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でも、なんでエルビスさんは来たのかしら?
エレナの話ならば、私の帰省に旦那様も一緒にということだったから、その旦那様の代わりに来たとのことだけども。
「エルビスさんはとっても優秀なのもよく分かったけども、何故、今もいるのかよね。」
「えぇ、叔父さんはそれはそれは大旦那様を尊敬なさってて、本来、あの人ちゃらんぽらんなのに大旦那様の前なら、絶対そんな姿を見せないんですよ。まぁ、叔父さんがちゃらんぽらんなのは大旦那様も知ってますけど。」
「そうなの。」
なら、何故かしら?
旦那様は一足先に戻っていて、今はお城の方に行っているみたいだけど、一応、屋敷には毎日戻ってきているみたいだし。
「もしかして、奥様が戻られたらと思って毎日戻ってきてるだけですがね。ストーカーかしら。」
「ストーカーって。一応、旦那様のお家だからね?」
「それはそうですが、帰って一言目が、ただいまじゃなくて、ミミは戻ったか?ですからね。奥様が戻るのに最低でも2ヶ月後だとあちらを出る時何度も聞いたというのに。」
んー、まぁ、旦那様が聞くのも無理がないかもしれないわと思ってしまうのよね。
だって、皆、秘密にしようとするのだから。
どうやら、皆を置いて私と旦那様だけで、うちに帰省していた事が不満だったようだわ。
本来なら何人か付けても良かったのだけども、うちは貧乏だから、そんなに部屋数もないし、自分のことは自分でできるからって断っちゃって、旦那様も騎士だから、自分のことをできるからいらないとか言って。
だから誰1人も連れて行かなかったのよね。
「でも、だからって私が帰ってきたことを秘密にしないでも。」
「ほんの数時間だけですけども、奥様を私達だけで独占させてもらいたいんですぅー!旦那様は充分、奥様との時間があったんですから!」
「そうそう!どうせ、知らせたらすぐに帰ってくるんですから!」
「「ねーー!」」
「という訳で奥様は私達にじゅーぶん癒されてくださいませー!」
そのニコニコ笑顔が怖いです。
気づけば全身くまなくマッサージされて、そしてぐったりです。
いつもより気合いがはいってましたね。
皆。
「なんだか、今日は皆よく来てくれるような気がするのだけども。」
「みーんな、寂しかったんでしょうねぇー。」
「ノエルママも来てくれるし。」
「あらぁ!私も奥様が居なくて寂しかったのよぉー!うちのパパにビィちゃんだってー!」
「ムエ爺にビィーも?」
「そうよそうよー!うちの娘ちゃんは基本無表情だけども、奥様がいらっしゃらない時は寂しそうにお庭をいじってたわぁ!」
「そうなのね。」
「もっちろん、私もめっちゃくちゃ寂しかったからねぇー!奥様が美味しそうに私の作った料理を食べて貰えるのがすんごく嬉しいんだからねー!」
「ふふ、ノエルママの料理はどれも美味しいですから!」
「やーん!嬉しいっ!」
ノエルママこと、うちの料理長で、庭師のムエ爺の息子で、ビィーの父親。
そう父親。
「親父、奥様を困らせないで。」
「ビィーちゃーーん!」
「寄るな、暑苦しい!」
「酷いー!暑苦しくなんてないもーん!」
「暑苦しいよ。料理人の癖に庭師の私よりも筋肉ありやがって。」
「やぁねぇ!料理だって力のいる仕事よぉ!だから筋肉が付いてもしょうがないのよぉ!」
「そりゃあそうだけども、そんなにはつかない。私の方が重いもの持つこと多いのに。」
「そりゃあ、この肉体美の為に日々鍛えてますからぁ!」
「やっぱり、鍛えてやがった!」
わぁ、ビィーったら関節技が綺麗に決まってますね。
でも、多分、ノエルママには効いてないみたいよ。
言ったら怒りそうだし、何よりノエルママは嬉しそうだわ。
ビィーってば、お爺さんのムエ爺には懐いてるけども、ノエルママとは距離を置いてるから、こうやって触れ合えるのが嬉しいのよね。
ノエルママったら。
でも、本当にノエルママだけが料理人なのよね。
ムエ爺は、ノエルママに庭師になって欲しかったけども、ノエルママは料理に目覚めちゃって、それで大喧嘩したって聞いたっけ。
でも、その後、孫のビィーは庭師に目覚めてムエ爺の弟子になったというね。
それをノエルママは悔しがったけども、止めはしなかったって言っていたな。
ちなみに、ノエルママの奥さんも御屋敷で働いています。
掃除婦長さんで、それはそれは完璧な掃除をなさる女性で、いつもどこかしらをお掃除されています。
私も何度か一緒にお掃除させてもらいましたが、本当にお勉強になります!




