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まぁ、ノエルママが騎士団長をされていたなんて。

ムエ爺も。

確かに、ムエ爺もノエルママもとっても逞しい体をしてますが、それは庭師と料理人だからかと思ってました。

それにムエ爺から、前に自分は隣国出身だって話をしてましたね。

でも、隣国では自分のしたい仕事が出来ないから、昔の友人であるこの屋敷の主、旦那様のお爺様を頼ってきたと。

それで、今の庭師という職を満足するまでしていると。



「でも、ビィ、あなたは生まれも育ちもこの国でしょう?それに、ビィは今まで、他にあんまり外に出たくないって言ってたでしょう?」


「うん、言ってた。」



そう、ビィは庭の花を育てるのを生きがいにしているから、この屋敷から離れるのは嫌だって言ってたのに。

そりゃあ、何日かだけ居ないこともあったわ。

きっとあれは、情報集めの仕事をしていたのね。

でも、長くて3日ぐらいだったのよ?

それが、隣国との仕事なんて、一体何時までかかるか。



「庭師は、他にも居るし。奥様がよく知ってるでしょう?」


「そりゃあ、分かるけども。」


「奥様、私ね。ずっと、庭師の仕事を言い訳して、情報収集の方の仕事を疎かにしていたの。何日も離れてしまうのは、私が嫌がって母さんが行ってくれていたの。本当はそんなんじゃダメだって分かっていたけど。怖かったの。この屋敷から出ることが。成長して、少しは出ることが出来るようにはなったけど。私は獣人族で、この屋敷にはみんながいてくれるから、怖くは無いけど、ここをでてしまうと、みんな人だから。」


「ビィ。」


「でも、奥様と出会って、人も色々あることが分かってきたの。奥様といる時はポカポカして、とっても幸せで。もし、戦争が起きたりしたら、奥様だって危ないかも知れない。私はそんなの嫌だから。奥様にはいつだって笑ってて欲しい。」


「ビィ!!」



思わずビィを抱きしめてしまった。

だって、あのビィがこんなことを思ってくれていたなんて!!

嬉しすぎて。

最初、出会った時は無表情で、なんにも答えてくれなかったあのビィが。

ムエ爺が連れてきてくれたのがビィで。

その時は、私が畑だけじゃなくてお花も植えて育てたいと思ってムエ爺に相談した時で、手伝えとしてビィを呼んでくれたのよね。

その時のビィは、人嫌いで、無表情の無言で、最低限の手伝いをしてくれていたのよね。

ビィったら、人嫌いでも優しいのよね、最低限でも手伝いをしてくれていたから。

だから、私、この子はとってもいい子だと分かって、沢山話しかけて、少しずつ仲良くなっていったのよね。

で、その時に人嫌いってのを教えて貰ったのよね。

だから、この屋敷からは出たくないと話していて、ビィの為にはそのままではダメだと思うけど、でも、ビィが望まないのに無理にするのも違うと思っていたの。

少しずつ、他の人たちの良さも知って欲しいって。

勿論、全ての人がいい人ではないし、悪い人もいる。

でも、そんな色々な人がいる中にも、きっとビィと仲良くなって、かけがえのない人になるかも知れない人がいる。

でも、ビィが望むまでは、見守っていきたいと思っていたのに。



「いつの間にか、こんなにも成長してたのね。」


「奥様、母さんと同じこと言ってるよ。」


「ふふ、ジウさんも言ってたのね。でも、本当に嬉しいの。ビィ。勿論、ビィが私を思ってくれていることも嬉しいし、色んな人がいると思ってくれたのが本当に嬉しい。」


「うん。今まで、仕事として関わった奴らは正直言って、嫌な奴らばっかりで、人ってそんなんばっかりだと思った。けど、奥様はそんな奴らと全然違ったから。」


「ビィ。そうね、色んな人がいるわ。悪い人もいるし、いい人もいる。ビィにとって、ずっと信頼出来る人もいるかもしれないわ。」


「うん、分かってる。少しずつだけど、外にもでてみようと思う。でも、まずは今回の仕事をちゃんと終えるよ。」


「覚悟、決まってるのね。」


「うん。大丈夫。父さんも母さんも、それに爺さんもいるから。」



もう、ビィはちゃんと覚悟を決めているなら、私は何も言えない。

きっと、ビィが行くことになったことはお祖母様が間接的にも関わっていると思う。

お祖母様の考えは、私には読めないし、一体どんなことをするのかも分からない。

そんなのに、ビィ達を巻き込みたくないのに。

でも、そう言って止めるのは、ビィに対して失礼よね。



「ねぇ、奥様。あのね、頑張ってお仕事してきて、ちゃんと私が帰ってきたら、いっぱい褒めてね。」


「っっ!!うん、うん!!褒める!褒めるよ!!ビィ!!だか、ら、絶対に、無事に帰って、きて、ね!」


「ふふ、泣かないで。ミミ姉。大丈夫、ちょっとお仕事してくるだけ。笑って、ねっ?」


「うぅっ、うん、うん!!ビィが、ビィが姉って、呼んでくれたんだもん、泣かない!!泣かないよ!!」

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