那様は騎士でとても姫を警戒していたから2人っきりになる気は一切なかった。
だから、隙は一切なかったはず。
だから、旦那様をターゲットにはできない。
つまりもしかして。
「私がターゲット?」
なるほど。
それなら分かるわ。
私を陥れようとしているならば、旦那様と私を離して、私をどこかの部屋に入れ、そこに誰かしらの協力者を入れ、そして誰かに目撃させる。
そんなところでしょうか?
社交会では私の噂はほとんどないもので、どうやら辺境の御令嬢としか話されていないそうだ。
また数少ない夜会等から見たイメージからか、大人しいご婦人となっているそうです。
なので、私の方がやりやすいと思ったのかしら?
「まぁ、普通のお嬢様方は狩りなんてしませんものね。」
武道を嗜んでいる貴族女性もごく稀なぐらいですからね。
いないわけではありません。
騎士を目指されている方や、趣味で体を鍛えるために武道をだという方もいらっしゃいます。
私のお婆様は元はそうだったとか。
しかし、数は多くなく、寧ろ、女性が力的に強い、鍛えているなどのイメージはほぼないのです。
貴族の中では。
勿論、平民の中では、なかなか強い方達は多いですよ?
それこそ我が領民の中では、大熊を素手で倒したという凄い女性もいました。
えぇ、彼女はとっても立派で、旦那様はとってものほほんとされている農夫さんですが、奥様の彼女は狩りにも出掛けるとっても強い方でしたね。
私のことをお嬢って呼んでくださり、私も動き方等を教えてくださっていたので先生と呼ばさせていただいてました。
残念ながら私には熊を倒すまでの筋力はつかなかったですが、弓での狩りでも彼女の教えはとても役に立ちました。
「そして、今も。」
お婆様からの教えと、先生からの教えが今私を助けてくれています。
先生からは怪しいと感じた時にはすぐ逃げろと、強い彼女は感を大事にしていました。
そして、危ないと感じた瞬間は直ぐに逃げろと。
危険を感じてまで突き進むことは馬鹿のすることだと。
そして、お婆様からはこの気配の消しかたを。
弓引きには気配消しは、大切なので、徹底的に教えられました。
野生の動物は気配にとっても敏感なので、徹底的に気配を消し勘づかれないように何度も何度も練習させられました。
足音は、勿論呼吸音さえも自然に紛れるようにって。
とっても大変でしたけども、今もとっても役に立ってますから、練習してて良かったなって。
「さて、会場はどっちに向かえばいいのでしょう?」




