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怒るエレナはとてもとても怖かった。
とても心配してくれていることは分かるのだけども、そんなに怒らなくてもと思ってしまう。
これでも、狩りに出かけていたから、敵意を持った人や獣は勘で分かるのだ。
彼にはそんな敵意は無かったから、大丈夫って思ったからこそなんだけども。
エレナがとてもとても心配するから、今度からはちゃんと鍵を閉めて、叩いて貰うようにしましょう。
あの銀狼であることを確かめてから開ければ問題ないわよね!
「ふふふ。」
「奥様?どうかしましたか?」
「いいえ、なんでもないわ。それはそうと、今日は旦那様はもうお仕事に行かれた?」
「いえ、今日は。」
エレナの言葉を聞いて驚いた。
だって、まさか。
「おはよう。」
「おっ、おはようございます。」
目の前には煌びやからお顔が。
朝食の時にはいつも居ないはずの方がいるのですが?
いつも朝早くからお仕事に行かれている方が何故、今、目の前にいるのでしょうか?
「あっ、あの、旦那様。お仕事は?」
「嗚呼、今日は休みだ。」
「休み?」
今、休みと言いましたか?
えっ、嘘。
結婚してから数ヶ月経ちましたが今の今まで1度も休みなんて聞いたこと無かったのですが。
いえ、あったかもしれませんが、それでもお城に向かわれていた旦那様が、休みと。
「えっと、では、これからまた何かご用事でも?」
そうよね。
きっと何かしらご用事があって、きっとお城に行かれるわ。
今までだってそうだったのだから。
「いや、今日は特に用事はないので、ゆっくりと家で過ごすつもりだが?」
「家で?ゆっくり?」
えっえっ?
嘘でしょう?
そんなことがあるはずがないのに!
ゆっくり家で過ごすと?
そんな、まさか!
もしかしてまた、ライバルが邪魔をしてるのかしら?
公爵家の旦那様に命令を出来るなんて相当上の方よね?
そんな、そんな方がライバルなんて。
「どうかしたか?」
「いっいえ。」
旦那様が家でゆっくりと過ごすとなると、私は今日部屋で引きこもりですね。
いつどこで旦那様に会うか分かりませんもの!
昼食はもちろん、夕食も部屋に持ってきてもらって、少しでも旦那様に会わないようにしないと。
「それで、今日は君の家での様子を是非知りたいと思ってね。」
「へっ?!私の様子ですか?!」
「そうだよ。」
私の様子なんて見てなんになるんですか!?
監視ですか?
変なことをしていないかの監視ですか!?
特に可笑しいことは一切してませんけど!
いえ、ちょっと畑仕事をしたり、皆のお仕事のお手伝いをしたりはしてますけども。
それだって、旦那様は好きにしていいって言ってくれているからで。
いや、もしかして、今回の休みは私の監視のためかしら?
クリスが何か旦那様にチクったのかしら?
畑仕事?
いえ、でも、クリスだって黙っておくように言ってたし。
勿論エレナだって言わないだろうし。
もしかして他からバレたのかしら。
いえ、でも。
「何か不都合でもあるのかい?」
「いっいえっ。でも、私の様子なんて見たって何も楽しくありませんよ。」
そう言えば旦那様は、苦笑を浮かべてこちらを見る。
わぁ、こんなに旦那様の顔をまじまじ見るのは久しぶりです。
いつも、下を向いているし、旦那様もこちらに顔を向けるとはないので。
「様子を見るなんて言ったけども、本当は君と今日過ごしたいだけなんだ。」
「へっ?」
「結婚してから数ヶ月も経つのに、私は未だに君が何をしているのか知らないからね。この前も部下たちに奥様の趣味はなんですか?や好きな物は?など聞かれたけども答えられなくてね。」
嗚呼、成程!
私達は一応、運命的な出会いをした夫婦として噂されていますものね。
これをエレナから聞いた時、お茶を吹きましたけども。
でも、そんな噂のある夫婦の旦那様に奥様のことを聞きたいと思うのも仕方がありませんが、事実は私はお飾り妻ですし、契約で結婚したもので、お互いのことなんにも知らないですものね。
まぁ、口の上手い旦那様ですし、その時には上手く交わしたことでしょうが、何度もあればぼろも出る。
だから出る前に知りたいと。
でも、それなら。
「私のことを知っておかなければならないのなら、今ここで質問いただければお答えしますよ?」
「えっ?」
「私と過ごさなくても、今質問されそうなことをここで質問してくだされば良いかと。そうすれば、旦那様が困ることはないかと思います。わざわざ旦那様の貴重なお休みを私ごときに使っていただく必要はないですから。」
そうよ!
そうよね。
今、質問してもらえばいいのよね。
出会い等は旦那様が勝手に構造したものだから、旦那様も答えられるし、困るのは私自身のことだけでしょうし。
今、ここで知れば、この後旦那様と過ごすことなど必要なくなるわ!
ふふふ、いい案だわ!
「さぁ、旦那様。一体どんなことを質問されたのですか?」
「いっいや、そのだな。」
「?」
一体どうしたのでしょうか?
旦那様、なんだか様子がおかしいような。
「奥様。」
「?何かしら?クリス。」
いつもなら何も言わず、そばで控えているクリスが珍しく喋っている。
一体どうしたのかしら?