45
「奥様、どうでしたか?」
「とても楽しかったわ。ふふふ。」
「それは良かったです。」
「ありがとうね、エレナ。」
「えっ?」
お礼を言えばエレナは目をぱちくりしている。
その姿が可愛らしくて、また笑ってしまう。
「ええっと、なんのお礼でしょうか?」
「エレナでしょ?」
「へっ?」
「エレナが今回のお出かけの内容を考えたくださったんでしょ?」
「えっ、あっ、はい。えっと、旦那様が?」
「いいえ、旦那様は何も言いませんでしたよ。」
お出かけから帰ってきてからびっくり。
皆がお出迎えしてくれたのよね。
そういえば、前は夜会だったのもあって、遅くなるかもしれないのでってお出迎えは極小人数にしてくれていたのよね。
なので、外に行ってからお出迎えっていうのははじめてでとっても驚いたけども、どこか嬉しい気持ちもあったのよね。
それで旦那様と1度別れて、部屋に戻ってきたのだけども。
最初は気づかなかったのだけども、何かおかしいなって感じたのよね。
今回のお出かけ。
私が好みそうなお店ばかりで、最初は旦那様が知っていたのかなって思ってましたが、そういえば前にエレナが話してくださったお店ばかりで。
あのパン屋さんも、小物店の後に入ったお花屋さんやお菓子屋さんもエレナが前にこの辺にあるものでとっても素敵なお店なんですよって話してくれてたところで。
それに私はとっても興味をもっていたのだけども、なかなか外に行く機会もなくて、いつか行きたいなって思ってはいたけども。
そんな所ばかり行けば、きっとエレナが話してくれたのねってことが分かったの。
「どれも素敵な場所だったわ。」
「奥様。」
「本当にありがとう。」
「いっいえ、私はなんにも。ただ、旦那様に任せていれば奥様があまり好みじゃない場所ばかり行きそうで。勿論、旦那様も奥様に喜んで欲しいとは思ってはいたようなんですが、旦那様、今まであまり色々な、事に興味がないもので。周囲の方から聞いた場所は正直言って奥様の趣味ではない所ばかりなので。」
「そうなの?」
聞けば、エレナから出てくるお店は高級なお店ばかりで、そんな所にいけば、楽しむどころか緊張して気疲れしていたわ。
本当にエレナがお話してくれてて良かったわ。
「嗚呼、でも、その小物店は旦那様が見つけてきたんですよ。お知り合いがされているっていう小物店は。」
「あら!」
「私が伝えたお店達の周辺で見つけたらしく、私も最近できたもので、知りませんでしたが、とても良いところを見つけてくださったんですね。」
「ええ、そうね!」
ルーミックさんに久しぶりにお会いできたし、見つけてくださった旦那様に感謝です。
ルーミックさんも変わらずお元気そうで良かった。
こちらに来る時には忙しくて会えずじまいでしたし、結婚の話はしたけどもそれきりだったので、こうして偶然でも会えて本当に良かった。
魔導士様だったなんて、びっくりしましたが、いつもの優しいルーミックさんでしたし、頼りがいのあるお姉さんなので、これからも頼りにしてしまうかもしれません。
それをルーミックさんは笑顔で受け止めてくれるんですけどね。
「旦那様も奥様に喜んで欲しかったようで素直に話を聞いてくださったんです。」
「え?」
「奥様、こちらに来てから全く外に出ていらっしゃらないから、それを旦那様も気にしてたそうで。」
あら、外に出なかったのは、特に必要を感じなかったからなのだけども。
それを旦那様気にしていたなんて。
「そんな、こちらこそ申し訳ないわ。私は別に、御屋敷の中だけでも充分だったので、外なんて全く気にしていなかったのに。」
「ええ、それは私も知っていますので、旦那様には伝えています。」
「そう。」
本当にエレナって敏腕さんね。
今回のお出かけだって、それ以外のこともエレナが先々と考えてしてくれるからとっても助かっているのよね。
クリスもだし、他の人達も皆、とっても優秀だもの。
「本当にエレナが居てくれなかったら、私はダメね。」
「そんなことないです!!」
「エレナ?」
「奥様は、奥様は、ダメでは、ありません。奥様は、素敵な方で!」
無意識のうちに言っていた独り言をエレナが聞いたようで凄い勢いで反論されてしまった。
そんなに言われると逆に恥ずかしいのだけど。
でも、エレナが褒めてくれるのは嬉しいわ。
「奥様に出会うまで、私は、人など嫌いでした。でも奥様に出会って、本当に人を見直し、そして心の底から奥様にお仕えしたいって思えたんです。」
「エレナ。」
「だから、そんな悲しいことを言わないでください。例え本人の奥様でも、奥様自身を貶すことは私は許しません。」




