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腕の中にいるミミを見ながら、幸せな気持ちを噛み締める。
嗚呼、ようやくミミが俺の腕の中に帰ってきたんだなと実感できた。
アイツらめっ。
ミミが帰ってきたらすぐに知らせろって言ったのに、わざと知らせなかったな。
ミミの後ろに控えているエレナを見れば舌を出しているし、その隣でまた控えているジュジュは指を立てている。
どの指かはあえて言わないけども。
確実にわざとだな。
まぁ、そうなるだろうなっとは思っていたが、まさかクリスまで裏切るとわな。
他の奴らは、皆、ミミの実家に帰る際誰も連れずに行ったことを相当腹を立てていたようだからな。
俺が先に帰ってきた時も、ミミが帰ってきたのだと思って、我先と出てきていた奴らがそりゃあもう残念そうな顔をしてむかえてくれたからな。
それにしても、空気の読める部下を持ってよかったよ。
たまたまうちの前を通りがかった、たまたまうちの隊の部下の1人がたまたまうちに帰ってくる馬車を見て報告してくれたんだからな。
そうじゃなきゃ、いまだにあの会議に出されていただろう。
本当に俺は有給休暇をもぎ取っていったというのに!
「すまないな、ローエン。奥様と一緒に休暇中にな。」
「えぇ、本当に。私の愛おしい妻と離れ離れにするというご趣味があるとは、本当に独り者の僻みですか?」
「ぐっ。そっそれは。」
「良いお年なのに、いまだに婚約者もおらず、だからいまだに殿下どまりな訳です。幸せな者を僻んで、邪魔をするより、ご自分の婚約者をお探しになられることが大事では?」
「それは!うちの妹が嫁に行かないと、なかなか婚約者を探すのも難しくて!!だから、今、元々交流のあった女性をっ!」
「でも、それがなかなか上手く進んでいないと聞いてますよ。僻みじゃないですか?」
「ローエン、その辺にしてやれよ。」
「ルート、お前もだからなっ。俺を呼び戻した者の1人!」
「おぉおぉ、こわぁー。」
そう言いながらもケラケラ笑うコイツが1番腹立たしい。
本来ならば、報告だけしておけばいい立場の俺がここに居るのもコイツらのせいなのだから。
ルートは元々側近候補として俺と一緒に殿下と出会い、コイツはそのまま側近としているのだから、この場ではコイツの方が上司であり、本来この2人でどうにかしてもらわないといけないのだが!?
その結果を俺は従って動かなければならないのだが!
何故、今、その元の作戦を練るのを一緒にしなければならないっ!!
ミミとの幸せな時間を蹴ってまで!!
「いいじゃんかぁー。一応、2ヶ月ぐらいは穏やかに過ごせたんだろう?」
「くっ、過ごせていないから腹が立つんだろっ!」
「えっ、なんで!?」
「なんででもいいだろう!!」
言えるわけが無いだろうが!!
妻の実家にいけば、義母と義弟は睨みを聞かせてくるから、なかなかミミと過ごせなかっただなんて!!
いや、これもそれも俺が悪いんだがなっ!!
本当に、ミミに出会った頃の俺を殴り殺したいぐらいだからなっ!
でも、それがなければ、今こうやってミミと夫婦になれることも無かっただろう。
もし、俺が普通にミミに惚れて、それで婚約を申し込んでも、断られただろうからな。
ミミは今でこそ、俺の事を好きになってくれているが、いまだに心にアイツがいるからな。
ミミは本当に一途で純粋だから、言葉でどういえとも、長年思い続けた人をすぐに忘れることなどできないし、なにより今はいい思い出としてはいるが、やはり辛い気持ちもあるのだろう。
そんなミミに、出会って間もない俺が婚約を申し込んだとしても、ミミのことだ、好きになれないから、他に想い人がいるからと申し訳ないと断られるに決まってる。
俺があんな最低な案を出したからこそ、ミミはうなづいてこうやって結婚してくれたんだからな。
まぁ、それはそうとして、なにより義弟よりも義母。
本当になんでもないことでミミを呼んでは2人の時間を作らせないようにしている。
怒ることもできず、ただただ呼ばれるミミを、そのまま眺める日々。
そんな日々も少しずつ義母が柔らかくなったのか、ようやく、ようやく少しずつミミと過ごす時間が増えてきた時に、これだからなっ!
「怒るなって言う方が無理だ!!」
「うわぁー。機嫌最悪じゃん!折角、お前んところの騎士総団長殿に暫くお借りする許可を頂いたっていうのにさー。」
そうだ!!
そうっ!!
俺の直属の上司である騎士団総団長殿だっ!!
なに、勝手に許可を出してるんだと怒りたいっ!!
快く有給休暇を取らせていただけたことは本当に感謝していたけども、その感謝も撤回させて頂きたいっ!!
本来ならあの方が、ここに入ればいいのにっ!!
なのに、俺は頭を使うのはからっきしだからと言って、面倒事を押し付けて!!
そして、副団長殿も!!
あなたは頭いい分類だけども、総隊長の世話があるからとこっちにもってきやがって!!




