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「旦那様が必要ない、契約は終了だというまではしっかりと守るつもりでしたが、ご迷惑ですか?」
「そんなことはない!!居てくれ、ずっと。」
「旦那様。」
ふふふ、もう、良かった。
ここが、本当に人が少ない場所で。
こんなに大声でそんなこと言われてしまえば、皆に注目される所でした。
今日は、お義父様達も、勿論、私の父たちも居らず、スーニャだってしっかりとお仕事をしているので、フォローしてくれる方はいらっしゃらないのだから、私達がしっかりとしないと。
そういったのは旦那様なのに。
多分、すっかり忘れていますね。
まぁ、それほど驚く内容でしたし、私もとても動揺していて、それに気付いた旦那様が人がほとんどいない場所を探してくださったのですがね。
「ミミ、どうする?もう帰るか?」
「えっ?そんな、何故?」
「いや、あの姿を見たら、ここにい続けるのは良くないと思って。」
「旦那様。大丈夫です。先程は驚きすぎて動揺していましたが、もう大丈夫です。落ち着いていますから。それに、きっと金さんが、見られるのは今日が最後だと思うのでもう少しだけ、遠くからでもいいから見たいのです。彼が幸せに生きているってちゃんとこの目で見たいのです。先程は、しっかりと見ることは出来ませんでしたから。」
「ミミ。」
「それに、旦那様言っていましたでしょう?今日はお義父様達も領地から来れないから、ちゃんとしなければならないと。私の父達も領地を離れられないし、今は私達がしっかりとしないといけません。」
お義父様達、私の父達、ある地域の辺境に領地を持つ者達は今日の夜会には参加していない。
何故ならば、今日出席しているのが隣国の王であり、今、隣国が手薄になっているからだ。
この婚約をすることになった大いな理由であるのが、2国の真上にあるもう1つの隣国。
その隣国が何やら不穏な動きをしているからだ。
新たに王となった人が、野心高いようで、私達隣国に戦争を仕掛けようとしているので、我が国ともう1つの国がこうやって血の繋がりを持つことで、強力な繋がりを見せつけて止めようとしている。
そんな不穏な空気の中の、隣国は王が不在である。
勿論、隣国は王がいなくても、強い国であるが、念には念をだ。
お義父様達は辺境の警備も兼ねて、うちの両親もそうだ。
貧乏ながらも、うちもそういう意味合いもある貴族なのだから。
だから辺境の地にいる貴族達は基本、この夜会には参加していない。
「私達は公爵家の代表としてきているのでしょう?」
「嗚呼、そうだが。」
「噂もあって、私達は、とても注目されていますし、途中から帰るなんてまたよくない噂が流れてしまいますし。それに、旦那様、何かほかにもお仕事があったのでは?」
「あっ、そうだが。しかし、だな。」
「本当に大丈夫です。私は元気ですし、もう動揺はしませんから。ねっ?」
「っ、分かった。ミミがそういうのならば。」
旦那様は、渋々という表情で頷かれました。
ふふふ、良かった。
旦那様は皇太子殿下から、何か他にも頼まれ事をしているということは分かっていましたので、それを邪魔することにならないようにっと思っていましたから。
「絶対に俺から離れないように。」
「分かりました。」
と言って、戻ったはずなのですが。
「えっと、ここは?」
いつの間にか、旦那様と離れ離れになり、城の中のどこかの廊下に立っていました。
何故?
思い出せるのは、旦那様と再び会場に戻り、周囲に気をつけながら食事をしていると、旦那様が急に呼び出されました。
それが、皇太子殿下からで、私も連れていこうとして下さいましたが、認められず、絶対にこの場から離れないようにと言われて、旦那様は渋々、離れていきました。
その後、チラチラと見掛ける、金さんや陛下たちを見ながら、旦那様を待っていたのですが、再び先程の声を掛けてきた従者が今度は私に声をかけてきたのです。
旦那様が私を呼んでいると。
確かに、私と一緒にと言ってた旦那様ですが、旦那様は最後にはここを絶対に離れないようにと言っていたはず。
なのに、ここを離れる訳にはと言ったのですが、強引に連れていかれそうになり、これはおかしいと感じて、その手を振り払い、逃げ帰ったのですが、どうやら慣れない場所だったので、迷子になってしまいました。
ただ、真っ直ぐに戻ったはずなのに。
「おかしいわ。しかし、このままここにいるのもさっきの人に見つかってしまうわね。」
それに旦那様ももう戻っているかも。
あの様子ならば、旦那様が呼んでいたというのは嘘のようだし。
旦那様、心配すると思いますから、早く帰らないと。
しかし、一体誰がこんなことを?
もしかして姫様?
いや、そんなことはないと思うのですが。




