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「ミミとのデート、ミミとのデート。」
「はぁ。」
クリスがため息を付くが、そんなことも気にならない。
俺はとても今気分がいい。
なんたって、俺の可愛らしい奥さんと初デートすることになったのだから。
今、どんなことがあろうと笑顔で対応できる。
「旦那様、三日後がお休みなど聞いておりませんが?」
「有給休暇をとるからな。」
「それはまだ決まってないのでは?」
「必ずとる。殿下だって、俺が有給休暇をとることを止めはしないだろう。寧ろとれっと言ってくるぐらいだしな。それに仕事は困らないよう、明日、明後日で終わらせてくるから大丈夫だ。」
「そうですか。」
今まで仕事仕事ばかりで有給休暇などとったこともなかったからな。
貯まりに貯まっている。
ミミとのデートの為にならば、有給休暇をとっても仕方がないことだから理解するだろう。
寧ろ、それ以上に大事なものは無いだろう。
何より、今まで外に一緒に出ていなかったからか、昨日の夜会からあまり良くない手紙が来ていることは知っている。
クリスやエレナにそういうものは除外し燃やさせたがな。
名はちゃーんと覚えている。
何が離婚した際にはだ。
する気は一切ない。
嗚呼、夜会に連れていったのは間違いだったな。
本当に昨日の彼女は美しかった。
どの令嬢よりも美しく、そして可憐だった。
一目見た瞬間、行きたくなくなったが、クリスとエレナの冷たい目線から泣く泣く行ったがやはり行かなければと後悔ばかりだ。
しかも、俺が傍にいないことをいい事にゾロゾロとミミに群がりやがって。
人妻であることを知りながらもだぞ?
確かに、悪い噂も流れていたことは知っている。
実は運命の出会いとかではなく、契約なのでは?
不仲なのでは?とか言われていたのは知っているが、あれほど仲慎まじく居たのを見ても諦めない馬鹿があれほどいるとは。
本当に消し去りたいほどだ。
なによりも、まさかのスーニャのこの行動の速さ。
あの夜会で大層ミミを気に入ったのは分かる。
あいつと俺は本当によく似ている。
性格も、思考も。
異性だからこそ今の現状ですんではいるが、これが同性同士だったら決闘の一つや二つするぐらいに腹のたつ存在だ。
同じ思考をしておきながら、あいつは善人ぶる。
どれが最善の策かと分かっておきながらもあいつはしない。
とても甘い。
何かを犠牲にしなければならないことだってあるのだ。
生易しいだけではやってはいけない。
それなのに、彼女はそれをやめ、犠牲がない策を見つけて実行する。
それがなんとも腹立たしい。
出来るだけの技量があるというのに。
だから、腹が立つし憎らしく思うのだ。
そして、実行した俺を責めるように見るのだ。
だからこそ、俺はあいつを嫌になっていた。
会えば喧嘩にもなる。
でも、婚約者候補としては有難かった。
お互いが嫌いだから必要以上に馴れ合うことは無かったから、それにスーニャほどの女性はなかなか居なかったから近寄ってくる者も本当に少なかった。
そう俺が姫に恋するまでは色々な女性から視線を向けられることが多かったが、スーニャのお陰で表だって接してくるものはなかなかいなかった。
まぁ、姫に恋をし、スーニャとの候補も無くしてからは周りも見えなくなっていたから視線も気にならなくなっていたが、あの夜会でいまだに視線があるとはな。
しかも、囲まれるまでになるとは。
それのせいでミミの傍を離れてしまうとは。
久々だから丁寧に接していたが、前と同じでいいな。
そのせいでスーニャがミミに対して興味を、いや、違うな。
恋愛感情に近いものまでもってしまった。
本当に好みまで同じなのが腹立たしい。
姫の時には被らなかったが、まぁ、結局俺が姫に惹かれたあの言葉は偽りでしかなかったが、いや、だからあいつは姫に惹かれなかったのかもしれないな。
同性同士だから細かいところにも目がいったのかもしれない。
いや、それはどうでもいいが、まさかのミミに。
しかも、ミミと間接的にも話をしてしまった。
嗚呼、させないように必死に邪魔をしたのに。
話してしまえば分かるだろう。
ミミの魅力に。
「彼女の言葉、俺やあいつにとって水のようなものだろうからな。」
「はっ?」
本当にあいつが女で良かった。
あいつは俺と同じでありながら俺のもっていないものをもっているから。
男であればミミを奪われるところだった。
まだ、ミミに俺の気持ちを伝えてもいない。
できるだけミミが俺を見てくれるようになってからと思っていたが、すぐにでも打ち明けた方がいい。
いや、ミミが俺を愛していないことは知っている。
以前と違って積極的に話をすることや、一緒にいる時間を増やしているが、まだまだミミにとっては契約上の夫であり、少しは気を許してくれているかもしれないが、まだまだなことはよく分かっている。
でも、ちゃんと俺の気持ちを伝えないと、横から攫われることだってありえる。
それが昨日の夜会でよく分かった。
だから、こそ、次のデートで伝える。
「クリス、絶対にミミに楽しんでもらえるデートプランを立てるぞ!」
「あー、はい。」
「そういうことなら私から意見がございます。」
「えっ?エレナ??」
いつの間にいた!?
最近ますます、こいつのスキルが上がっているような気がするのだが。
まぁ、ミミに対して心底忠誠をはらい、その為にスキルを磨いているのだから文句は無いのだが。
「意見とは?」
「はい、このプランならば絶対に奥様を喜ばすことができると断言できますわ。」




