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とても綺麗だったのよ、その方の話をしている姉様は。
いつだって綺麗で美しい姉様が、いつも以上に輝くの。
たった数日の出来事。
もう何年も前のこと。
それをそれはそれは大切に話してくれるのよ。
「私はそんな姉様を見るのが好きだったのよ。幸せそうに微笑む姉様を見るのが。」
「頭。」
「でも、でも、そんな姉様を忘れるなんて。なんて愚かな奴。そして、そんな姉様をもう二度と見ることは出来なのいのよ。それがとても残念よ。」
「頭は、女神様のその姿が見られないことを残念がってます?もしかして。」
「当たり前よ!!!忘れた野郎のことも腹立つけどなによりも、そんな素敵すぎる姉様の姿がもう二度と見れないなんて!!酷すぎるわ!!」
「いや、それなら、また見れるんじゃないっすか?」
「えっ?」
「いや、だって聞いた話じゃ、女神様、今の旦那さんのこと愛してるんでしょう?だからそんな姿もまた見れるんじゃないっすか?」
「あっ。」
そうか、そうか!!そうよね!!!
そうだったわ!!
「姉様は今、お義兄様を愛してるって言ってたもの!!正直、まだまだお義兄様は足りない所だらけで、姉様の雰囲気を見ても、まだ前ほどではないけど、私がしっかりと調きょ、ゲフンゲフン、サポートしてさしあげれば、きっとそうなるわよね!!だからこそ存在しない相手を作り上げたのだから!!」
「そうだそうだ!」
「あの鬼のように強い頭が片思いなんて早々ありえないのに、でっち上げたのだからな!!」
「1番片思いという言葉が似合わない頭がっ!!」
「寧ろ、好きになったら一直線。猪のごとく体当たりし、そして気絶させ、そのままお持ち帰りしてしまいそうな頭がっ!!」
「アンタ達っ!!!」
そんなことする訳ないじゃない!!
私だって、片思いすることあるわよ!!!
きっと、多分。
なによりお持ち帰りなんてしないわよ!!
なんなの、コイツら!!
「まぁまぁ、頭。」
「つまり、頭が、公爵様を導いて、なんでしたってけ、素敵な理想の旦那様!にするんですよね?」
「えぇ!そうよ!姉様を本当に幸せにできる素敵な旦那様にねっ!!」
そうと決まれば善は急げよ!!!
「御機嫌よう!お義兄様!!」
「あっ、あぁ、御機嫌よう。リディア穣。」
「やだっ、お義兄様!リディア穣なんて、他人行儀な呼び方!リディっと呼んでくださいな!!私達、家族なんですから、ねっ!!」
「あっ、あぁ。そう、そうだね。」
姉様が、母様のお手伝いをしている合間の時間は度々やってくる。
なんたって、母様は公爵様のことが嫌いだから近づけたくないって言っているものね。
父様は知っていての行動だけど、無理してちかづけようとはしないから、姉様だけを呼ぶことは許しているのよね。
その間、お義兄様は一人っきりになりがち。
まぁ兄様が監視してるみたいだけど。
お義兄様もなんだか時折仕事をしているけども、そんなに忙しそうではないから、時を見て会いに行けば、相手をしてくれるのよね。
冷徹な公爵様がね。
どうやら姉様の家族ってことで、甘く接してくれてるようだけど、どう接していいのかは分からないようで、結構オドオドしているわ。
噂に聞いていた公爵様とはまったく違ってね。
姫以外にはそれこそ氷のように冷たい態度をとっていたとかなんとか。
まあ、噂だからどこまで本当にかは分からないけども、多分興味のない人に対しては、あまり好意的に接する人ではないのは
本当だと思うわ。
だからこそ、初対面、あまり関わりのない人に対してどう接していけばいいのかが分からないのだろうけど。
こんな様子は困るのよね。
上手く接していってもらわないと。
「その、リッリディ。」
「はい?お義兄様。」
「その、リディは君の兄や母から何も聞いてないのかい?」
「えっ?お兄様とお母様からですか?」
あら、なんで急にそんなことを?
なーんて風に見えるように装うけども、なるほど、お義兄様ったら私がこんなにも懐いているのが怪しく思えたのね。
流石はお義兄様。
そうじゃなくっちゃっ。
でも、姉様の妹ってだけで甘いわね。
こんなにも懐いてくるのが、母様達の計画の1部って思ってるのね。
でも、残念。
母様達は逆に近寄るなって言われてるぐらいなのだから。
まさか、計画を立てているのがこの私だとも思えないようね。
甘い、とっても甘いわ!!
「いいえ、何も。何かあるのですか?お義兄様。」
「いっ、いや、別に何もないよ。」
「そうですか?なら良いですが。そうそう、お義兄様。今日も、王都のお話を聞かせてくださいなっ!」
「あぁ、構わないよ。」
「ふふふっ、やったーー!母様も父様もとっても過保護だから、王都は勿論、領地内から出たことないから領地外のこととってと興味があるんですっ!!」




