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私は全てを話しました。

金さんに会った時のこと、金さんと過ごした日々のこと、そして別れの約束を。

そしてその後ずっとずっと金さんのために祈り続けたことを。

そのことをじっと旦那様は黙って聞いて下さりました。

旦那様が、金さんのことを知りたいと言った時、本当に驚きました。

それまでにも驚きばかりで。

旦那様が本当の本当に私を愛しているなんて。

気の迷いであると思っていたのに。

なのに、なのに、瞳を見つめていたら分かってしまった。

その瞳に欲があることを。

それをみた瞬間、驚き、そして旦那様の言葉にさらに驚いてしまった。

こんなことになるなんて。

そんな風に考えたことは一切無かったのです。

誰かにこれこんな風に思われることがあるなんて。

そんなこと、あってはならないと思っていたのです。

だって、私は。



「君は本当に今でもその人をおもっているんだね。愛しているんだね、ミミ。」


「えっ?あっ、でっ、でも、もう金さんが来る事はないってことはよく分かっているんですよ。もういくら待った所で。」


「ミミ。」


「本当に馬鹿ですよね。そんなこと分かりきっているのに、今だに引きずっているんですよ。たとえ、金さんがまた来てくれることがないって分かっていても、それでも、金さんを思って、幸せを祈るっていう、本当に馬鹿みたい。」



今だに金さんを思う自分がなんて愚かだとはよく分かっているのよ。

エレナ達には来なくてもいいって言ったけども、それでもどこかでもしかしたらって思っている自分が全くいない訳ではないし、金さんの幸せを願っているっていう気持ちも嘘じゃないけど、でも、今でも金さんが私を思ってくれたらってどこか片隅で思っている。

本当に馬鹿みたい。

だからこそ、旦那様が姫に対して、契約結婚までして思いたいって聞いた時、仲間だと思ってしまっていたのね。

勝手にだけど。

だからこそ、思えなかったのかもしれない。

旦那様が私を本当の意味で愛してるなんて。

親愛はあれど、その恋愛の意味でなんて私を思うことは無いって、だって、仲間だから。

私が金さんを思い続けるように、旦那様だって姫を思い続けるのではないか、例え、姫を思わなくなっても契約結婚で結ばれた私なんかを愛するはずがないってそう思い込んでた。

だってそうじゃないと、困ってしまうから。

私は今だに初恋を引きずり、愛し続けている馬鹿な女なのに。

なのに、なのに、そんな私を愛する人ができるなんて、そんなこと。



「そんなことはない。それほど愛し続けるミミは素敵だよ。正直、ミミを愛している俺からしたら、本当にソイツが憎くて憎くて仕方がない。しかも狼族で同じならば、俺を愛して欲しいって思うさ。ソイツの代わりでもいいからさ。」


「そんな!そんなことはできません!旦那様と金さんは全く違いますから!」


「でも、同じ狼さ。それこそ、狼になってしまえば、金色か銀色の違いしかないさ。それこそ、魔術を使えば毛色なんて変えられるし。」


「馬鹿なことを言わないでくださいっ!!旦那様は旦那様です!金さんは金さん!代わりなんてなれません!」



何を馬鹿なことを!

旦那様は旦那様でしかないのに、代わりなんて。

それに代わりに愛されたとしても、それは本当の幸せではないことは旦那様自身がよくわかっているはず。

本当の自分を愛してほしい、獣人族としての自分も愛してほしいと願い、故に姫を愛した旦那様が、代わりなんていうなんて。



「ふっくっ、ふふふっ。」


「だっ、旦那様?」



真剣に私は言ったのに、聞いた旦那様は急に笑い始めた。

どうして笑い始めたのか分からず、困惑してしまう。



「だから、君がいいんだ。」


「えっ?」


「ミミ、やっぱり君が好きだ、愛している。君以外ありえないんだ。」


「だっ、旦那様?」


「さっき言ったことは嘘じゃない。始まりは代わりだっていいと思っている。最後に、俺を愛してくれるようにする自信がある。けども、それをミミは絶対に頷かないだろうとも思っていたよ。そんなミミだからこそこれほど愛おしいんだ。」



そっと触れられる頬に熱が集まるのを感じる。

困惑している内に柔らかな感触が額に感じ、目線をあげれば旦那様の顔が。



「だっだっだっ、旦那様!?」


「もう、信じてもらえたかな?俺が真剣に君を愛してるって。悪いけども、逃がすつもりは無いから。」


「えっ、あっ、それはもちろん。だって、旦那様には実家の方を助けていただいたし、その、契約はそうなってましたし。」


「嗚呼、そうだ、契約!契約の内容で、ミミは何でも自由にしていいってなっていたけど、悪いけどもあれ、変更させて?」


「えっ?」


「愛人をもつことは禁止。勿論、俺ももつことはないよ。いやー、そこを自由にしてたけども、今、ミミに愛人なんてできたら、相手を殺しかねないからね。だから禁止させてもらうよ。」



えっ、そりゃあ、金さんを思っていますから、愛人なんてもつ気最初からありませんでしたが。

しかし、旦那様まで?



「ミミ以外には愛せないから、意味の無い約束だけども、ミミにだけ課しておいて、俺は自由なのは不公平だからね。」

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