表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/205

25

「どういうことだ!?」



思わず怒鳴ってしまった。

しかし、今の俺には冷静さなどない。

今日は休みだったが、急に部下で友でもある副隊長のマークに呼ばれて急いで仕事場に来たのだが、聞いた話は絶望だった。

先程まで穏やかに彼女のそばにいたのに。



「何故、そんな。」


「そんなに驚くことではないだろう?姫様もいい歳だったのに、今まで婚約者がいなかったことが可笑しいことだったんだ。この国にはちゃーんと王太子もいるのだから、姫様が他国に嫁ぐのは可笑しい話ではないし。」


「しかし!!何故、獣人族の王子なのだ!!」


「そりゃー、この国と隣国の仲を深めるためだろう?最近近隣の国が不穏な動きをしていることはよく知っているだろう?」



確かに反対の国では何やら不穏な動きをしていることは知っている。

その情報が入っていたから、彼女と結婚した次の日には調べに行かなければなかったのだから。

でも、だからといって、何故姫が。



「さぁ?今更だと思うけども、どうやら陛下と殿下が決めたようだぞ。」



陛下達が?

なんで、なんでだ!?



「ちょっ、おい!!どこに行く!?」


「殿下に話を聞きに行く。」



何故、獣人族と。

可笑しいではないか。

王族は、獣人族と結婚してはならなかったのではなかったのか!?

そうだ、そのはずだ。

だから今まで、どんなに恋焦がれようとも姫に愛を伝えることなど出来なかったのに。

殿下がそういっていたではないか!

王家に獣人の血は入れられないと!

例え、嫁入りだとしてもと!!

そう、言っていたでは無いか!!



「何故よ!!!お兄様!!!」



殿下であり、親友でもあるリード殿下の部屋に入ろうとすれば中から怒鳴り声が聞こえる。

これは。



「可笑しいでしょ!?なんで、どうしてよ!!?」


「落ち着け、リリィ。」



そうだ、この声は、俺の愛しい姫。

リリィ姫様の声だ。

しかし、今まで1度も聞いたことがないような声に思わず固まってしまった。

ルーベン殿下が必死に姫を宥めようとしているが、姫は尚も殿下に怒鳴りつけている。



「落ち着けないわよ!!なんで、私が!!蛮族の嫁に行かなければならないのよ!!」


「リリィ!!隣国のことをそう呼ぶなといっているだろう!!」


「なによ!!本当のことでしょう!?獣人なんて汚らわしいのに!!なんで、この私が!!」



その言葉に俺は頭が真っ白になる。

今、姫はなんて、言った?

獣人を汚らわしいと?

そんな、そんなことを姫が?

何故、遠き昔に獣人は強く美しいと言ってくれていた姫が。

嗚呼、そうだ。

あのデビュタントの時に姿は見えずとも、そう言ってくれた姫。

そうだ、暗く姿は、見えなかったがあの場所に居たのは王族でしかないはずだから、王族でデビュタントなのは姫しかいなかったのだから。

なのに、何故、姫が。



「嫌よ!絶対に嫌!!」


「リリィ!いつも言っているだろう!!叔母様達に影響されてそんな風に言うのはやめろと!!お前は王族なんだぞ!!隣国をそういう風に言うのをやめろ!」


「なによ!!お兄様はいっつもそう言うわ!!でも、可笑しいじゃない!!人から獣にもなれるなんて!!しかも身体能力も獣と一緒だなんて!!変よ!!そんな奴と結婚なんて絶対にいや!!」


「リリィ!!」


「お兄様じゃ、話にならない!!お父様に言いに行ってくるわ!!」



ガタガタと音がしたので急いで影に隠れる。

すると数秒もせずに姫が出てきて、ドタドタと走っていかれた。

それを止めようと出た殿下と思わず目が合ってしまった。



「あっ、もしかして、今のを。」


「聞きました。」


「そうか。」



殿下はため息を付いて、俺を部屋の中へと案内してくれた。

殿下は暗い表情のまま、俺の前に座った。



「聞かれたのなら仕方がない。お前には1番聞かれたくなかったんだがな。」


「今のは。」


「そうだ、あれがリリィだ。何を勘違いしていたのか分からないが、あれがリリィなんだ。獣人族に対して憎悪さえもっているあれがお前が愛していると言っていた姫だ。」


「いや、しかし、隣国との交流会では!!」



そうだ、隣国との交流会の時は優しく微笑んで居たのは?

尊敬していると話をしていたのは?



「一応、あいつも王族だからな。あの時ぐらいは我慢している。まぁ、あの後凄く荒れるがな。」


「そんな。」


「事実だ。だから、お前がいくら姫を愛していると言っても婚約させなかったのだ。身分では釣り合いは取れている。しかしな、お前はこの国の防壁の要である獣人族であり、なくてはならい存在だ。俺や父上達はお前達一族に感謝している、尊敬さえしているさ。しかしあいつは駄目だ。お前の正体だって決して教えることができないぐらいだ。」



殿下は頭を抱え、ため息をつく。

先程からため息ばかりだ。

本来なら、言葉をかけなければならないのに、衝撃的な事実に頭が真っ白になっていた俺は何も言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ