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「それで、お爺様、お祖母様。これからどうするつもり?」
「んー、そうじゃなぁ。お前さんの旦那様を説得せな、いかんからなぁ。暫くここにいようかなぁ。」
「それは構いませんが、俺はミミを危険な所に連れ出すなんて、到底納得などできません。」
「旦那様。」
旦那様がそう言ってくださるのはとても嬉しいですが、お祖母様の話を聞いていて、私が適任であることはよく理解してます。
多分、これが最善の作戦なのだと。
「おうおう。分かっとる分かっとる。まだ、時間はあるから、ゆっくりと話し合おじゃないかぁ。」
にやりと笑うお祖母様に、嫌な予感しかしません。
この表情、覚えがあります。
あの幼い時に急に旅に出るぞと連れ出されたあの日と同じ表情です。
一体、何を考えているのやら。
「とりあえず、世話になるからのぅ。」
「お祖母様!」
「じゃあ、この畑を少し改良してもよいかのぅ?」
「それは構いませんがって、お爺様!?お祖母様を止めて!」
「いや、ミミ。よーく分かっとるだろう?うちの奥さんは頑固もんじゃ。こう言ったら聞きゃせん。」
「うぅ。」
「まぁまぁ。ミミ、お前のお祖母様は、家族をとても大事にする人じゃ。ちゃーんと考えておるよ。それをちゃんとお前の旦那様に理解してもらえるようにとしてるだけじゃ。」
「お爺様。」
あの、お爺様はそう言ってましたが、あの、あの。
「本当に、そうなのかしら?」
目の前で、何故か戦闘訓練がされてるのだけど?
何故、旦那様とお祖母様が模擬訓練されてるの?
「はははっ!流石は銀狼じゃな!動きが早いし、動きがスマートじゃなぁ。力は金狼の方が強いが。」
「ぐっ。金狼とは力の差があります。でも、負けないように力をつけています!」
「そうかそうか。しかし、何やら金狼にトラウマか、いや恨みでもあるか?金狼と言えば、力んでしまって、動きが鈍くなっとる。お前さんの1番のいい所が潰れてしまっとるぞっ!ホレ。」
「ぐうぅ!!!」
お祖母様が旦那様の一瞬の隙を見て、間合いを詰めて、旦那様を押し倒して、動きを封じ込めてしまった。
なんという早業。
「お祖母様ったら、以前よりもまた一段と早くなった?」
「そうじゃのぅ。お前さんと旅をしとった時は、平和ボケしとったから、暫く怠けておったが、今回の旅で少しは感を戻らせてきたが、全盛期よりはまだまだじゃなあ。」
「お祖母様の全盛期って。」
いや、お祖母様の全盛期は本当に凄かった凄かったとあの時出会った人皆が言ってましたものね。
でも、獣人族の旦那様に押し勝つって、お祖母様。
「本当に、すごい方だ。」
「旦那様。」
「よく相手を見ている。なんて動体視力だ。それに、すごいスピードで次の策略を考えて、動いている。」
お祖母様って、本当に一体。
改めて思うけど、本当に普通の人なのかしら?
「ははっ、なかなかいい動きをしとるがまだまだじゃのう。これじゃあ、難しいぞ。旦那様。」
「ぐっ。」
「えっ?難しいって?一体どういうことですか?」
「いや、それが。そのだな。」
「んー、ミミ、お前さんを連れていくって言うなら、旦那様も一緒に行くって言うんじゃ。だから、着いてくるならそれなりの力がいるからの、ワシが直々に力試ししてた訳じゃ。」
「えっ!?」
旦那様も行くって!!
そんな!
「何を考えてるのですか!?旦那様はこの国の大事な公爵家の主人ですよ!そんな方が危ない地に行くなんて、許されるはずはありません!」
「それなら、ミミ!君はその公爵家の夫人だぞ!そんな夫人が行く場所ではない!!」
「それは。私は、公爵家の奥様ってだけです。元々は貧乏辺境地のしがない貴族娘です。もし、私が居なくなっても大丈夫です。でも、旦那様はたった1人のご子息様ですよ!そんな危ない所に行くなんて!」
「バカ!ミミが居なくなっても大丈夫なわけないだろう!!!」
「っ!!」
旦那様に怒鳴られたのは初めてです。
ビックリして目を閉じてしまっていると、抱きしめられました。
とてもキツく抱きしめられました。
「ミミが、君がいないなんて考えられない。俺は君を失ったら生きていけない。」
「旦那様。」
腕が震えて。
「でも、これからもし、昔のような大戦が起きたら、それこそ君を危ないめに合わせてしまうことはよく分かっている。どうするのが1番いいのかも。でも、ただ君を黙って見送るなんてことはしたくない!一緒に行って、君を守りたい!」
旦那様、そんなことを考えてくださってたなんて。
「ミミ、君が、あの話を聞いて無視することができないことはよく分かっている。だから、きっと俺がどれだけ止めようとしても無理だろう?」




