53
旦那様と過ごす時間が増え、旦那様に甘やかされることが増えていく中で、時折暇を見て、畑仕事をしたり、他のお手伝いをしたりとしていく毎日。
ルーミックさんのお店にもエレナ達と行った時にはルーミックさんから実家の様子を聞き、みんな元気にしているようだった。
定期的に手紙を書き、返事も貰ってはいたが実際に、目にした人の話を聞くと更に安心できた。
父様は本当にお人好しで優しい人だから、母様の方がしっかりしているものね。
そんな2人の話を聞いたり弟達の話を聞いたりと実家のことを懐かしく思いつついたからかしら、旦那様のご両親が来るとは。
結婚式以来お会いすることがなかったご両親が王様達にご用事があるとかで、王都にやってこられたのです。
そのご用事と言うのが、表向きは隣国からのお客様をお迎えするためのパーティー、つまり夜会で、しかし、旦那様から聞いた話では姫様の婚約者発表の夜会だそうで。
その話を聞いた後、旦那様を心配して見たのですが、旦那様はそんな私をそれは優しい目で見て抱きしめられました。
そして、私に対して相当甘い言葉を頂きました。
そんな言葉を聞いて、未だに姫を愛しているとは思えず、まぁ、旦那様が傷ついていないことは喜ばしいことなので、黙って、抱きしめられていました。
しかし、お義父さま達が来るとは。
お迎えするための用意をしなくては!
「そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。ミミはいつも通りで大丈夫だから。」
「そんな訳にはいけません!一応、私は公爵夫人ですもの!」
お義父さま達とはいえ、お客様ですもの!
公爵夫人としてちゃんとおもてなしをしないと!
しっかりと出来ているって所を見せないといけませんよね!
じゃないと心配されてしまうから。
お義父さま達はそれこそ数回しかお会いしたことがないのですがとても良い方達でした。
田舎娘でしかない私をそれはそれは歓迎してくれて、そんな方達を騙していることに対して本当に申し訳なさがありましたが。
それでもちゃんと公爵夫人としてお仕事出来れば少しは恩返しになるかなと思っているのですから、しっかりとお出迎えして、おもてなしをするのですっ!!
「さぁ、エレナ!それにクリス、計画をしますよ!」
「はい、奥様!」
「分かりました、奥様。」
「嗚呼、ミミ。」
「旦那様はごゆっくりと休んでくださいませ。私がしっかりと皆とで計画をいたしますから!」
「勿論ですっ!奥様!ささっ!あちらに参りましょう!」
エレナに押されて、部屋を後にする。
どこかしょぼんとされた旦那様が目に入った気がしますが、気の所為ですよね?
「さて、奥様!ご指示を頂けたら皆、ちゃんと動く準備はできております!」
「ふふふ、さすがね!そうね、料理長にはお義父さま達がお好きな食事のメニューを考えてもらわないとね!それに、お部屋の準備をして、後は屋敷内のお花も変えないと!」
「皆に伝えておきます。」
「頼むわ!」
「後は、奥様と旦那様の新しい衣装ですが。」
「旦那様はきっと、騎士服でしょう?奥様のだけでよいのでは?」
「いいや、今回はそちらの服ではなく、公爵主人として参加されるから奥様と旦那様で合わせたものをと旦那様から聞いている。」
あら、そんなこといつの間に?
まぁ、クリスが言うのならそうなのね。
「奥様のお好きな物を選んでもらいたいとの事です。」
「私の?」
「えぇ、出来れば、奥様の瞳の色であるローズレッドはどこかに入れて欲しいとのことです。そして奥様にはスカイブルーを入れて欲しいとのことで。」
空色ってことは旦那様の瞳の色ね。
お互いの瞳の色を入れるなんて、どこぞのラブラブ夫婦みたいだけども、そう言えば私達はそのラブラブ夫婦を演じてたのよね!
しかも今回は以前愛していたと噂されている姫の婚約者発表だもの。
もう未練は一切ないとしないと他の人たちから可笑しく思われるし、それに、なによりもお義父さま達に信じてもらえないものね!
だから、そんなことを言われているのね!
「いやー、ただ単に旦那様は奥様に自分の色を纏って欲しいだけだと思いますが。あの人本当に幼稚で、嫉妬深いですから。」
「エレナ?」
「旦那様は奥様を本当に愛しておりますから。なーんにも考えてはおられていないと思います。」
「クリス?」
「まぁ、奥様が旦那様に対してそのような感情を持っていないことは我々は重々承知ですので、無理にされることはないかと思いますが、しかし、今回はできるだけお願い致します。心底嫌ならば仕方がありませんが。」
「いいえ、そんなことはないわ!旦那様は優しい方だもの!」
「それなら良かったです。今回は出来れば私達もお願いしたかったのですから。大旦那様達の目もありますし、なによりもあの姫に対してまだ心残りがあるとは思われたくはないのです。なので、奥様には是非とも旦那様の瞳の色を纏っていただきたいのです。」
クリスがここまで頼んでくるなんて、本当に今回の夜会は大きなことなのね。
それはそうよね、旦那様がはっきりと周囲に未練がないことを表さなきゃならない時だもの。




