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「ミミ!!」


「だ、んな、さま。エレナが、エレナが。」


「落ち着け、ミミ。」



旦那様に、抱きしめられ、落ち着かないとと思うのだけども、次から次へと涙がこぼれる。

何故、エレナが誘拐されないといけないの?

何故、エレナ程の実力者が?



「大丈夫、大丈夫だ。エレナは大丈夫。」


「何故!?何故そういうのです!?だって、エレナは確かに誘拐されて!!」


「ワザとだから。」


「えっ!?」


「ワザとなんだよ。これは。」


「はっ?えっと、それってどういうことですか?」


「いや、俺も今回、こうなってから知ったんだが。」



聞けば、これも作戦のうちだとか。

今まで、エレナが忙しそうに出かけていた理由。

それが、まさかの。



「私の身代わり、ですか?」


「嗚呼、エレナには能力の1つに、化けることができるというのがあるんだ。」



エレナの猫族の1部には特殊な能力があって、狐族や狸族と同じように化ける能力があるそうで、その程度はマチマチだけどもエレナはそれはそっくり化ける能力を持っているとか。



「そんな、エレナは私に化けて?」


「嗚呼、エレナの化ける能力はその人をよく知らないと難しいという条件もあるし、化けれるのは外見だけで、声や瞳の色は変えることができないが、今回はそれで十分だったから、今回お役目が来たんだ。」


「お役目って。」


「エレナの一族の本家は、レオルド国の影として仕えているんだ。エレナはその分家の娘で、繋がりがある。今回、叔父から通して依頼されたんだろう。勿論、なにかしているのは俺も知っていたが、一族からの依頼だから、それほど詳しく聞くことはできなかったんだ。今回、こんなことになってようやく知ることが出来た。」


「そんな、でも、なんで!?」


「ミミ、君が狙われるかも知れないというのは、以前、知っただろう?だから、今回、エレナがあえて精力的に動いて、目につくようにしたんだ。」



全ては情報の為に。

今回、狙われるものが分かっている、それを使わない手はないと両国は思い、囮作戦を決行した。

ただ、狙われているのは1国の公爵家夫人。

そんな方が攫われたとなれば、大事となる。

何より、その公爵夫人の夫、つまり旦那様が怒り狂うのが目に見えている両国は、別の者を使うことにした。

それがエレナ。

獣人族であり、隣国で侍女として働き、ふるさとはまた隣国であり、しかも戦闘能力もあるし、なにより化ける能力のある猫族。

とてもふさわしい人材。

そう思った隣国の本家の猫族はすぐに連絡をとり、命令した。

平和の為には必要なのだと。



「そんな!そんな!!エレナがそんな囮になるなんて!!それも、私が狙われているんでしょう!?なら、私が!!」


「ダメだっ!ミミが攫われたなんてことになったら、俺は正気ではいられなくなる!!いや、この屋敷の者全てが、狂い、それこそ戦争をこちらから振りかけるだろう。そして罪なきものさえ殺すだろうな。」


「そんな。」


「なにより、エレナが望んでしたことなんだ。これは。」


「えっ。」


「アイツは何よりも、ミミ、君に危険が及ぶことを、それこそ自分が死ぬことよりも辛く、何よりも耐え難い事だと思っている。今回のことだって、本当ならば、君にバレずに居たかっただろう。君がこうやって傷つく事が分かっているから。」


「だから、私には内緒で?そんな、エレナの馬鹿っ!!」


「ミミ。」


「私を守りたいからって、自分を囮なんてして!!そんなの許せません!!絶対に!!帰ってきたら、説教です!」


「帰ってきたらって。」



そうです、帰ってきたら、ながーいながーいっお説教です。

うちの弟達も私のお説教はとってもいやがるんですからね!

嫌がってもやめません!

自分を大事にしないエレナが悪いんですっ!

絶対に許せません!



「旦那様、ごめんなさい。私、エレナを助けに行きます。」


「助けにって!駄目だっ、ミミ、危ない!」


「いいえ、旦那様にどんなに止められようともやめません。絶対に!」


「ミミ。」


「例え、誰が止めようとも、絶対に譲れません。私はエレナを助けに行きます、絶対にっ!」



何故、お祖母様がこのネックレスをくれたのかよーくよーーーくわかりました。

きっと、こうなるって分かっていたんですね。

だから、今、これがここにあるんですね。



「ルシアナ。」



出す機会なんてないと思ってた。

できれば使いたくないなんて思ってた。

でも、やっぱり、安心するのよね。

久しぶりなのに、本当に手に馴染む。

弓もしっかりとしてる。



「ミミ、それは。」


「私の力で、エレナを絶対に助けに行きます。」

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