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旦那様、今舌打ちしましたか?
というか、今声を掛けられましたよね。
声を掛けられた方に向けば、美青年が。
この方は確か、最初に挨拶をしたこの夜会の主催者。
「舌打ちなんて酷いなー。ローエン。」
「何の用だ。」
「本当に酷くないか?一応幼なじみなんだが?折角、挨拶をすませて来たのに。」
「俺はお前に用などないからな。挨拶なら一番最初にしただろう。」
「ちょっ、酷すぎませんかね?ねぇ、そう思いませんか?」
「えっ?」
主催者で、旦那様と幼なじみ、お話は聞いていたけどとても陽気な方だなと思って見ていれば急に話しかけられてビックリしました。
ルート・ウェンド侯爵様。
声を掛けられたならば答えないとっと思い口を開こうとすると旦那様が私とウェンド侯爵様の間に立ってしまいました。
あれ?
「ちょ、奥様が見えないんだが!?」
「見なくて良い。減るだろう。」
「減るか!?」
「だっ旦那様?」
いくら幼なじみでも失礼では?
そう思ってぐいぐいと旦那様を押せば、不満そうな顔。
「あーもう、そんなに束縛しないでもー。」
「馬鹿か。お前に見せたら減るだろう。俺のミミが。」
「うわー。溺愛じゃん。」
「嗚呼。なんたって、運命の夫婦だからな。」
「うわー。その噂冗談で聞いていたが、本当だったとは。それでも、幼なじみである俺も奥様を初めて見たんだが?結婚式も呼んでくれないし。」
「それは、家族で穏やかに結婚式をしたかったからだ。これほど愛らしいミミを他の奴らに見せるなど、勿体なくてできるか。」
「うわうわうわー。本当に吐きそうなぐらい溺愛じゃん。まぁ、そうなるのは分からなくもないぐらいだがな。こんなに可愛らしい方なら。」
「へっ?」
旦那様がうまく話を交わしているなーって思いながら聞いていれば、急にこちらをまた見られました。
結婚式は家族だけでして本当に良かったとか思い出していたのですが。
しかし、今なんて?
「ホント、お前には勿体ないぐらい可愛らしい方だな。今まで知られていなかったのが不思議なぐらいだ。」
「ミミの実家は遠く離れているからな。あまり都に来ることもなかったから、だからこそ誰にも知られずにいたんだ。そのお陰で、今、俺はミミを俺の愛しい奥さんにすることができたんだがな。」
「本当に幸運だな。さっき見てたが、あまり都に来ることもなかったて言ってたが、ダンスだってとても上手で、皆見ほれていたほどだぞ?」
「嗚呼。ミミは努力家だからな。本当に夜会などに連れてくるのではなかった。」
「おいおい、奥様を籠の中の鳥にでもするつもりか!?」
旦那様の話を聞いてウェンド侯爵様はぎょっとしている。
いや、旦那様のジョークですよ?
「旦那様?冗談を言いすぎですわ。ウェンド侯爵様、今の旦那様のジョークですのでご心配なく。」
「いや、えっ?」
「ふふふ、もう旦那様ったら。今まで私が表に出なかったことで色々と噂があったことは知っていますわ。」
「ミミ。」
「結婚してから嬉しいことに色々とお声を掛けて頂いたのですが、何分、私は名ばかりの田舎娘なので、自信がありませんでしたの。なので、色々と学び、自信がつくまでは旦那様に無理を言ってしまって。」
クリス達から噂はよーくよーく聞いていましたから。
そりゃね、結婚してから一度も表に出ない公爵夫人。
そりゃあ、あることないこと噂もされますよね。
しかも片田舎の娘だなんて。
私は全然気にはしないのですが、どうやら旦那様は気にしていたようなので、クリス達と相談して、もし何故出なかったのかを聞かれたときはこう言うようにしたのです。
「ミミ。無理など。」
「ふふふ。旦那様はお優しいですから。」
ソッと旦那様の腕に触れると、旦那様は一瞬目を見開き、ぎゅっと抱きしめられる。
ちょっ、旦那様!?
人の前ですよ!?
「いやー、本当に骨抜きじゃないかー。いやーでも納得だな。こんなに素敵な奥様なら他に目は行かないな。」
「なんだ、まだ居たのか?」
「酷くないか!?」
「それに何を当たり前のことを。ミミ意外に目など行くわけないだろう。ミミ以上に愛らしく可憐で慎ましい女性などいないのだから。」
「ちょ!旦那様!?一体何をいってますの!?」
ちょ、言い過ぎでは!?
いくらラブラブ夫婦に見せると言ってもそんなことを言わなくても!?
「事実だ。」
「あーあー。もう分かった分かった。お前がどれほど奥様を愛しているのかはよーく分かった。これで馬鹿な事を考える奴も、馬鹿な噂を流すものも居なくなるだろう。」
「当然だ。もしミミを悲しませる奴がいたならば、私自らが裁いてやる。」
「おーおー。怖い怖い。それにしても、独身には辛いものだ。私も早く愛しい奥さんを見つけたいものだ。」
「勝手に見つけろ。ミミ以上はいないと思うがな。」
「もう!旦那様!!」
いい加減にしてくださいませ!