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「ああ、嗚呼!!なんて美しいんだ!!」



目の前の光景が信じられない。

嗚呼、女神が舞い降りてきたんだ。

美しい、美しすぎる。

なんて、俺は運がいいんだ。

女神を伴侶にできたなんて、前世で世界を救った勇者なのかもしれない。



「もう、旦那様。お世辞も言いすぎると嫌味のようですわ。」


「お世辞なんかではない!!心の底からそう思っている!!」


「もうっ。」



ふふふっと柔らかく笑うミミの美しいこと。

嗚呼、このまま閉じ込めてしまいたい。

今日のミミは夜空をイメージさせる濃藍のドレス。

宝石も星を思わせるように散りばめられている。

本当にミミによく似合っている。

夜空から舞い降りた月の女神。

そう思えてしまう。

攫われたりしないだろうか。

嗚呼、やっぱり今日は夜会に行かずに屋敷で。



「んん!!」


「あら、クリス。」


「奥様、とてもお似合いですね。」


「ふふふ、ありがとう。エレナ達がとっても頑張ってくれたの。」



クリスめっ!!

ミミに対しては優しく微笑んでいるが、俺に対して冷たい目で見ている。

分かっている。

今日の夜会は必ず行かなければならないってことは。

あの姫の婚約発表の夜会だからな。

必ず見届けなければならない。

いくら隣国の陛下達が心の広い方達でも、あの姫が問題を起こさないとは思えないからな。

最後の最後まで悪あがきをするかもしれないから。

そのときにはどうやっても止めなければならない。

皇太子殿下の命令もあるからな。

本当に、どうにかして欲しいな。

そう予想が立つならそれこそ自分たちでどうにかしてほしいが。



「旦那様?」


「嗚呼、すまない。大丈夫だ。」


「そうですか?ならいいのですが、そろそろ出発しなければ間に合わないっとクリスが。」


「えっ、嗚呼。そうだね。」



クリスを見れば早く行けと目で訴えている。

分かっている、今日は必ず行く。

今日は半分仕事でもあるのだから。

いや、でも、別にミミは来なくても・・・。



「はいはい、旦那様。もう奥様は馬車に乗ってますからね。」


「なっ!?誰が連れて行った!?」


「エレナです。旦那様がいつまでたっても動かれないので、今やってきたエレナが連れて行きましたよ。」


「なんだと!!」



急いで外に出れば、もうミミは馬車に乗っていて、窓からエレナと話していた。

嗚呼、俺がエスコートするはずが。



「ちょ、落ち込まないで、さっさと行ってください。いいですか、旦那様。あの姫が何もしないとは考えられません。必ず奥様に危害が加わるようなことはあってはなりませんので必ずお守りくださいね。」


「嗚呼、もちろんだ。」


「もし、そんなことがあれば、屋敷の者、皆が怒り狂うことでしょう。そうならないように宜しくお願いします。」



深く頭を下げるクリスに、本当にミミはこの屋敷にいなくてはならない存在だと強く感じる。

これほど屋敷の者たちに愛される人がいただろうか。

母上だって慕われていたが、ミミはそれ以上に感じる。

今、この屋敷はミミを中心にして回っている。

ミミが笑えば、皆も幸せそうだが、ミミが涙すればきっと全ての者がその涙を拭うために動くだろう。

勿論、それは俺もだが。



「旦那様。どうぞ。」


「嗚呼、すまない。」


「いえ、どうか、奥様を宜しくお願いしますね。」


「嗚呼、もちろんだ。」



いつもは喧嘩腰のエレナも今日は本当に心配そうにミミを見ている。

それを安心させるように、頷く。



「旦那様?」


「何でもない。ではいってくる。」


「はい、いってらっしゃいませ。」



ミミの隣に座り、馬車が動き始める。

嗚呼、何事もなければ良いのだが。

そう願うが、そうはいかないだろう。

ついて、中に入れば、全ての視線がこちらにむく。

それはそうか、あの日以来の社交界だからな。

あの時以来、夜会は勿論、ミミに来ていた茶会も断っていた。

勿論、ミミには知らせず。

今、ミミを外に出す気は一切ないと返事をすれば、皆納得した。

姫の噂は広く知れ渡っていたし、それこそあの場を目撃した者は納得するしかないだろう。

しかし、あの夜会から美しいと有名になってしまったミミ。

一目見たいと思う者たちが後を絶たなかったが、理由を話せば仕方がないと諦めていた。

これが落ち着いたら、少し考えても良いかもしれないが、正直ミミはこのまま屋敷に居続けて欲しい。

まぁ、スーニャがそれを許さないだろうが。

でも、今はあのスーニャでさえ、納得したのだ。

それほど、今の姫は何をするか分からない。

これほどとは誰も思わなかっただろう。



「ミミ。」


「はい、旦那様?」


「今夜は絶対に俺から離れてはダメだよ。」


「えっ?あっ、はい?」



ミミは分かっていないようだが、確かに頷いたのを見て、少し安心する。

ミミは素直で約束をしっかりと守る子だから、事前に約束しておけば自分から離れることはないだろう。

誰かが無理やり離さなければな。

そんなことはさせないし、絶対に俺がミミを守る。

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