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「待たせたな、ミミ。」
「いっいえ。えっ?」
振り返って驚いた。
旦那様が立っているのだけども、その服装がいつもと違って、街の男性達が来ているようかもの。
質素な物になっていた。
いえ、旦那様は何を着ても似合いますが、いつもよりも輝きが抑えられ、街に居てもそれほど目立たないぐらいになってます。
「えっと、旦那様?」
「嗚呼、その服装も可憐で似合ってますね。街に行っても君を見て振りかえるものも多いだろう。エレナ、もう少し彼女の美しさを押さえることは?」
「これが精一杯です。奥様の愛らしさはなかなか押さえられるものではないのです。」
「仕方がない。」
えっ、一体なんの話ですか??
私は本当に慣れ親しんだ格好なのですが?
何故愛らしいやら可憐やらという言葉が出ているんです?
実家では普通にこんな感じで過ごしていたのですからなんの違和感もないと思いますが。
違和感があるのは旦那様の方では?
「あの、旦那様?今日はどこに?」
「嗚呼、すぐ近くに行こうかと。素敵な小物売り屋があると部下から聞いてね。そこならスーニャも喜ぶものがあるのではないかと思ってね。」
「そうなんですね!」
小物!
実家の近くにも合ったわね!
とっても小さなお店だけど、可愛らしい物を置いていて、そこの店主のお姉さんが気に入ったものしか出さないというこだわりのお店で、人気のお店だったんですよね。
毎日行っても飽きないぐらいのお店で。
「ミミはそういうお店は嫌いか?」
「いいえ、好きです。」
「そうか、ならミミもじっくり見ればいい。」
「はいっ!」
ふふふ、とっても楽しみになってきました!
一体、どんな物が置いてあるんでしょう!
ワクワクしながら屋敷を出ると、あれ?
「旦那様、馬車では?」
「近くだからね、歩いていこうかと思ってね。」
「えっ?」
「嫌かい?」
「いいえ。」
寧ろその方がいいぐらいです。
てっきり馬車で行くのかと思っておりました。
私的には歩いてゆっくりと見れる方が嬉しいし、近くなら尚更馬車を出すのも気が引けるので、歩いて行ける方がいいのですが。
しかし、旦那様はいいのでしょうか?
「良かった。なら歩いていこう。行っている最中に気になる店があるかもしれないから。」
「えぇ。」
旦那様がにこにこです。
それに慣れたように歩いていってます。
もしかして、旦那様、結構こうやって街に行ってます?
「大丈夫。迷ったりしない。度々、こうやって街の住人の振りをして様子を見に行くことがあるんだ。仕事でな。」
「そうなんですか?」
「嗚呼、結構こういう格好もするよ。情報収集とかね。他の国ではこういった格好でいる方が多いしね。」
「まぁ、そうなのですね。」
だから旦那様、慣れた様子なんですね。
旦那様のお仕事、よく遠征などがあると聞いておりましたが、まさか情報収集をされているとは。
大変なお仕事です。
「と言っても最近はあんまりしなくなったけども。部下に任せているから。」
「あら。」
「でも、大事な時には俺も動くから、一応着いていくのだけども。最近はめっきり減ったからね。ゆっくり休めるんだ。」
「そうなんですね。」
旦那様、最近早く帰られているなと思っていましたが、そういうことだったんですね。
部下を育てるというのも大事ですもんね。
ふふふ、でもいつもはキラキラしている旦那様がこんなに普通に見えるのがとても可笑しく思えてしまう。
だって、いつもは旦那様の横にいると申し訳なくて申し訳なくて仕方がないのですが、今の旦那様は安心するというか、いつもの旦那様なのに、格好や雰囲気って本当に大事なんですね。
いつもよりも緊張せずにお話ができます。
以前よりは全然緊張せずにお話できてはいるんですが、まだ旦那様を見ると緊張してしまうこともあるので。
でも、今はとっても安心して横を歩けます。
「あら、あそこからとってもいい匂い。」
「嗚呼、あそこはパン屋だな。」
「パン屋さん!」
暫く歩いていればとってもいい匂いがしてきた。
甘くて香ばしい匂い。
パン屋さんが近くにあっただなんて。
「ちょうど昼時だし、何か買って食べるか。」
「えっ!?」
「ミミは嫌かい?」
「いいえ!いいえ!」
嬉しいですけども、いいんでしょうか?
買い食いなんて。
行儀が悪いとか言われないんでしょうか?
心配して見てれば、旦那様は笑顔で店に入っていきます。
着いて入ればとってもいい匂い!
「わぁ、すんごく美味しそう!」
「そうだな、ミミはどれが気になる?」
「えっと。」
どれも美味しそうだけど、クロワッサンがツヤツヤで美味しそうに見える。
あっ、でもサツマイモのパンも美味しそう!
嗚呼、でも、ベーコンの入ったパンも!
嗚呼、どれもおいそうで迷ってしまう!!
いつも読んでいただきありがとうございます。
また誤字脱字のご報告もありがとうございます。
まだまだ拙い文書ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。