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きょとりとする奥様は可愛らしい。
本当に奥様はご自身に対して正しく理解されておられず、どれほど魅力的なのか分かってらっしゃらない。
昨日の夜会でだって大変注目されたそう。
それを、旦那様は、憎々しげに話してらっしゃった。
そりゃ、そうでしょうと心の中で思いましたが。
奥様は、今まで1度も表に出ておらず、屋敷の中だけで暮らしていましたから、悪い噂も大変ありました。
我が公爵家の奥様に対してなんたる無礼と思いましたが、本人である奥様が気にしていなかったので腹はたちましたが特に何かをするということはせずに居ました。
どうせ、奥様が社交界に出ればすぐ様そんな噂払拭されるのは分かっていましたから。
奥様は元々愛らしく優しく美しい方でしたが、この屋敷にきてからは私達がさらに磨きを掛け、クリスさん達が社交界での動き方をしっかりとお教えし、どこにだしても恥ずかしく無い完璧な奥様ですからね。
アホな噂をしたことを嘆けばいいと思うぐらいでしたから。
きっと、この夜会後、多くの誘いが来るとは思っておりましたが、まさかの最初がスーニャ様とは。
しかも、次の日の朝になど。
マナーとしては頭が痛いものですが、それほど本気とは。
スーニャ様は元旦那様の婚約者候補であり、幼なじみ。
しかし、その仲は相当悪く、周りから見れば同族嫌悪という感じでした。
幼い頃から喧嘩が絶えず、それこそ幼い頃は殴り合いの喧嘩までしていたとか。
さすがに大人に近づくにつれ、手が出ることはなくなりましたが。
それでもスーニャ様は相当旦那様のことを嫌っていました。
自分と同じ思考をし、好みも一緒なあのお2人。
一見相性がいいように見えますが、どうやらスーニャ様は旦那様よりも善悪を重視するようで、たとえそれが最善策だとしても犠牲のうえでならば実行しないのですが、旦那様は実行してしまう。
そこが違うようで、確かに旦那様の犠牲を払っでも最善策をするというのは多くの観点から見れば正しいことかもしれませんが、スーニャ様は納得ができず、また、それで旦那様がよりよい功績を残していることが腹立たしいようです。
まぁ、なんだかんだとスーニャ様は旦那様を嫌っています。
旦那様も、スーニャ様が同じ考えを持ちながらも実行できない愚か者だと思うこともあるそうで、しかし、それを考慮しつつ違う考えを旦那様には劣るながらも成績を残すことが出来ているスーニャ様を腹立たしく、憎らしく思うそうで。
なんともまぁ、犬猿の仲なのです。
そんなお2人、異性だったから良かったもの、同性だった場合、血を見るかもしれなかったと密かに思われていたりするのですが、今回、まさかの見るかもしれません。
その原因。
それが。
「エレナ?」
そうこの目の前の奥様です。
本当に、この方は男女共に魅力される方ですね。
私が一瞬で、心から仕えたいとおもえた様に、そう思う方もいるということ。
そして、それが旦那様とそっくりで、旦那様が溺愛している奥様に出会い話をすれば。
まぁ、予想は出来ますよね。
興味はもたれるかなーっては思ってましたが、こんなに早くラブコールがくるとは。
「旦那様が最近奥様に興味をもたれたでしょう?」
「えぇ、そうね。」
「で、旦那様とそっくりなスーニャ様も奥様に興味をもたれたんです。」
「えっ?」
興味どころじゃないと思いますけど。
チラッと見えた手紙の内容から相当好意をもっておられますよね。
いや、旦那様の話から相当気にしていたとはよく分かっていましたけども。
「旦那様とスーニャ様が同じものに興味をもつことは前からよくあったそうです。」
「そうなの?でも、旦那様は失恋仲間だから興味をもたれたのだけども、スーニャ様も失恋を?」
「そんな噂は聞いておりませんよ。」
「あら?」
いまだに奥様、旦那様については勘違いしてますが、私が正すことはしません。
旦那様の努力でどうにかしてください。
「多分、旦那様が失恋したことなんてスーニャ様は知りませんから。奥様と運命的な出会いをして結婚したことになってますから、姫に婚約者が出来ても失恋したとは誰も思いませんよ。」
「あっ、そうよね。そうだったわ。」
「なので、スーニャ様は旦那様が運命的に出会い溺愛している奥様に対して興味をもったのではないかと思います。」
「私に対して?」
「えぇ、で、お話をしてみたいと思ったけども昨日は全然出来なかったのでお話がしたいのではないのでしょうか?」
「そうなのかしら?」
いや、寧ろ話するだけじゃなくて、ガンガンにアタックしてくると思いますけども。
まぁ、同性同士ですし、スーニャ様は善悪のわかる方ですから、常識の範囲内でアタックされると思いますので私がとめることはありません。
寧ろスーニャ様を味方に付けることは奥様にとって良い事。
あの方は身分も、あの方自身の能力も素晴らしいですからね。
奥様に何かあった際は必ず助けになると思います。
まぁ、そうなることはまず、私達がなくしますがね。