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「もう、奥様、からかわないでください。」
「からかってなんかないわ!正直に思ったことを言っただけ、あら?何か騒がしいような。」
「ん?なにか変な感じがしますね。ちょっと見てきまうわっ。」
「ミミィーーー!!帰ってきたのだな!良かった、無事でっ!!」
「だっ旦那様!?えっと、まだお仕事が終わるまでの時間では無いはずでは?」
嵐のように部屋に入ってきたのは暫くぶりの旦那様です。
どこか疲れている雰囲気ですが、抱きしめりているので雰囲気しか分かりません。
「そんなの、ミミが帰ってきていると知って、すぐさま殿下達に投げてきた!」
投げてきたって。
そんな、殿下達ことは、陛下もいらして?
そんなそんな御無礼なことをして!!
「だっ旦那様!すぐにお帰りなった方がいいのでは!?」
「大丈夫。なにより殿下達が悪いのだからな。俺は、2ヶ月ちゃんと休みを取っていたはずなのに、それを命令でなしにするという酷いことをしたのだから!だから、ミミが帰ってきた時には何があろうとすぐに帰らせるように言っていたのだ!」
「そっそれはそうですけども、でも、確か、戦争になるかもしれない大変なことだったのでは?」
「まぁ、大変なことではあるが、殿下達も馬鹿では無いし、うちの総隊長殿は優秀だから。彼らに任せておけば大丈夫だろう。」
ええっと、それって大丈夫なのかしら?
大丈夫でないから有給を返上して旦那様は戻ったわけで。
「俺は結局のところ、ミミから貰った情報を詳しく話すだけさ。本当はミミから直接聞きたいと言っていたそうだが、それは俺が断固拒否したから。」
「ええっ!?そうだったのですか?」
「まぁね。それに加えて君の弟達もと言っていたが、お義母様だって出産間近で、そんな不安定な時に子ども全員を王都に呼ぶなんて、それこそお義母様に刺されてしまうよ。」
旦那様にそう言われて、確かにしかねないと思ってしまった。
大分落ち着いてきていたお母様だけど、出産前はそれはそれは荒れていたもの。
その後も暫く落ち着きはなかったわ。
うちは、元々貧乏貴族だったので乳母を雇うなんてこともなく、私を含め、みーんなお母様の手で育て上げられたもの。
正直言って、今の現状ならば雇えなくもないけど、今まで自分の手で育て上げてきたお母様は今更自分の手で育てないなんて一切考えていないので、雇っている侍女もセッカぐらいで、他は私達だけでなんとかしてきたけども。
子どもを育てるのに乳母までは居なくとも、セッカ以外にも侍女やメイド達は居るだろうってことで、お父様が近々、知り合いの方に頼んで紹介してもらうと言っていたわ。
という訳でセッカが侍女長件メイド長という肩書きになるのだけども、本人はそれをあんまり納得していなかったのを見たけど大丈夫かしら?
セッカ、基本人付き合いが苦手だから。
でも、今回エレナと会って一緒に過ごして大分慣れていたから大丈夫かしら?
セッカも色々な人と付き合うことは大事だと思うし、なにより領民の皆とは仲良くできていたから、お父様の知り合いからってことだから変な人たちではないでしょうしね。
って、そうじゃなかった!
「でも、旦那様を必要とされているのでは?」
「んー。まぁ、そうだね。一応、殿下にはそこそこ信頼されているから、何かとあるかもしれないなぁ。それこそ、今の俺を殿下の側近にしようとか言っているのもあるようだけども、それは絶対に嫌だから断っているけどね。」
「えっ!?そうなんですか!?」
初耳ですっ!
そんな旦那様てば、今の仕事をやめてお義父様のお仕事をちゃんと継ぎたいとかお話してたけど、そんな側近なんてなったら辞めるなんて無理では?
というか、断っているって、いいのでしょうか!?
「まぁ、元々殿下とは幼い時から知っていて、同い年というのもあって、共に過ごしてきた時間が長いというのが1番だろうけど。それこそそうなったのは、元々、側近候補に居たからこそなんだが、でも、今の俺は側近ではないだろう?何故だと思う?」
「えっ?」
「姫に片想いしてたからさ。そりゃあ、恋愛方面じゃトンチカンだとか何やら噂をされるぐらいの酷い有様で、だから側近候補から外れたんだよ。姫に近づけないために。その時はそりゃあ荒れたけども、今ではそれで良かったと思うよ。側近なんかなってたら、それこそ容易く辞めることなんて出来ないから。」
「それで、一騎士として、お仕事されていたんですね。」
「まぁ、そうだな。なんとしても姫の傍に居たいからって、父上からは滅茶苦茶反対されたけども、無理矢理入って、下っ端からはじめて、今の地位にようやく来れたところだけども。今となっては、どうでもいいし、寧ろ、ちゃんとあの頃父上の仕事をしっかりと学んでおけばと思って後悔しているよ。」




