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秘密?

秘密って一体。



「この屋敷の住人は皆、獣人族なことを。」


「あっ。」



その事ですか。

そう言えばそうでした。

もう普通すぎて秘密ってことを忘れていました。

っというか、そう言えば旦那様は銀狼でしたし、もしかしてお義母さまも?



「ふふふ、私は先祖が獣人族よ。昔、この国にやって来て、そのままこの国の人間と結婚してきたから獣人族とは言えないわ。まぁ、それでも先祖が獣人族だから、他の人達よりは理解しているとは思っているし、だからこそあの人の婚約者となり、こうしてあの子を産み、育てることができたの。」


「そうなんですね。」


「えぇ、一応ね、秘密を守るためにも理解のある一族から婚約者を選ぶようにはしているのよ。でも、時には、知らない人を嫁に貰ったり婿に貰ったりすることもあったそうよ。それに当主しか先祖のことを言い伝えていないという一族もいるから。ちなみに私はあの人と婚約が決まった時に私の父から教えってもらったのよね。それだけ、この公爵家はこの国とって大事であり、秘密にしなければならない事なの。」



そんな!

そんな大事なことをすっかり忘れていたなんて。

しっかりと覚えておいて、秘密にしておかないと。



「ふふふ、大丈夫よ。ちょっと口が滑っても、まず信じられることはないはずだから。だから、知らない人達がこの公爵家にやってきた時には相当皆警戒しているはずなのよ。それがミミちゃんには無かったから、嗚呼知っていて、そして、受け止めてくれているんだなって分かったの。」


「この1日でわかったんですか?」


「えぇ、一応元公爵家の奥様ですもの。よーく知っているわ。この屋敷の子達の様子はね!でも、本当に良かった。とても心配していたの。ミミちゃんは縁もゆかりも無い子だったもの。そんな子をって思ったけども、あの子が姫を諦めてようやく結婚しようと思えたのなら否定することなんてできなかったし。」



諦めてっていうのは違ったんですが。

諦めていなかったからこそ、縁もゆかりも無い私が選ばれたなど言えない。

言ってはいけない。



「身分は高けれど、絶対に王族とは結ばれてはならない。それが私達一族の決まりだから。だからあの子が姫を想ってしまってもその想いは実ることは絶対にない。諦めてもらうことしかできなかった。でも、こうやってミミちゃんがお嫁に来てくれて、あの子は、本当に幸せそう。本当に、本当にお嫁に来てくれてありがとう。ミミちゃん。」


「そんな、私は。」


「ふふふ、それに私の夢である娘がこーんなにも可愛いなんて!本当に本当にミミちゃんがお嫁に来てくれて良かったわーー!!」



そう言って笑顔で抱きしめてくれるお義母さまに、ジクジクと心が痛む。

うぅ、実家の為とはいえ、騙してしまっている事実が本当に辛い。

こんなにもお義母さまは喜んでくださっているだなんて。

今は結婚した当初よりは旦那様との関係は身近にはなっているけども、旦那様は本当に幸せになっているのかは分からない。

今は何を勘違いしているのか、私を愛していると言っては来ているが、これから色々な人と出会い話せば、それこそ、旦那様が姫を想ったよりも素敵な人に出会えるかもしれない。

そうなった時には私は契約結婚なので、身を引かなければならないのですが。

うぅ、そうなった時にどう説明しようか。

いえ、そうなった時は素直に話すしかないのかしら。

嗚呼、娘ができて、こんなにも喜んでる優しくしてくださっているお義母さま。

本当はそんな優しさを与えてもらえる立場ではないのに。

そう言えば、お義母さまは娘が欲しかったと言ってはいるけども、旦那様は一人息子で兄弟はいないわ。



「あの、お義母さま。」


「なぁに?ミミちゃん。」


「あの、聞いてもよろしいのでしょうか?」


「ん?なんでも聞いて。」


「あの、なんで、娘が生まれたらって?」



確かに公爵家の跡取りは必要で、男の子を望んでいたのかもしれない。

でも、例え、娘が生まれても婿を貰えばいいだろし、それにお義父さまとお義母さまは娘でもとても可愛がっていただろうから幸せにできないということはないとは思えるのですが。



「ふふふ、そうね、娘が産まれていたら、きっととっても可愛がっていたわ。それこそお嫁に出したくないくらいよ。」


「お義母さま。」


「でも、長男がいるうちにもし、女の子が産まれていたら、お嫁に出さない訳には行けないわ。この家でずっと守っていけない。」


「えっ?」


「獣人に生まれ、しかしそれを秘密にしておかなければならない。この屋敷にいる時には理解しているもの達だけだけど、この屋敷から出てしまえば、お嫁に行ってしまえば1人で自分の秘密を隠していかなければならない。まず、愛した人と結ばれることも出来ないかもしれないわ。」


「それは。」


「それは、あの子もそうだったはね。あの子が生まれて、大きくなっていくうちにあの子はね、とっても絶望したの。自分が獣人族であることによって、色々なことが出来ないことに。友達だって自由には作る事は出来ず、不自由しないようにと考えて用意をしてはいるが結局あの子の望むものは手に入れられない。いいえ、手に入れられないはずだったけども、ミミちゃん。あなたと出会って、あの子はようやく望んでいたものを手に入れられたのよ。」



旦那様が望むもの?

手に入れたって?

私と出会って?


「でも、絶望していくあの子を見ていて、次の子を産む勇気は無かったわ。ふふふ、だから娘が産まれたらだけではなくて、娘でも息子でも、次に生まれた子もあの子のように絶望するのではないか、幸せにならないんじゃないかって思うとね。だから、私は娘が欲しいって夢を諦めてしまったわ。本来なら公爵家だし、この国にとっても重要な役目を担っているのに、ね。」

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