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ようやく師匠やビィ達が帰ってくると、陛下たちから聞き、ミミを安心させるためにもと早く帰宅しようとしたら、まさかの情報が知らされることになるとは。
「師匠、今、なんと?」
「それがね、その、旦那様も知らないとは思わなかったわ。はぁ、あの子ったら、個別に受けてたのね。」
「依頼って、まさか、その為の。」
「そうね、多分、そのためのね。確かにあの子が適任よね。誰よりも奥様の側にいて、誰よりも奥様に忠誠を誓ってるもの。本当に、腹が立つぐらいだな。」
ようやく欲しかった情報を手に入れたと聞き、殿下の部屋に迎えば途中、見慣れた後ろ姿が見えた。
しかし、その見慣れた後ろ姿は1人で、何故と思えば、聞けば、うちの馬鹿侍女の危険な仕事内容とその結果の話だった。
何故、そうなっているのか。
頭を抱えたくなったが、隣国にはアイツの本家がいるし、繋がりも続いているのは知っていた。
早々簡単に切れるものでもない。
だから、仕事を任されたことは聞いてはいたが、内容までは聞いていない。
アイツが言えないと言っていたが、それは言わないの間違いだというのが今、よく分かった。
エレナは何よりもうちの妻、ミミのことを敬愛していた。
エレナも幼い時から知っていて、それこそ少し歳の離れた妹のように過ごした時もある。
だからこそ、アイツが何を考えて、何を思って、この行動をしたのかも、分かる。
分かるが、こんな状況になれば、誰だって心配するだろう。
「アイツは。」
「一応、クリスも一緒に着いているから、エレナ1人という訳では無い。」
「クリスも噛んでたか。はぁ。」
多分、これはエルビスからだな。
まだ、こっちに残ってる理由がこれか。
父上は知っているのだろか。
いや、全部は知らないだろうな。
父上が、うちで預かっている者を危険に晒すようなことはしないだろう。
ということは、エルビス、いや、あの一族からだな。
本当に、良くも悪くもあの一族は主と定めた者の為ならば、身内さえも犠牲にする。
エルビスも、どうせ結果父上の為になると思って動いてるのだろうな。
つまり。
「アイツらは全員、自分の主の為になると思って行動したということか。」
「まぁ、そういう事ねぇ。本当にあの一族って猫の癖に、犬のような所があるのよね。忠犬って感じ。性分だとしたら仕方がないけど、それで、自分の主を、泣かせていたら意味が無いじゃない。」
「そうだな。」
これをミミが知ったら泣くだろな。
お前が泣かしてどうする。
いつも、俺がミミを困らせたと怒り狂うお前が。
本当に、ミミを泣かして。
そう、思っていたが。
まさかの、まさかだ。
ミミが、ここまで決意するなんて。
「流石は奥様って感じよね。うちのパパを落とした奥様だものね。」
黙っていてくれ師匠。
まさか自分が助けに行くなんて。
「駄目だっ。」
「旦那様!」
分かっている。
ミミがもう決心しているのは。
それを諦めさせることなんて出来ないことも。
だから。
「1人でなんて行かせられない、俺も一緒に行く。」
「えっ?」
「結果的に、うちの者が攫われたんだ。黙ってなんていられないだろう?」
「旦那様!」
1人でなんか行かせることは出来ない。
でも、これほど決意しているミミに屋敷で待っていろなんて言えるわけが無い。
だから、一緒に行く。
「元々、ビィ達が帰ってきたら、その情報から動くつもりだった。」
「確かにそう聞いてるわね。でも、それに奥様を入れるのなんてどうするつもり?」
「いや、それに入れる必要はないだろ。個別に動くつもりだ。」
「個別に?」
「嗚呼、家の者が誘拐されたから、それを連れ戻すために動く。当たり前の事だろう?」
「なるほど。そりゃあそうね。今、うちの奥さんがその誘拐している場を見て、そのまんまついて行っているわ。人数とその強さから私達だけで動くのはよくないと思って動けてなかったけども。うちの旦那様がそういうのなら動けるわ。」
「嗚呼、さっさと連れ戻そう。近くにクリスもいるだろうし。後数人連れていこう。大人数だと、あっちにも、こっちにもバレると面倒だから、少数で動く。」
「そうね。国境を超える前に捕まえたいものね。そうなると少数で行きたいし。アチラさんは一応旅の行商人っていう風を装っているから、それほどスピードはないのよ。まだ国境を越えるには数日掛かるはずよ。」
「そうか、なら、こちらは1番早いので行けばいいな。」
「1番、早い?」
ミミが不思議そうにしているが、ミミなら大丈夫だ。
1番早いのは、アレだな。
となると、それにあったもの達。




