表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/205

20

嗚呼、やってしまった。

本当に狼族の耳の良さを忘れていた。

旦那様は顔面蒼白にして私に詰め寄ってくるが、そのことはどうでもいいのだが。

奥様の秘密を奥様の許可なく話してしまうとは。

いや、奥様は別に秘密にはしていなかった。

さらりと私達にも話してくれていたし、隠すつもりもなかったようだった。

だから、たとえ、私がこうやって話していることを知っても奥様は気にもしないだろう。

この数ヶ月で、奥様の人柄はよく分かっている。

しかし、何故、急に旦那様はこんなことを言うのだろうか。

昨日だって一切会話をせずに居たくせに。

少しは奥様に興味をもったことは分かっていたが、こんな風に言うまでになることはここ数日なにもなかったはずだが。

いや、ここ数日は旦那様は気持ち悪いぐらい奥様をチラ見していたな。

それをエレナが心底気持ち悪いものを見るように見ていた。

いや、エレナだけじゃない。

メイド達は、もちろん、他のもの結構な人数が見ていたな。

エレナに至っては殴り掛かる勢いも、あった。



「奥様が減ります!!」


とかなんとか言って憤怒していた。

当の奥様は、そんな旦那様に気づかずだが。

しかし、でも、奥様と会話らしい会話をしていないのに、何故奥様が旦那様を思ってなどの妄言を?

元々妄想力逞しい旦那様ではありましたが、それは一応想い人である姫様に対してだけだったはずが、なぜ奥様にまで被害が?

怪しげに見るが旦那様は先程の発言をまだ何か言っている。



「彼女に想い人が、そんな。」


「何故、そんなに焦っているのですか?旦那様。別に構いませんでしょう?奥様に想い人が居ても。」


「そんなっ!焦らずには!」


「何故です?旦那様が言ったじゃないですか?契約結婚の条件さえ守ってくれれば恋人をつくろうとも構わないと。」


「!!」



バレたものは仕方が無いので、開き直って、旦那様をつつくと旦那様は契約時のことを忘れていたのか、そう言えば固まってしまった。

本当に忘れていたのか。

本当に恋愛に関してだけはポンコツの旦那様。

他のことに対しては優秀なのだが。



「寧ろ奥様、慎ましい方ですよ?外にも行かず、ただ、想い人の幸せを願い日々公爵夫人として、仕事もなさってます。」



そうです。

奥様は自由にしてもいいと言われているのにちゃんと公爵夫人として仕事をして館を切り盛りしています。

いえ、屋敷の者の仕事を一緒にせずともよいのですが!

しかし、屋敷の者と会話をし、仕事を理解し、よりよい仕事環境になるよう考え、時には意見してくださっています。

奥様にその意識はないようですが。

「ここに花を飾れば」や「あの子はこっちの仕事の方が上手にできるわ」や。



「想い人、彼女に。」


「聞いてますか?旦那様。」



ブツブツと呟く旦那様を現実に戻しましょう。

そんなにショックを受けるとは。

しかし、旦那様はまず出会ってはじめに奥様に対して想い人の思いを熱く語り、その後最悪な契約を結構な悪どい方法でゴリ押しで逃げ道を与えず進めたのですから。

それを笑顔で受け止めた奥様に想い人ぐらい居てもおかしくないですし、むしろそれだけで済んでいるのがおかしいぐらいです。

しかも、奥様の慎ましくも美しい思い出話は旦那様の妄想妄言話よりも心を打つものがあり、しかもしかも、奥様の想い人に対する想いは旦那様よりのそれよりも美しく悲しいものです。

なのに。



「旦那様が何か言う権利は有りませんからね。」


「エレナ!?」


「旦那様がバタバタとされていると他のもの達から聞きまして、最近の旦那様の様子からもしや奥様になにかしら関係があるものではと思いまして。奥様の朝の支度は泣く泣く他のものにお願いし、コチラで聞いていれば旦那様の訳の分からぬ妄言が聞こえましたので部屋の方に入らせていただきました。そして、旦那様とクリスさんも気づいてはいないようでしたが、一応ノックはしてましたからね!」



私が何か言う前に旦那様に対して怒り心頭なエレナがいた。

いや、ノックしていたことは気づいたが、きっといつものもの達だと思って放っておいたのだが。

まさかのエレナ。

エレナはこの数ヶ月で奥様に対して心底お慕いしている筆頭。

奥様の幸せが私の幸せと真顔で言うほど。

そんなエレナに今の旦那様の妄言を聞かれるとは。



「本当に旦那様は妄想力だけ!逞しいですね!」



笑顔だが、完全に汚物を見る目になっている。

自分の主人だと言うのに。

こうなることが予想出来たから、エレナにバレないようにしようと思っていたのだが。

エレナの嗅覚を侮っていた。

奥様に対する問題事に関しては本当に人一倍鋭い。



「妄想力とはなんだ!」


「妄想力でしょう!じゃなければ、奥様が旦那様を思うなどありえませんし!」


「だからっ!彼女が言ったのだ!ココ最近、帰ってくるのは誰かが俺の想い人との間に入ってきて邪魔をするからなのではと!そして、そんな辛い思いをしているというのに嫌いな自分とご飯を食べさせるのは申し訳ないと!!」


「なんですか!それ!妄言もいい所ですね!!確かに奥様は優しいからそういうことを言うかもしれませんが!何故、そんなことを言っているとあなたがしっているのですか!?奥様のことなのにっ!!!妄言じゃなければおかしいでしょう!!」


「それは、俺が彼女の部屋に行って話したからだって!!」


「「はっ?!」」



旦那様、今なんて?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ