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バタリと音がしたので、扉の方にめをむければ、やはり奥様がいらっしゃった。
旦那様にお茶を入れに行き、多分、しばらく旦那様が奥様を引き止めたに違いないので、傍を離れ、他の仕事を終えて、奥様を待っていたのだが、帰ってきた奥様はそのまま固まっている。
一体、何故?
不思議に思いながら奥様に近づく。
「奥様?どうなさりました?」
「っ。」
「えっ?」
俯いた奥様の顔を覗けば、奥様の顔は真っ赤。
「奥様!?どうなさいました?熱ですか!」
「えっあっ!ちっ、違うわ!違うのよ!エレナ!大丈夫!熱じゃないわ!!」
「えっ、しかし!顔が真っ赤ですよ!?」
「あっ、こっこれは旦那様が。」
「なっ!?あの糞旦那様ですか!?奥様になにを!?今スグ懲らしめてきます!!」
「えっえっ!?ちょっ!エレナ!まって!まってまって!!」
奥様に必死に止められて、なんとか止まりましたけども、一体何をしたの!?
あのバカ旦那!
「あのね、別に旦那様になにかされた訳じゃ、ないのよ?」
「本当ですか?」
「えっ、えぇ。そのいつものように、抱きしめられたり、あっ、後は額にキスされたっけ?」
「なっ!!」
あっあっあっあいつーーー!!!
なんてこと!!
奥様に変態行為をするなんて!
1発殴るだけでは許されない!
「あのあの!エレナ!大丈夫だから!大丈夫だから!落ち着いて!」
「しかし、奥様!」
「いっ嫌だった訳じゃないから!ただ、ビックリはしたけど。」
「奥様。」
「額にキスはよく家族でもすることがあったから、慣れてはいるのよ。でも、まさか旦那様にキスされるとは思わなかったからビックリしてね。」
そうやって笑う奥様ですが、いや、びっくりして当然ですよね!
だって、旦那様は他人ですもの!
言っておきますが、契約結婚ですので、旦那様と奥様は、別に愛し合って結婚した訳では無い!
しかもしかも、今は旦那様は奥様に対して恋愛感情をもっているが奥様は一切ないのだから、そんなあかの他人に急に額だろうとキスされたらビックリします。
いや、寧ろ引きます。
私なら確実に引きます。
した後、腹にパンチを埋め込みます。
した相手に。
しかし、奥様はそんなこともせず、しかも嫌じゃなかったと言う。
なんてことでしょう!
なんてお優しい!!
いや、これはもしかして旦那様を?
「あの、奥様?」
「んっ?なぁに?」
「あのですね、もしかしてあの馬鹿旦那様のことを好きになったのですか?」
「えっ?好きよ。」
ええ!
サラッと言われてしまいました!
まさか、いつの間に奥様も旦那様を思っていたのですか?
「あら?勿論よ、旦那様のことは家族として好きよ?」
「あっ嗚呼、なるほど。」
納得しました。
つまり、私達と同じ好意と。
なるほど、なるほど。
しかし、それでは何故、奥様の顔が真っ赤だったのか。
「えっと、それで、ビックリされたから真っ赤だったのですか?」
「えっ、あっ、それもあるけど。」
あるけど?
えっと、まだ何かあるのですか?
あのバカ、まだ何かしやがりましたか!?
「えっとね、旦那様から告白されて。」
「告白?何のですか?」
「あっ、恋愛の。」
んっ?
告白っていうから、また何か変な告白でもしやがったかアイツと思ってましたが、恋愛の告白なら、今までだってしてましたよね?
あれ?
「それなら、前からしてませんでしか?旦那様。」
「えっ、あっ、えぇ、されていたけども、ずっと演技だと思っていたの。」
「えっ!?」
演技!?
あれが!?
もう、本当に鬱陶しいぐらいベタベタと奥様に引っ付いてそれこそ砂糖を吐くんじゃないかと思えるぐらい甘々な言葉を吐きまくっていたのに!
あれが、演技だと奥様に思われていた!
うわー、うわー、旦那様、少しだけ同情いたします。
「何故、演技だと?」
「だって、最初契約結婚だったのよ、私達。それこそ、絶対に好きにならないって言われていたし、そうだよねって納得してたから。でも、周囲には契約結婚だってバレないようにしなくちゃいけないから、それこそ、外に出た時はラブラブのフリをしなきゃって思ってたから、だから、その旦那様のあの言葉達は全部演技か、親愛としての言葉かなって思っていたの。」
嗚呼、なるほど。
奥様は最初最悪な出会いだった旦那様に愛されることは絶対にないと無意識に思っていたのですね。
そして、旦那様が愛を囁いても、それは何かの冗談ぐらいにしか思えていなかったと。
なんというか、自業自得ですね。
「だから、その今まで、本当に愛されてるなんて思っていなくて、それで、今日、その本当だって分かってから、その、私が愛されるわけないって思ってたから。旦那様だけじゃなくて、その男性からはって。」
「えっ?」




