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「お帰りなさいませ、旦那様。」


「嗚呼。」



ズラッと並ぶメイドさん達に紛れて、挨拶をする。

うわー、本当に帰ってきました。

結婚式以来見たことがない旦那様が。

嗚呼、そうそう、こんな顔でした!

もう数十日、いえ数ヶ月も会わなかったもので。

忘れてしまっていましたが、そうそうこんな美形様でした。

ぼおっと眺めて確認していると、いつの間にやら前に押し出されてました。

あれ?一体なんで?

隠れておこうって思って端にいたのに。

おかしいなって思って後ろを向けば、嗚呼、クリスさんですね・・・。

酷い・・・きっと旦那様は私の顔なんて覚えてないぐらいだから、端にいれば分からないのにー。

しかし、可笑しいと思ったのです。

あれほど着飾られた訳が。

旦那様が帰ってくるなんて。

だからあれだけされたんですね。

でも、別に私が出なくても良いのでは?

寧ろ、私が居れば不快では?

そうもんもんと考えて居るといつのまにやら目の前に高い壁が。



「えっ?」



目線を上げれば、うわー美しい顔。

って旦那様です。

なんか険しい顔でこちらを見ているんですが。

ほらーやっぱりー!!

私の顔なんて見たくないって思ってますよー!!

もうクリスさんの馬鹿馬鹿馬鹿!!



「何故、そんなに着飾って・・・?」


「お美しいでしょう?旦那様が帰ってくる、えぇ、奥様が起きている時に、久々にお会いになると聞きましたので着飾らせて頂いたのです。えぇ、本当にお美しいでしょう?」



目の前の旦那様に緊張していると、後ろからエレナさんが説明してくれている。

でも、なんでしょう、とっても冷ややか。



「エレナ。」


「普段、私が精一杯お世話させていただいているのでとっても奥様美しくなられまして。いえ、元々可愛らしく美しい方ですけど。さらに磨きをかけようっと思いましてね。公爵家の奥様ですもの!!えぇ、公爵家の奥様!!ですから!!」


「ごほんっ!!」



エェエエレナさん!?

とっても刺々しいのですが?!

エレナさんの言葉を聞いて旦那様は目つきを鋭くされています。

どうしましょう、どうしましょ!!

そうぐるぐると考えていると天の助け。

クリスさんが旦那様に声を掛けました。



「旦那様。いつまでもここに居ては他の者も仕事に移れませんので。お食事の用意は出来ていますので。」


「あ、嗚呼。」


「さぁ、奥様も。」



えぇ!?天の助けだと思って居たクリスさんのまさかの裏切りですか!?

私、旦那様と一緒に食事をするのですか?!

うぅ・・・ちゃんと食べれるでしょうか?

いえ、勿体ないことは出来ないので全部食べますが。

あっ、そうだ。



「あっあの!!」



思わず落ち込んでいたが、それよりも大事なことを忘れていました。

一応さっき言いましたが、きっと皆さんの声で聞こえていないと思いますし。

家族でも大事にしていることでしたし。

そう思って思わず、旦那様を止めてしまう。

旦那様は怪訝そうにこちらを見ている。



「おっお帰りなさいませ、旦那様。」



そう、これを言わなくちゃって思ったんです。

挨拶は必ずしなさいって母からきつーく言われてましたし。

しないと落ち着かないっていうか。

うんうん、ちゃーんと出来たのでいいです。

1人満足していた私は気づきませんでした。

旦那様が目を見開いたのを。

そして小さな声でただいまと言ったことを。

その時に耳が真っ赤だったことも。

それを知っているのはしっかりと見ていたクリスさんとエレナさんだけ。



「さあ、早く行きましょう。奥様!」


「えっえぇ。」



エレナさんに押され、旦那様の隣を通り先に行ってしまう。



「旦那様。素敵な奥様でしょう?」


「・・・。」



無言の旦那様にクリスさんは大きくため息をついたことはグイグイ押されている私は知ることもなかった。

少し遅れてやってきた旦那様。

その後の食事は無言で、とっても居心地が悪かったです。

うぅ・・・味がしませんでした。

食は私の楽しみの一つなのに・・・。

早々に食べ、旦那様が立ち去った後、速やかに部屋に戻りベットに飛び乗りました。

お行儀が悪いのは百も承知ですが、今日は許してください。

もう私の精神はすり切れる前です。



「うぅ・・・やっぱり、いつも通りで良いですぅ・・・。」


「奥様。」



エレナさんが苦笑いを浮かべています。

でもでも、いつも通りで良いです。

旦那様と顔を合わすと緊張します。

出来ればしばらく顔をあわさなくて結構です。



「なんで、今日は早く帰って来られたんでしょうか?」


「さぁ?いつもならば、お城で遅くまでいるはずなんですが・・・。私も今日は旦那様が早く帰ってくるとしか聞いてませんので・・・。」


「そうですか。」



うぅん・・・。何かあったのでしょうか?

もしかして思い人さんと何かあったとか?

そういえば、私、旦那様の思い人についてなーんにも知りませんね。

思いを通じることができない方としか聞いてませんし・・・。

んんー既婚者の方とかでしょうか?

旦那様なら、どんな方でも両思いになれそうですが・・・。



「あの、エレナさん。旦那様の思い人って誰か知ってますか?」


「えっ?」



少し疑問に思いエレナさんに聞くとエレナさんはビックリしたようで。

嗚呼。これは聞いてはいけないものでしょうか。

そうですよね。

旦那様のことを勝手に調べるようなことをしては。

そう思い、慌てて先ほどのことは気にしなくてもいいと伝えようとしたのですがエレナさんがずいっと近づいてきました。



「奥様は知らなかったのですか!?」


「えっ?」


「旦那様の思い人です。このことは正直、社交界でもとても有名で、もう飽きられているぐらいです。」


「そっそうなんですか?」


「はい。皆が知っているので、あまり旦那様に言い寄る方も少ないぐらいです。残念公爵とも言われいますし。結婚するにはちょっととも言われているそうで・・・。私ども正直不甲斐ないと思うほどで・・・。」



そっそんなにですか?

あんなにかっこいいのに。



「だからこそ、今逆に旦那様が結婚したことはとっても注目されています。どんな方が奥様になられたのかと。」


「へっ!?」



へっ!?注目されている?

一体誰が?

旦那様の奥様が。

旦那様の奥様って・・・あ、私ですね。

お飾りですが一応、私・・・。

えっ?嘘ですよね????


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