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真剣なエレナの表情に何も言えなくなってしまう。
エレナが人を嫌っていたことは話してくれたからよく分かっている。
元々、最初に出会った時にエレナは仮面を被ったように上辺だけの笑顔だったから好かれていないことは知っていたけども、それは私が公爵家に相応しくないからかなっと思っていたのだけど。
少しずつエレナが心を開いてくれて、笑顔を見せてくれるようになったから、あまり気にしていなかったのだけども、ふとした瞬間にエレナが刺々しい雰囲気になるから気になって聞いてしまったのよね。
勿論、話さなくてもいいとはいったのだけども。
エレナはちゃんと話してくれて、獣人族を怖がりながらも下に見る人々が許せないとか、貶すことが腹立たしいとか。
そうよね、誰しも、望んでその人に生まれた訳では無いのに、それだけで差別されるのは間違っているとは思うけども、誰もがそうではないと話せば、エレナは笑って、わかってますって言ってくれたのよね。
私をみて、人だからと言って嫌うのは間違っているって思えたって言ってくれたのよね。
本当に嬉しかった。
だって、私はエレナが大好きだもの。
エレナに嫌われたら悲しいと思ってしまう。
人の感情だから仕方がないといえば仕方の無いことだけども、できればエレナが私といてもいいって思えてくれたらと思っていたから。
私のわがままでしかないのだけどもね。
でも、そんなエレナがこれほどまで言ってくれるなんて。
「ごめんなさい、エレナ。」
「奥様。」
「私はまだまだ自信もないし、正直言って自分が好きではないわ。だからまた貶してしまうかもしれない。でも、大好きなエレナに嫌われたくはないし、自分を好きにもなりたいわ。だから少しずつ、そうなれるように、がんばっていこうと思うわ。」
「奥様!!奥様には素敵な所が沢山あります!奥様がご自分を好きになれるよう私も全力でお手伝いさせていただきますから!!」
「あらあら、ふふふ、よろしくね。」
「はいっ!!!」
そうね、この時、私はよろしくねって言ったわ。
言ったけども。
その、これはちょっと違うような。
「奥様にお似合いの洋服の方をご用意しました!」
「えっと、まだ着ていないドレスもあったのだけども。」
「あれは旦那様が奥様の魅力をちっとも分かっていなかった時に適当に買ったものですもの!あれでは奥様の魅力を一切引き出せません!!!」
「えぇっと?」
「私は奥様にご自身をお好きになって頂くためにもご自身にあった服装をしていただきたいのです!大丈夫です、旦那様もご理解してますし、寧ろ、そうしろと言ってますので!」
「旦那様も?」
旦那様と言えば、あのお出かけ以来、もっと話すようになったのだけも、時折、何か話したそうにして黙ってしまうことが増えたのよね。
もしかしてこのことかしら?
女性の服のことだから言いづらかったのかしら?
「えぇ!勿論、奥様は、まだ着ていないドレスを捨てるだなんてことは望んでいらっしゃらないことはよく分かっておりますので、奥様に似合うようリメイクしようと思っておりますので。」
「あら!そうなのね!」
着ていないドレスがどうなることかと思っていたが、流石はエレナ。
勿体ないものね!
あんな高級そうなドレスを捨てるなんて、ショックすぎて倒れてしまうもの。
ふふふ、本当にエレナは凄いわ。
よく私のことも分かっているわ。
「奥様、今日はお茶会ですので淡い色合いでまとめて見ました。」
「流石はエレナ達だわ。とっても素敵よ。」
ええ、とっても素敵。
本当にエレナ達のお陰で、公爵家に恥じないぐらいには見えるものね。
「本当に花の妖精のようですわ!」
「前回の夜会の時も素敵でしたが、愛らしい奥様にはこのような色合いがよく似合いますわね!」
「流石はエレナさんです!」
「当然よ!奥様の魅力を最大限引き出すには全てを計算しなくてはなりませんもの!!」
「勉強になります!エレナさん!」
ううん、盛り上がっているわね。
仲良しさんでいい事だけれども、そろそろ出かけないといけないのよね。
そう、これほど力を入れているわけは、今日がお茶会の日なのだからですっ!
昨日旦那様がとっっても心配されており、ついていくなど言ってはいましたが、仕事のある旦那様を連れていく訳にはいけませんし、ましてや女性の集まりのお茶会に旦那様を連れてなど行けませんもの。
いえ、旦那様にとっては幼なじみのお家ですからいいのかもしれませんが、なぜかスーニャ様から旦那様は絶対に連れてきてはいけないと、書かれていたのですよね。
何故でしょうか?
理由は分かりませんが、お茶会の主催者がそういうのならば連れていく訳にもいけませんので、旦那様には渋々お仕事に行ってもらいましたが。