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「あんなに美味しいご飯なのにね。知っての通り私は貧乏貴族だから、あんなに美味しいご飯食べたことないの。でもね、貧乏貴族の私でも、分かるのよ?どんなに美味しいものでも嫌いな人と食べてたら美味しくなくなっちゃうの。」


「わぅ?」


「どんな質素なご飯だって、大好きな人達と笑いながら話しながら食べるととっても美味しくなるの。」



いつだって、家族みんながそろって食べてた。

今日あったことを話して、笑って。

そう言えば、公爵家に来てからそんな時間はないわ。

いえ、1人の時には、近くにエレナ達が居てくれて話しをするけど、一緒には食べないし。

なんだか、寂しくなるわ。



「わふっ!!」


「あら、励ましてくれるの?大丈夫よ。私は覚悟をしてここに来たのだから。でも、みんな優しくて、その覚悟も要らないぐらいだったのよね。」


「わぅっ。」


「私はお飾り妻だって思ってたから、放置されるものだと思ったのだけど、エレナを初め、皆が優しくしてくれる。なんて幸せなんだろうと思えるわ。そうそう、今日はね、リーニャ達と一緒にお洗濯をさせてもらったし、スベルが庭に新しい花を植えるからって一緒に植えさせてもらったの。本当にみんな優しくて。ふふふ、本当に私は幸運だわ。」



旦那様に契約を持ちかけられて本当に良かったわ。

旦那様ならしたら嫌でしかないものかもしれないけど。

そう言えば、旦那様。



「想い人様にはお会いしているのかしら?」


「わぅっ!?」


「ん?旦那様の想い人はお姫様だって聞いたのだけど。お傍で守ってらっしゃるのでしょう?だから、毎日あれだけ遅くまでお仕事をしてらっしゃるのに、最近、帰ってくるのが早いのよね。あんなに真剣に思っていたのに、どうしたのかしら?誰かに邪魔でもされてるの?もし、そうならどうにかならないのかしら。」



お姫様って、本当に色んな人から慕われていそうだし。

旦那様はかっこいいし、公爵様だし、他の慕ってる方からしたらとっても邪魔な存在なのかもしれません。

それで、他の誰かが、旦那様を邪魔して、お姫様と合わせないようにしてたりしたら。

だから、最近私と一緒にご飯を食べているかしら。

お城でいると辛いから、屋敷に戻ってきて。



「嗚呼、それならなお、私と食べるのをやめた方がいいのでは?」


「わう!?」


「だって、ただでさえ、想い人様に会えなくて辛いのに、嫌いな私と会うなんてなおしんどいじゃない!想い人に会えない辛さは、私もよく知ってるし!そうよ!そうよね!よしっ!明日クリスにそう言いましょう!先に食べたとか食欲がないとか色々言い訳はできるし!そうしましょう!」


「わぅ!!???」



よし、いい考え!

例え、旦那様に嘘だってバレても別に大丈夫。

元々好かれてないんだし、寧ろ今までが失礼だったのかもしれない!

もっと早くにそのことに気づいていれば!

なんていい考えなの!

そう思っていると、銀狼が私の服を噛んでブンブンと顔を横に振る。



「あら、あなたは反対なの?この名案に。」


「わぅっ!!」


「あら?心配してくれてるのね。大丈夫、私は最初から旦那様に嫌われてるし、たとえ嘘だとバレても旦那様もどうでもいいと思われるでしょうし!セッカの事件の時も大丈夫だったのだから、きっと大丈夫よ!ねっ!」



そう言っても銀狼は不満そうに見ている。

ううーん、なんて頑固な子。

仕方がない。



「もう、じゃあ、クリスにとりあえず今のこと言ってみて、反対されたら、やめるわ。クリスに迷惑は掛けたくないし。」


「わふっ。」



そう言えば銀狼は私の服を離してくれた。

ふーむ、この子外の仕事ばっかで、本当に屋敷のこと全然知らないのね。

だから反対したのよ。

私と旦那様の関係を知っているものなら誰だって賛成してくれると思うのだけどね。

まぁ、クリスに言ってみて、公爵夫人としてダメって言われたらまた他の案を考えないとね。



「あら、やだ。もうこんな時間。こんなに遅くなっていたのね。あなたも明日仕事でしょ?早くおかえりなさいな。また今度おいで、ねっ?」



そう言うと銀狼は時計を見て、納得したのか窓の方へとポテポテと向かう。

しっぽは残念そうに垂れ下がっているけど、この子は獣人族だもの。

普通の犬とかなら置いてあげるのだけども、流石にね。



「ほらほら、そんなに落ち込まないの。また来てちょうだいな。」


「わぅっ!!」



あまりにも寂しそうに歩くから思わず、頭を撫でてしまう。

わぁ、とても柔らかい。

肌触りとてもいいのだけども、相手をビックリさせたみたい。



「ごめんなさい。思わず撫でてしまったわ。」


「うぅっ。」



謝ればぷいっと顔を横に向けてしまう。

どうやら拗ねているようで。

でも、怒ってはないようで。

それがまた可愛くて。

ふふふ、銀狼でこんなに可愛いだなんて。



「さあさあ、早くお行きなさい。」


「わふ。」



銀狼はまたなと言うように返事をしてから、夜の闇に消えていった。

しばらく銀狼の消えた方を見て、窓を閉め、部屋に入る。



「ふふふっ、いつになったら、人で会ってくれるのかしら。」



寂しがり屋で恥ずかしがり屋な銀狼さん。

できたら私だけが話すのじゃなくて、会話をしてみたいなと思う。

だって、あんなに可愛い人なんだ。

きっと人であったとしても可愛らしくいいお友達になれると思うのだけどね。

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