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奥様はきょとんとされており、本当に分からないという感じですが、別にそれで良いのです。

奥様は分からなくても。

でも、私はどれだけ経とうとこの事に関して許すことはできないのです、奥様。

あの2人が勝手に奥様に契約結婚を申し込んだことを。

奥様が納得されて行ったことだし、今はそれこそ旦那様は奥様に対して溺愛だけども、でもそれは結局結果論だもの。

人としてありえないことをしているのは間違いないのよね。

私にも話があれば、どうやったとしても止めたと思う。

そりゃあ、旦那様のおかげでこの出会いがあって、私が生涯お仕えすべき方に出会えたけども。

でも、だからこそ私が許すべきでは無いと思うの。



「エレナ?」


「さあさあ、奥様。中に入りましょう。」


「そうですね、入りましょう。」


「えっえぇ。」



ようやく行った馬鹿旦那様のせいで奥様ったら体が冷えているわ。

本当にさっさと行けばいいのに。



「あなたも一緒なのかと思ってました。」


「えっ?」


「あの人達と。」


「あの人達って。」



奥様が屋敷の中に入り、私もと思い後に続こうとしたらセッカさんに急に話しかけられた。

私のすぐ後ろに居られたのは知っていたけども。



「初めてここに彼らが来た時、私はここには他の用事があって離れていました。その隙にやってきたあの人達にお嬢様は、騙されて、嫁に行ってしまったと思い、直ぐに後を追いました。」



嗚呼、それがあの時の。

確かに、セッカさんの気配は1度もした事がなかったわ。

この屋敷にいた時。



「あの屋敷でいるお嬢様の傍にはいつも貴方と彼が居たので、貴方もお嬢様を騙した人だとずっと思っていました。」


「えっ!?そんな!!私はあの馬鹿達とは!!」


「えぇ、今の言葉を聞いて、そうではなかったことはよく分かりました。あの屋敷に潜んでいた時は、あなたと彼らだけが契約結婚について知っているから、貴方達で考えられたものだと思っていました。まぁ、思ったよりもお嬢様自身があの屋敷の生活を楽しんでいたので、とりあえず様子見としていましたがね。」


「あなたが言った言葉、あれって本当に酷いお仕置になるでしょうね。」


「えっ?」



そう言ってクスクスと笑うセッカさんに思わず、固まってしまう。

この人、こんな風に笑うんだ。

今までずっと真顔だったから、ビックリしてしまったわ。

ていうか、なんで酷いお仕置になるって知って。



「数日間、あの屋敷に潜んでいて分かりましたが、あの時でさえお嬢様に対して、それはそれは慕っているものが多いですもの。それこそ信者のようになっているものも居るでしょうね。あの時でさえ、あれだったのに。それから幾日も立っているのだから。」



えぇ、そう、そうです。

今では、奥様をそれはそれは大層慕っているものばかりなのです。

私を筆頭にそれは、もう。

そんな奥様がクリスさんだけを直接褒めたとなれば。



「クリスさんから与えられた仕事をボイコットするまではないとは思いますけども、そりゃあ、酷い嫉妬されるでしょうね。」


「でしょうね。うちは、私以外、老執事のエヴァさん以外いませんからな。勿論、領民の方々はお嬢様をとても慕っていますが、私とエヴァさんは立場が違いますし、お嬢様はいつだって褒めてくれてますから。だから、そんな事になることはありえませんが、あの御屋敷はとても広いですし、関わるのもなかなかでしょうね。」



えぇ、えぇ。

そうですね。

奥様と関わりたいと思っても、なかなか関われない者はとても多い。

奥様自身がとても活発に屋敷内を動いてらっしゃるから1度も会わないって者たちはいないけども、それでも頻度の差は出てしまう。

日頃、奥様のお世話をしている私や、何かと奥様とお話する機械があるのはクリスさんだし、畑関係で庭師とは関わりが多いけども、家事担当しているもの達はその日の奥様の手伝いの場に寄って関われる時間が様々だ。

故に、特にメイド達からの奥様への熱意は高くて、できるだけ関わりたいと願っているのだが、それがいつも関わりあえて、しかも本人から褒められたなんて聞かれたら。



「あの子たちから総攻撃されれば、流石のクリスさんももたないでしょうね。」


「女性の嫉妬が1番怖いですからね。」


「えぇ、特にうちの子達は力も知恵もありますからね。」



獣人族のそれぞれの特徴を特に引き継いだものばかりですからね。

獣人族で全獣化出来るものも何人か居ますし、出来なくともその特性をそのまま生かせる者たちも多い。

故に、敵に回すと面倒なのですが。



「特にあの子達は、執念深い者も多いですから。ネチネチネチネチとやられるかもですね。」


「その筆頭があなたじゃないんですか?」


「あら、酷い。」


「褒めてるんですよ。お嬢様に仇なす者に対して、とても素晴らしい行いをしてもらっているんですからね。」


「ふふふ、そうですか。この事は皆に伝えておかないといけませんね。」


「えぇ、是非。」

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