195
「よろしくね、セッカ。」
「行き道中に少しイタズラをしてもいいですか?」
「ダメ!セッカのイタズラはシャレにならないから!!」
「妹様からは良いと言われたのですが。」
「あの子に言うことを真に受けちゃだめ!!時折、怖いこと言うんだから!!」
「でも。」
「もう、セッカはエレナとひと暴れしてるんだからもうしないの!!」
「あれはひと暴れの中に入りませんよ。」
「あれだけしておいて!?」
今回の事件の犯人さん達を運ぶために実家からセッカを呼んだのだけど、すぐさまエレナの首根っこを掴んだかと思うと飛び去り、森の方まで行って、イタズラと言う名のお仕置をしていたのはついさっきのことよ?
本当にびっくりしたんだから!
早業すぎて。
ボロボロのエレナを連れて帰ってきた時は本当にびっくりしすぎて暫く何も言えなかったんだから!!
「あれでは、まだまだです。本当ならもう少ししてもいいかなーって思ってました。約束を破られた訳ですし。」
「約束って?」
「お嬢様を泣かせないという、約束です。」
「そんな約束をしていたの!?」
「えぇ、お嬢様の侍女となる者ですからね。それぐらいは当たり前です。それができないのなら意味が無いですから。」
意味がないって。
相変わらずとてつもない愛を感じる。
嬉しいけど、他の人まで巻き込むのはやめてもらいたいなぁ。
「いいえ、いいえ!奥様!!セッカ様からのお仕置は必要なことです。私が至らないゆえにですから。」
「エレナ!もう大丈夫なの?」
「体だけは丈夫なので。」
「そっそう。」
まだ所々に傷があるようなのだけど、ちゃんと治療してもらって。
「あれ、セッカのことを様って今まで呼んでたかしら?」
「いえ、今までの私はセッカ様に負けない自信がありましたが、今回の件で、私はまだまだだということが分かりました。なので、先輩であり、奥様のことをよく知ってらっしゃるセッカ様には様が必要だと気付いたのです。」
えぇーっと、そっそうなのね。
最近仲良くなったなって思ったらまさかの様付けまでになるなんて。
嗚呼、セッカも満更じゃなさそうな表情。
2人がいいなら、それでいいのかしら?
「それでこれで全員ですか?」
「えぇ、そうよ。全員で24人。リーダー的な人も居ない寄せ集めだと言っていたわ。」
「なるほどなるほど。本当に末端中の末端な訳ですね。トカゲの尻尾切りには丁度いい人材を集めたと。」
「ん、まぁ、そうね。でも、こんな人たちが多く居るそうよ。この人達はチラシを見て、こうやって1つのチームを組まされてるらしいの。」
「チラシ?ですか。」
話を聞けば、この人達は本当につい最近集まって知り合った人達らしく、職種も経歴も年齢もバラバラ。
ただ唯一一緒だったのがお金に困っていたこと。
仕事をしていてもなかなか苦しい現状に、たまたま見つけた酒場のチラシに結構高額な依頼金額を見て応募したらしい。
実際その場所にいけば、まともな説明もほとんどなく、どうもきな臭い仕事だと思うが、もう乗りかかった船、降りる事も出来ずに今の状態までなってしまったとか。
「一応、人質となる人を傷つける気はなかったみたい。でも、それっぽい人を連れていかないとお金も貰えないし、何より自分の身が危ないらからって。」
「はぁ。それほど、あの国は腐ってるんですね。」
「セッカ?」
「以前から腐った国だと思ってはいましたが、まさかまさかそれ以上に腐るとは。」
「セッカ、何か知ってるの?」
「嗚呼、お嬢様には少しお話しましたよね?私が元々居たのは山奥の集落でそこは暗殺業をこなす一族だと。」
「えぇ、聞いたわ。そのお仕事中に怪我をおって、倒れていたのよね?それを私が見つけて看病して。」
「えぇ、あの時の御恩は一緒忘れません。そして、あの時仕事と言いましたが実は違うんです。」
「えっ?」
「お嬢様を絶対に巻き込みたくなくて嘘をつきました。お嬢様は完治した私に、その集落に帰りなさいっと言ってくださいましたが、私は帰りませんでした。御恩をお返ししたかったというのは勿論本音です。でも、帰りたくとも帰れないという事実があったのです。」
「帰れない?」
「はい、私の故郷はあの腐っ垂れた国の兵に追われ、火をはなたれました。そして散り散りに皆逃げ、生きているのかも分かりません。今の今まで同じ一族の者たちに会うことも無くなので、私以外はもう。」
「そんな!!」
そんな事になっていたなんて!
私、一切知らなかった。
「嗚呼、お嬢様。悲しまないでください。私は今のこの状態がとても幸せです。お嬢様が、私に新しい家族を与えくれましたから。」




