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「それは、その。」
確かに、お祖母様からの話を聞いて、私が動かないとダメなことはよく分かって。
でも、まだこのことは旦那様に言ってはないのに。
「ミミが動かない訳はない。そんなミミを好きになったのだから。本当は動いて欲しくないけど。でも、ミミの望むとおりに動いて欲しい。俺のせいで後悔するなんてあってはならない事だから。」
「旦那様。」
「俺は強くなる。一応、これでも騎士団に所属していたからね。獣人族の能力を封印して、上り詰めたんだから、ミミの足を引っ張ることなんてないようにしないと。」
そんな、旦那様が足を引っ張るなんて。
「旦那様はぁ、ずぅぅっと自分の獣人族としての能力を成長させることをサボってきてますからねぇ。だから、そうなるですぅ。」
「エレナ、あなたどうしてここに?」
「私も奥様のお祖母様に稽古を付けてもらってるんですっ!一応、旦那様と違ってフルに修行を詰んでるから、旦那様よりはマシに動けるんですが、お祖母様、凄すぎます!着いていくのがやっとです。」
えぇ!旦那様に続いて、エレナまで!
「なんで、エレナまで!」
「そんな!奥様が行く場所にどこまでもお供するのが、侍女の役目ですっ!」
「そんな!危ない場所なのよ!?」
「そんなそんな!奥様がそんなところに行くというのに、侍女である私がついて行かないわけがないですっ!旦那様からお話を聞いて、即動きはじめましたが、なかなか難しいものですね。」
「いやいや、いい侍女だなぁ!ミミ!」
「お祖母様!」
「いい感じで、動いてるなぁ。流石は隠密行動に適している山猫族だなぁ。化けることもできるし!何より体のしなやかさがいいなぁ!急所をついたと思うが、避けられてしまう。」
はっ?
今、急所って?
「なに、お祖母様、うちの大事な侍女の急所を狙うんですか!!危ないでしょう!」
「大丈夫、模擬刀を使用してるぞ?」
「いや、そういうことじゃありません!!ていうか、模擬刀でも危ないでしょ!普通に当たり所が悪かったら大変なことになるでしょう!!」
「そうは言ってもなぁ。本気でやらなきゃ、訓練にならんぞっ。」
「そうです、奥様!本気でやっていただかなくちゃ意味がありません!私は全然大丈夫ですっ!」
うぅ、エレナ本人がそう言うなら、もう何も言えない。
また嬉々としてお祖母様と模擬戦を繰り広げだした、エレナ達にどうしたものかと頭を抱えたくなる。
お祖母様が来てから、なんだか周り皆が戦闘狂のようになってるわ。
私も動かないと行けないからって、普通の弓を使っている練習をしてれば、どこからか模擬戦をしている音があちらこちらとしている。
いつからここは訓練所になったのかしら。
「ハッハッハ!いいなぁ、ここの者たちは。いい逸材が沢山いるなぁ。」
「お祖母様、逸材といって引っこ抜きはだめですよ。」
「したいが、それは無理だなぁ。なんたって、先にお前がいるからなぁ。」
「私、ですか?」
「皆、お前のために頑張っている。どんなにこえをかけたところで断られるに決まってるからなぁ。本当に惜しいなぁ。」
「もうっ、お祖母様ったら。」
「でもなぁ、連れて行けるのはせいぜい5人までだなぁ。多くて5人。ベストは3人だが、何人もが同行することを願っている。どうしたものかなぁ。」
ん、んんん?
今、何人も同行を願っているっていいましたか?
そんな、馬鹿な。
「いやー、折角だしトーナメントみたいにしてやるかぁ?面白そうだし。」
「いや、何、うちの屋敷で楽しもうとしてるんですか!?やりませんよ!そんなトーナメント!!」
「えー、絶対面白いのにぃー。」
「やりませんったらやりません!!!」
そう言ったはずなのに。
これは一体、どういうこと?
「さぁ!はじまりました!奥様の同行者を選ぶためのトーナメント戦!実況はこの私!スィートエンジェルことノエルママですっ!そして、相方の解説、私のハニー!ジウさんですっ!」
「何故、私はここにいるでしょうか?」
「それはねぇ、前回、誘拐事件で奥様と一緒に行動した組はこのトーナメント戦に参加不可になってしまったので、仕方が無いので、ここで解説件実況をしようって事になりました!ちなみに不参加組は相当不満を言ってましたが、無視されました。一緒に行けなかった恨みはとっても根深いみたいね?」




