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「エレナ!助けにきたよ!」
目の前の光景が信じられない。
今、私は夢を見ているのかしら?
だって、私の神とも言える奥様が、こんな地にいて、手を伸ばしていらっしゃる。
そんなことがあるはず、ないのに。
「おっ、奥様。」
「なぁに?エレナ?」
「本当に、奥様?夢じゃない?」
「もう、酷いっ!夢じゃないわ!エレナが、とっても危ない事をして、誘拐されたと聞いて居てもたってもいられなくなってここにきたのよ!」
「えっ?」
そんな、私を、助けに?
そんな、そんな、そんな!!
「そんな危ないことを!!」
「っっっ!!何が!危ないことよ!!それはこっちのセリフよ!!誘拐なんてされて!!どんだけ、心配したか!!」
奥様に初めて怒鳴られた。
怒られるのも初めて。
泣きそうな目をした奥様に抱きしめられて、今、ここに居る奥様は夢じゃないないことに気づいた。
「奥様。」
「バカ!馬鹿馬鹿馬鹿!!!こんなに危ないことして!!」
「そうだよ、エレナさんは、本当に考え無しなんだから。」
「ビィ。なんであんたがここに。」
確か、ビィは情報収集の為に今、この国に居ないはずなのに。
「ビィが見ていてくれたの。誘拐されるエレナを。それで急いで私に知られせくれたの。」
「ビィが?」
「丁度、任務が終わってようやく帰るってなってた時に見知った後ろ姿が見えて、慌てて追いかけたら、奥様じゃない誰かだし、そんな芸当できるのはエレナさんだろうなって思ってね。」
「だからって、奥様に知らせなくても。」
「んー?そんなこと言っていいのかな?言っとくけど、滅茶苦茶怒ってるよ、姉さん。」
「えっ?」
チラッと奥様を見れば、無表情。
いっいつも笑顔の素敵な奥様が無表情。
これは、相当怒ってらっしゃる?
「エレナは、私が信じられないの?」
「そんなことは有り得ません!!私は奥様を心の中から信頼して!」
「じゃあ、なんでこのことを黙っていたの。いいえ、話は聞いたわ。エレナのご実家からの任務だったってことは。だから、私に言えないことも分かっているの。でも、でもね。」
「そんな、そんな!!例え、我が家を裏切ってでも、私は奥様にお着き従います!ただ、今回、その黙っていたのは、その、こんなことを言えば、奥様にご心配をおかけすると思ったからです。」
「心配って。そりゃあ、するよ!だって大事な大事な家族よ!心配しないわけが無いわ!!」
「奥様。私を、家族と。」
「そうよ!あの御屋敷の皆はぜーーいん、私にとってとても大事な家族よ!欠けてはならない大事な大事な家族なの!」
嗚呼、そうでした。
そうでしたね、奥様。
奥様は1人1人をとても大事にされている方。
ご実家でも、家の方たちだけではなく、領民の方達もとても大事にされている方だもの。
本当に。
「すみません、奥様。私、奥様をお守りしたい気持ちだけで、勝手に動いてしまい。奥様のお気持ちを考え、配慮するにまで至っておりませんでした。侍女失格です。」
「もう、エレナったら。」
「本当にすみません。」
私はなんて考えの足りない侍女なんだ。
奥様のことをお考えせず、勝手に動いて。
「エレナ!」
自分の考えの無さに落ち込んでいると奥様に顔を上げられ、奥様の顔がよく見えるようになった。
先程まで怒っていた様子が今はない。
「もう、私、怒ってないわ。エレナ、ただ、ひとつ約束して。これからはちゃんと自分のことを考えて、大事にして。エレナは本当に大事な人なのよ。もし、それでも大事にできないっていうなら、私のことを考えて。エレナが大怪我したら、私は泣いて泣いて泣き続けるからね。そうなるからね。」
「奥様に泣いて欲しくはありません。だから、ちゃんと約束守ります。」
「ふふ、良かった。旦那様の言う通りね。」
「えっ?旦那様?」
一体、あの旦那様が何を言ったのか。
要らないことを言っていたのなら、許しませんよ。
「旦那様がね、エレナは自分を大事にしろって言っても聞きやしないだろうから、私を人質に取りなさいって。そう言ったの。それが1番効き目があるからって。」
「えっ。」
ん?ん?んん??
旦那様が?
そんな入れ知恵を奥様に?
あっ、あー、あーーー、なーるほど。
「これが罰だと言いたい訳ですね。」
ええ、ええ、これは私に対する罰ですか。
今、私を攫ったもの達の回収のためにここには居ない旦那様が、頭の中でざまぁみろと笑っている姿が思い浮かびますよ。
「えぇ、えぇ、今回は私が悪いから甘んじて受けますよ。」
でも、覚えてきなさい。
何かあれば倍返しにしてやりますからね!!




