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先ほどまでいたビィーを探して庭まで来たのだけども、そのビィーがいないとは。
エレナに聞けば元々お休みだったとはね。
だから基本お庭にいるビィーがあんなお屋敷の玄関の近くに居たのね。
嗚呼、それならしばらく捕まえていて悪かったわ。
もしかしたら、用があって玄関の方に来ていたのに立ち止まらせてしまって。
でも、姫が居たから行けなかったのかしら。
まぁ、後でビィーにあったら謝らないとね。
でも、お休みだったからかしら。
ビィーったら普段着は庭師見習いとして動きやすく汚れてもよく、そして道具が入るようにって、オーバーオールが多いのだけども、今日は黒色の服装だったわね。
いつも被っている麦わら帽子も無かったし。
ビィーは黒色が好きなのかしら?
うちのセッカもそういえば黒色の私服が多かったかしら。
若い子には黒が流行ってるのかしらね。
大人っぽくみえるからとか。
私にはあまり黒は似合わないから、似合う2人が羨ましいわ。
2人ともクールでシュッとしてるから黒色がよく似合うのよね。
でも、欲を言えばもう少し可愛らしいデザインのものでもいいのではと思うのだけども。
2人ともとっても可愛い女の子なのだから。
一度セッカに可愛らしい紺色のワンピースを送ったことがあるのだけども、とっても喜んでくれたけども一度も着てくれないよね。
気に入らなかったのかと思ってショックを受けてたのだけども、セッカの部屋に行った時に、それはそれは大事に飾られててとても困ったわ。
着て欲しいっていっても汚したら大変だからって着てくれなくて。
それで一度喧嘩したことがあったわよね。
もう、あのサイズの服は合わなくなってるし、また今度服を新しく送ってもいいわよね。
フランやスールにも服送りたいと思ってたし。
フランはとっても可愛い妹だし、スールもとってもカッコいい弟だもの。
私はお父様に似て、平凡だけど、あの2人はお母様に似て美形になるはずだからね。
なんでも似合ってしまうのよね。
この前、旦那様と出かけた時にとてもデザインが良くて、でもお値段がリーズナブルなお店があったのよね。
家事を実家の時よりしなくて、いえ、させてくれなくて時間が空いたから前は内職でしていたハンカチの刺繍を少し手間をかけてしたのをエレナに売りに行ってもらったら結構なお金になったのよね。
前は質より量だったから数をこなしてって感じだったけども、すこし手間を加えるだけであれだけになるなんて。
いや、でも実家では忙しかったからいい刺繍のアイディアだって浮かばなかったもの。
決まった刺繍を入れるので精一杯だったもの。
あれはあれで良かったのよね。
まぁ、そんなこんなでお金も出来たし、2人に今度送りましょう。
それにセッカとビィーにも。
喜んでくれるか分からないけども、セッカは勿論、ビィーも私にとって妹のような存在だから可愛がりたい。
エレナはお姉さんって感じかしら?
時折幼く感じられるときもあるのだけども。
でも、エレナは貴族の娘だと言っていたから、私が送るなんて、迷惑かもしれないし。
ビィーは庭師一家生まれだからって言ってたから、私と変わりないなんて言ってこの屋敷に着て1番最初に仲良くなったのよね。
ふふふ、もう懐かしいわ。
「奥様。」
なんて考えているとクリスに声を掛けてきた。
話を聞けば、領主としての仕事を旦那様がしているので、休憩にお茶を入れて欲しいとのこと。
私じゃなくて、エレナや他の子が入れた方が美味しいのではっと思ったけども、クリスがわざわざそう言ってくるってことは何か意味があるのだろうし、了承したのだけども。
「私で本当にいいのかしら?」
「奥様?何を言っているのですか?奥様にお茶を入れていただけるなんてとっても喜ばしいことですよ!!」
「もう、エレナったら。」
「本当です!私ならそれこそ涙を流して喜びますよ!!」
「あら?そう?なら、旦那様に入れた後、エレナにも入れてあげるわよ?」
「本当ですか!!」
「ええ。」
あらあら、エレナったら本当に嬉しそう。
もう、こんなに喜んでもらえるなら、いつだって入れてあげるのに。
さあって、まずは旦那様よね。
旦那様の執務室に行けば、旦那様は難しそうな表情で書類を睨んでいます。
一生懸命にお仕事されているようですし、静かに入りましょう。
「クリス、ここなんだが。」
「あっ、そこは、この前の資料からわかると思いますよ。」
「んっ?えっ?」
「えーっと確か、この辺りにあったかと。」
ヒョイっと本棚から探して取り出して旦那様に渡そうとすると、旦那様は何故か固まっていました。
「旦那様?」
「えっ、ミミ?」
「はい?」
「ほっ本物?」
「ええっと、私の偽物がいるのでしょうか?わかりませんが、一応、本物ですよ?」




