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「おっお母様!じっとなさっていて!!!私がするから!」
「あら、これぐらい大丈夫よー!」
「大丈夫じゃありません!!安静にしてて!」
「あらー、私、これでも貴方達3人を産んだ母ですよー。少しは動かないといけないことは私がよーく分かってるわー!」
「動くことはいいですけど!でもでもでも!!」
畑仕事行こうとするのは違うと思うわ!!
もう、予定日も近いっていうのに!!!
絶対にダメよ!
確かに大事な薬の材料なのは知ってるけども!!
でも、それなら私がちゃんとするから!!
「あの子は、取り扱いが注意なのよ、ミミになにかあったらダメだからね。」
「お母様に何かあっても、ダメですから!分かりました!!なら、リディを呼んできます!リディならよく知っているでしょう?」
「そうねぇ、あの子なら大丈夫かしら?」
ようやく止まってくれたお母様を素早くセッカに任せて、リディを呼びに行けば、リディは快く承諾してくれた。
良かったわ。
今日はお父様は領地内を見守るために旦那様を連れて出ていっているから、旦那様を好いていないお母様は大好きなお父様を連れていかれたことで苛立ち、それを抑えようと畑仕事をしようとするという。
それをすぐに止められるのもお父様なのだけど、その肝心のお父様がいないからこうなっているという。
「はぁ。」
「ごめんなさい。姉様!姉様がこんなにも困っていたのに、助けにくるのが遅くなってしまって。」
「いいえ、いいのよ。それよりもリディ、大丈夫?予定があったのでは?急に呼んじゃったから。」
「いいえ、姉様より優先される予定なんて無いですわ!ふふふっ、久しぶりに姉様とこうしていられるのが嬉しいわ!」
そうね、そうだったわ。
帰ってきてから、もう1ヶ月も経つのにリディとこうしてゆっくり過ごすことがなかったわね。
勿論、一緒に過ごすこともあったけども、旦那様に会えば威嚇しようとするお母様を止めるためにもお母様の傍でいたり、領地内のことをお父様とイーサンと話したり、勿論旦那様にこの地のことを紹介したりと忙しかったわ。
リディはリディで色々と忙しそうだったし。
「ごめんね、リディ。」
「えっ?姉様が謝ることなんてなにもないわ!それで、姉様、あの薬草のお世話をすればいいのね。」
「えぇ、もうすぐ収穫の時期なんだそうだけど、その仕上げが大事なんですって。」
「なるほど、確かにそうだったわ。よし、母様を安心させる為にもちゃんとしておかないと!」
「そうね。」
「姉様、その葉っぱは取り除いていいわ!あと、その後ろのも。」
「分かったわ。」
リディと一緒に作業するのなんて、いつ以来かしら。
とっても、懐かしく感じてしまう。
そんなに昔じゃないはずなのに。
「ねぇ、姉様。」
「ん?なぁに?」
「姉様は今、幸せ?」
「えっ?えぇ、幸せよ。」
「そっか、そうよ、そうよね。」
「リディ?」
最近忙しそうにしていたリディだけども、何か様子がおかしい。
旦那様に、よく話を聞いていたのも、この数日はあまり聞きに来てないようで、旦那様も気にかけていたわ。
そして、今の様子。
「リディ、何かあったの?」
「何も、何もないわ。まだ。」
まだってことは、今は何もないけども、この先に何かあるかもしれないということね。
でも、一体、何が?
「ねえ、姉様。お義兄様は騎士様でもあるのよね?」
「えっ、えぇ、そうよ。」
「だよね。うーん。」
「リディ、何かあったのね。今は何も無いということは、未来で何かあるかもしれないという情報を手にしたのかしら?」
「!!あっ、その。」
「ふふふ、リディはある隠し事が苦手なのは昔っからね。」
「そんな、私、秘密にするのはとっても上手よ!誰にもバレたことはないのだから!」
「そうねぇ。リディは気づいていないのよね。リディは隠し事をしようとする時、焦りから頬をかく癖があるのよね。昔、お母様の大事な薬草を勝手に使ってしまった時も、イーサンの大事にしていた本を汚してしまった時も、焦っていてその癖がでていたわ。リディがその癖が出る時は、焦ってしまうような事が起きた時、そしてそれを隠さなくちゃと思った時だから、今は何もないということは、この先、未来にあるかもしれない。それもあまり良くないことね。いい事なら、リディが焦ることもないのだから。」
「うぅ、流石は姉様だわ。私にそんな癖があるなんて知らなかった。」
「ふふ、そうよね。だって、焦る様な隠し事じゃなければ、その癖は出ないもの。だから、なかなか気づかないけど、私はリディの姉だもの。妹のことはよーく知っているわ。」
「姉様!」
「っで、どうしたの?リディ。リディは一体なにを焦っているの?私には話することはできないかしら?」




