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まだ、モジモジとしていたリディだが、何か諦めたようにため息をついた。
どうしたのかしら?
一体、何が、これほどリディを?
こんなにも落ち着きがないということは、小さなことではないのね。
「姉様、驚かずに、聞いてね。」
「えぇ。」
「その、数日前にお祖母様、お父様のお祖母様から兄様に連絡があったらしいの。」
「え?お祖母様って、あの?ミーファお祖母様?」
「えぇ、弓の名手と言われたあのお祖母様。ミーファお祖母様です。」
えぇっと、お祖母様がなぜ?
そういえば、姫様の婚約発表パーティーで、レオルド国にいることは分かったけども、その後の行方は分からないと聞いていたわ。
でも、なぜ、イーサンに連絡が?
「それがね、姉様には黙っていたけども、青薔薇はね、ただの商人達じゃなくてね、情報屋でもあるの。」
「えっ、あっ、なるほど。でも、なぜ、それをリディが?」
「青薔薇達は元々、寄せ集めでできた盗賊集団だったでしょう?それを私達が、捕まえて、その後、うちの領地内で住めるようにしてくれたのは姉様だけど、仕事とかは兄様と私で用意したでしょう?うちには専属の商会はないから、元々色々な場所の人が集まっているアイツらは適任だと考えたから。色々な地域の言葉が完璧に話せるのはなかなかないからね。でも、それは表向きだったの。裏では、商人としては出向き、情報を集めてくるの。皆、盗賊だったから結構動けてね、体も軽く、闇に紛れるのも得意だし、なにより、うちにはセッカが居るでしょう?セッカに師範してもらって、鍛えあげてもらって、今の形になったの。うち自体は平和だけども、何があっても可笑しくないからね。うちの領地を守る為にも、一昔の災害のようにならないように、情報を常に集めておくことは大事だからね。」
なるほど、リディ達が青薔薇の方達と仲がいいことは知っていたけども、それは仕事関係もあってだと思っていたわ。
リディ達が一生懸命、仕事を探してあげたから、青薔薇の方達も恩義を感じて、仲良くしてくれているのだと思っていたけど。
まさか、こんなことになっているとは。
でも、確かに一昔の災害、ウチが貧乏貴族のなった時、閉鎖的だったうちは事前の情報がなくて大打撃を受けたのよね。
お祖母様なら情報を知ることもできたかもしれないけど、その当時お祖母様は放浪されていた。
唯一の情報を、収集できるお祖母様がこの領地に居なかったのよね。
それはお祖母様もとても後悔していると言っていたけども、なんとか皆で力を合わせて貧乏ながらもやってきた。
誰かの支援を得ることは簡単だけど、それをすると今まで閉鎖的にしていたことの意味をなさない。
この領地は、少し特殊だとお父様が言っていたわ。
もちろん、昔ほど閉鎖的にするのは良くないと思い、近隣の地とそれなりに交流するようにはなっていたようだけども。
「常に情報収集しておくのは大事ね。御屋敷でも、エレナ達はいつでも、最新の情報を得て動いていたわ。」
「そうなんだ!やっぱりあの御屋敷はすごいわ!どんなに調べても一切情報が入ってこないって青薔薇達が言ってたのよ!」
「えっ、調べていたの!?」
「もちろん!姉様がお嫁にいくところだもの。その住む場所がどんな所か調べていることは大事だから。でも、全然情報は得られなかったわ。得られたのは、お義兄様が姫様に対して片思いしていたってことぐらい。」
「えっ、それをリディは知っていたの!?」
「うん、でも、それって姉様に会う前のお話でしょう?本当は姉様に会ってからはずっと姉様を好きだけど、どこの誰かも知らなかったから、婚約者を無理やり決められるのが嫌だったお義兄様がそのまま姫様に片思いしているように見せていたって、お義兄様が話してくれたわ。」
「そっ、そう。」
旦那様ったら。
そういう風にリディには言ったのね。
イーサンやお母様には、バレてしまっているけど、リディは信じてて、自分が片思いしたこともあってか、とっても憧れているものね。
ん?あれ?リディが信じて...。
いえ、そんな訳ないわよね?
「それで、イーサンにお祖母様が連絡をって?」
「嗚呼、そうっ、兄様が連絡を受けて、青薔薇達に依頼してきたの。その時に、たまたま私もいて聞いたのだけども、兄様がお祖母様から依頼されたのは例の国の情報収集。」
「例の国って、まさか!」
「そう、うちの領地からも近く、昔は大国だったけども、その昔戦争を起こして、小国になってしまった国。」
「ワルア国ね。でも、何でワルア国を?うちは姫様とレオルド国の陛下と結婚して関係は強くなったことで牽制されたはずでは?」
「それがどうやら、そうならなかったみたい。」




