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「そうか、なら、うちに来ればいいともなかなか言えないね。」
「んー、そうですね、特に母様がダメって言いそうで。だから、お義兄様のお話が聞けるととっても嬉しいんですっ!!」
そういえば、お義兄様は結構スラスラと話してくれるのよね。
王都の様子に、自分の仕事場のこと。
所々で出てきそうになるのは鬱陶しい姫のこと。
まぁ、長年想い人で、そばに居たから出るのかもしれないけど、正直、今のお義兄様は悪意しかないのがよく分かるわ。
噂でしか知らないけども、相当のめり込んでいたって話だったはずなのに。
だから社交界では目の保養にはなるけど結婚はしたくない男性だって、まともな令嬢達からは言われていたのよね。
一部狂っている令嬢からは狙われていたそうだけども、そりゃあ冷徹の名を持つお義兄様だからね、それはそれはひっどい対応していたそうね。
その対応を姉様にしていたら、本当に首を絞めるところだったわ。
契約結婚ってとこでも腹が立つけども、でも、正直言ってそれほど冷徹な対応はしてないのよね。
姉様には。
契約結婚を申し込むような相手だったから、少しは気遣ってたみたい。
まぁ、お互いに興味が無かったからってのもあるでしょうけどね。
でも、そのお陰で、相当お義兄様ったら姉様には振り回されたみたいね。
姉様ったら1度信じたら、なかなか覆らないのよね、考えが。
だから、相当手こずったのは、お義兄様とお話していてよーく分かったわ。
でも、まぁ、運が良かったのね。
お義兄様は。
まさか覆るとは思わなかったもの。
夜会で姉様の想い人に会って、それが正直言っていい方向には進まず、そしてその時傍に居たのがお義兄様だもの。
なんていい条件なんでしょう。
正直言って契約結婚を姉様に申し込んだ時点でかなりの運の持ち主よね。
強運よ、強運。
まぁ、姉様のお相手には運もある方じゃないとダメだから、それに関しては合格よね。
後は、姉様に対しての行動よね。
「王都って、本当に凄いんですねー。少ないとは言え、獣人の方もいらっしゃるし。はぁ、王都に行ったら会えるのかな?」
「ん?誰か会いたい人でもいるのかな?」
「あっ、その、うぅ、そのですね、絶対に秘密にしてくださいねっ!姉様しかしらないんですけど、お義兄様は協力してくれそうだし。お話しますね。」
「あぁ、秘密は絶対に守るよ。それに俺に協力できることがあるなら協力するよ。」
「ありがとうございます。」
いかにも思わず言ってしまった感じを出せば、釣れた釣れた!
そう!ここに持っていきたかったのよね!!
その為に地道に交流続けてきたのだから!!
ここからが本番よね!!!
「あのですね、私、今、好きな人が出来まして。そのそれが獣人の方なんです。」
「えっ?」
「驚くのも無理はありませんよね。でも、とってもいい方なんですっ!!姉様にお話した時もいい方ねって言われたし、本当に本当にいい方で!!」
「そっそうなんだ。」
「はいっ!」
あれ?なんでこんな反応を?
もしかしてお義兄様ったら獣人族に抵抗がある方なのかしら?
うちにはセッカがいるし、セッカに対して普通に接していたから大丈夫な方だと思ったのに。
セッカは普通に自分が獣人族であるって言ってるからね。
でも、まさか獣人族に対して批判的な人ならマイナス点よね。
そんな人なら、姉様を任せるなんてできないわ!!
「そのリディは、獣人族に対して偏見とかはないのかい?」
「偏見?なんでですか??」
「いや、その、一般的に獣人族は恐ろしいとかあるじゃないか。」
「いや、別に恐ろしいなんて思ったことはありませんよ。身近にセッカが居ますし、そりゃあ、他の獣人族の方はなかなか見る機会はないのでよく知りませんが、姉様がよく言ってますもの。獣人族も私達も一緒、力が強い人も入れば頭のいい人もちるし、なによりその力をどう利用するかが大事なのって。それを悪に使おうとする人はどちらにも居るだろうし、それが目の前の人かは分からない。だからきちんとその人を見て判断するのよって。」
「そっか、ミミがそう言っていたのか。」
「えぇ、そうです。」
「「流石は姉様だな。」」
「えっ?」
「んっ?」
えっと、もしかしてお義兄様って、逆だということかしら?
なんだ、なーんだ!!
やっぱり姉様が選んだ人よね!
そうよね、そうよ!!
だって姉様が好きになった人だもの!!
「お義兄様は獣人族の方たちに対して好意的なんですね!」
「んん、好意的というか、なんというか、その、だね。まぁ、俺もミミと同じというか。その、だね、獣人族にも良い奴、悪い奴は勿論居るから、気をつけることも大事だとは思うよ。なによりミミの、そして俺の義妹が傷つくのは嫌だからね。」




