表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/205

14

真っ暗な夜空を無心で飛ぶ。

私の大切なお嬢様。



「本当ならばお嬢様をお連れしたかった。」



あの屋敷で、あの公爵ではお優しいお嬢様を幸せになんてできるわけが無い。

今のままのあの公爵では。

私の大事な大事なお嬢様。

私の生きる希望。



「お嬢様が犠牲になることなどないのに。」



きっとお嬢様は御家族や、領民の為に嫁にと行ったことはよく分かっている。

元々、お嬢様は金持ちの後妻でもって思っていたことは知っている。

まぁ、そんなことさせないけど。

私がお金を稼げばいいこと。

本来ならお嬢様達を連れて隣国にでも行けばいいのだが、優しいあの方達は、領民を見捨てることは出来ない。

だから、必要とされなくなるまであの方達は頑張ってあそこで暮らすだろう。

どんなに貧乏でも。



「本当に優しすぎる。」



私を拾った時だってそうだ。

元々、私は隣国で、命を狙われていた。

厄介な一族の娘だから。

なんとか生き延びて、あの方達の領地である森で傷つき倒れていると、お嬢様が助けてくれた。

最初は警戒心のせいでお嬢様に酷い言葉を浴びせ、時には傷さえも付けた。

あれは一生忘れられない最悪の思いでだ。

でも、お嬢様は笑って許してくれた。

小さな小さな鳥である私を大切に大切に看病してくれた。

傷つき、体力もなかった私は鳥のままでしばらく居たが、お嬢様はずっと優しく看病してくれた。

だんだんお嬢様の優しさに触れ、好意をもったが、今度は獣人族だと言うことがバレてしまった。

体力が半端に回復したせいで体が人間に戻ったのだ。

でも、お嬢様はびっくりはしたが、それでも態度を変えずに、看病をしてくれ、ご両親にも話、しばらく御屋敷で過ごせるようにしてくれた。

お嬢様のご両親もご兄弟もとても優しくて、私は傷が治っても御屋敷に居座ってしまった。

お嬢様達は、何度も帰らなくても良いのかと聞いてきたが、私は隣国に帰ってもまた命を狙われるだけであることを伝えると、お嬢様達は悲しみ、ずっとここに居てもいいと言ってくれた。

もしかしたら刺客がくるかもしれないと脅してもお嬢様達は笑って、大丈夫よと言った。

ここは隣国よりも遠く、小さな街だからと。

情報もなかなか入らない田舎だから、きっとバレないと。

それに、私達は、これでも強いのよ、普通の貴族様よりは。

と笑うお嬢様達に涙が流れた。

その時から私はなんとしてもこの家族を、お嬢様を護ると決めたのだ。

見ず知らずの獣人を匿い、そして愛してくれた優しい方たちを。

お金に困っていれば、助けるためにも少しお嬢様の傍を離れ、ある程度お金の入る仕事をした。

勿論変装して。

今回だってそうだった。

お嬢様の傍を離れたタイミングだった。

その時にあの公爵達はやってきて、お嬢様に契約を迫った。



「本当に腹立たしい。」



私がいればっと思った。

私が帰った時にはもう契約は済んでおり、公爵がご両親に嘘八百の出会いを話しているところだった。

お嬢様に想い人がいることは知っていたが、お前ではない。

私は心中怒りでいっぱいだった。

しかし、お嬢様の決めたことに私は反対できず、そのまま、お嬢様は嫁にと行かれてしまった。



「しかし、あんなにお嬢様をほっておいて、他の女にうつつを抜かすとは。お嬢様ほど優しくて美しく、そして獣人族の求めているものをくださる方は、いないというのに。」



何が姫だ。

美しいだけで嘘だらけな女だ。

私は知っている。

私は一目見ただけで分かるのだ。

そしてお嬢様は本当に美しい心をもっている。

だから私はお嬢様に心を許せた。

だから私はお嬢様達を愛せた。

そしてこんな私を愛してくれた。



「ふふふ、一目で分かってしまうなら、セッカに嘘はつけないわね。」


「気持ち悪くないのですか?」


「あら、なんでかしら?セッカに嘘をつかなければいいのでしょう?」



なんでもないように言うお嬢様。

あの言葉がどれだけ私を救ったか。

お嬢様は知らないでしょう。

でも、私はお嬢様に2度救われた。

お嬢様をどんなことをしても幸せにしなくてはならない。



「なのに、なのに、なのにっ!!!」



嗚呼、私が獣の獣人族ならば、今咆哮を上げただろう。

怒りの咆哮を。

私が鳥で良かった。

嗚呼、お嬢様。

私は本当にあの男が嫌いです。

あの屋敷だって嫌い。

お嬢様は笑うけど、私は嫌い。



「ゆめゆめ忘れるな」



私は見続けている。

お嬢様が涙した瞬間、私はお嬢様を攫う。

どれだけお前達がお嬢様を大切に愛しく思っても。

お嬢様を幸せにできなければ、私は全てを投げ打ってでもお嬢様を連れ去る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ