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私、ミシェル・スーティン。
今日から、公爵家に嫁入りします。
っといっても、旦那様は今もいないんですけどね!
ふと数日前を思い出します。
あの日、契約を結んだ日、その日に私の両親達に結婚することを伝えると、2人はとても驚きました。
まぁ、そうでしょう。
だって今まで恋愛のれの字も見えなかった娘が急に結婚だなんて。
しかも相手は公爵様。
しかもしかも超美形。
相手の娘は超平凡。
不細工だとは思いたくないけど、普通だと思いたいけど、公爵様と比べれば不細工なのかもしれない。
そんな釣り合いとれない2人が急に結婚だなんて。
なにか脅されているのではないかと心配していた。
私の両親は、働かざる者食うべからずがもっとうで娘もガンガン畑仕事をさせるような両親だったが普通に愛情をもって育ててくれた。
そんな娘が、脅されている、もしくは騙されているんじゃないかと思ってしまうのは仕方がない。
でも、そこは頭が回る公爵様。
口からでまかせとは思えないほど巧みに私たちのトキメキマックスな出会いを語り、両親を説得してしまった。
デビュタントで一目惚れし、惹かれあい、でも名も告げずに離れてしまった私をようやく見つけたのだと。
いや、私のデビュタントに公爵様いたんですか?
私、全然覚えてないんですけど。
まぁ、いいですけど。
あまりにも真剣で一瞬私もそうだったけって思いましたよ。
まぁ、そんなこんなで両親も納得し、公爵様の両親にも同じような話をし。
いやー、本当にあの時は滅茶苦茶緊張しました。
挨拶に行くときは公爵様が用意した超高級ドレスに宝石に・・・。
嗚呼、もうドレスに着られてるってこう言うんでしょうね。
そう思うしかなかったけど、そんな私を見て、ご両親はなんて可愛い子が嫁に来てくれるんだって喜んでくださいました。
お世辞ですね。ありがとうございます。
まぁ、そんなこんなでお互いの両親に挨拶もして、結婚の準備となったのですが、私の希望もあってかとてもこじんまりと身内だけを呼んでの結婚式となりました。
まぁ盛大にするものでもありませんので。
だって、私はお飾り妻なのですから。
本来なら公爵家の結婚なのだから盛大にしなくちゃとお義母様は言ってましたが、私が我が儘言ったのです!と言って通してもらいました。
そんなこんなで契約から数ヶ月で結婚式となり、今日、公爵家へ嫁へと参ったのですが・・・。
「私は仕事で、しばらく遠征なので。」
っと結婚式には言われましてね。
旦那様はこの国の騎士様だそうで。
国境に遠征にいかれるそうなので、私の嫁入りの日にいらっしゃらないという。
普通の新婚さんではありえないことですが、私的には仕事万歳なのです。
正直旦那様がお隣でいるだけですんごく緊張するんです。
結婚式も苦行かと思いましたよ。
本来なら結婚式ってお嫁さんが主役なはずなのに、確実にとなりが美しすぎて、私背景でしたもん。
まぁ、仕方がないのですけどねー。
なので、今日、旦那様がいないのは幸せです!
ありがとう、仕事!
ありがとう、長期遠征!
そしていざゆかん、私の新しい住まい!
そう意気込んだのですが・・・。
「うわぁ・・・。」
館の大きさが異常・・・。
恐ろしいぐらいピカピカ。
うわー、これどれぐらい掛かってるんだろう・・・。
考えるのも恐ろしい。
本当に立派なお屋敷に思わず後ずさりたくなる。
そんな私に声が掛かる。
「奥様?どうかされましたか?」
「エレナさん・・・。」
「もう、奥様、さん付けではなくエレナとお呼びくださいと先ほどからお願いしてますのに。」
「いや、でも・・・。」
「奥様はこれから、お仕えする方ですわ。堂々としていただかないと。」
「すみません・・・。」
「嗚呼、違います。怒っているわけではないのです。奥様。嗚呼、もう旦那様め!こんな愛らしい奥様を残して遠征だなんて!ありえないわ!」
プリプリと可愛らしく怒っているのは数日前から私の側付きになったエレナさん。
可愛らしい方で、何故かずっと私に対してとても丁寧に、しかも優しくしてくれている。
嫁入りの日に旦那様がいないことを私以上に憤怒している人だ。
「まぁ、いいですわ。早く、中に入りましょう?奥様のお体が冷えてしまってはいけませんから。」
「えっ?これぐらい大丈夫ですよ?」
「いいえいいえ。いけません。奥様は大切なお方。さっさ、早く入りましょう。それに皆、奥様が来てくださるのを首を長くして待っているでしょう!」
ぐいぐいと押され、お屋敷のドアが開かれる。
そして目に入るのはずらっと並ぶ執事、メイドさん達。
うわ、何人いるでしょうか・・・?
うちでは3人しかいないのですが。
流石は公爵家ですね。
目の前に広がる光景に驚いていると。
「「「「お帰りなさいませ、奥様。」」」」
「ふぇ?」
奥様・・・?
奥様?
あ、私か!
って、もしかして皆さん、私のお出迎えの為に?
えっえっ!?
「エレナ。遅いぞ。奥様は長旅でお疲れのはずなのに。」
「すみません。クリスさん。」
「えっ?えっ?いえ、私は疲れてなんか。」
お出迎えに驚いているとこれまた美形な男性が前に出てきて、エレナさんを叱った。
それにエレナさんは素直に頭を下げている。
「お久しぶりです。奥様。長旅、大変お疲れでしょう。サロンにお茶の用意をしておりますのでどうぞ、こちらに。」
「あっ。」
そういう男性、思い出した。
旦那様が最初来たときに後ろに控えていた方だ。
確か・・・旦那様の執事さん。
そして、ちゃんと契約結婚のことも、お飾り妻なことも知っている方ですね!
そんな男性、クリスさんに案内されて入った部屋・・・その部屋も豪華で。
「ふわぁ。」
変な声が出てしまうほどです。
あれ?テーブルには可愛らしいお菓子が・・・。
「さぁ、奥様。お座りください。」
「奥様。奥様はハーブティーがお好きと聞いていましたので、今回はカモミールをご用意しております。」
えっ?えっ?えっと・・・あの、にっこり笑顔のメイドさんたちがせっせと用意をしてくれているのですが。
いや、えっ、あのお茶の用意なんて自分で出来ますよ!?




