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逃げ惑い、怪我を負い、そして倒れた時に出会った奇跡。
それがミシェル。
「最初、セッカをあの子が連れて帰ってきた時、とても驚きました。怪我をした鴉を連れて帰ってきたのですから。そして、彼女を助けてと。彼女は獣人族だから、本当に信頼出来るお医者様じゃないといけないって言ってね。それこそ母に幼い頃からついて行ってたので、獣人族の方々がどのようにされているかもよく知っていたので、それはそれは必死にそう訴えてきました。当時5歳の少女がです。それを薄ら意識のあったセッカは聞いていて、それはそれは感動したそうです。私のためにこれだけ必死になってくれる人がいるだなんてと。」
「確かに、同じ立場ならば、本当にミシェルをそれこそ神だと思えたとでしょう。同じ獣人族だからこそ、よく分かります。」
俺は幸運なのか、そんなことにあったことは無かった。
それこそ国から情報を守られている立場だった。
故にしんどい思いをしたこともあったが、命を狙われることはなかった。
そんな俺でも、ミシェルと出会ったことは奇跡だと感じ、そしてミシェルを女神だと感じているのだ。
そんな中で、出会ったミシェルを神だと崇めてもおかしくない。
「ハハッ、まさか公爵様にも納得頂けるとは。もしかして、公爵様もミシェルに対して、その、女神だとか、神だとかそんなことを思いでは?」
「えっ、えぇ。ミシェルは私の女神です。」
「嗚呼、やっぱり。本当にミシェルは母の血をしっかりと受け継いでますね。」
「やっぱりとは?」
「先程もミシェルは母の才能を受け継いでいると言いましたよね。それは弓だけではありません。種族、人類問わず、慕われるのも受け継いでいると確信しています。母は、そのカリスマ性から、それこそ国の王族等、地位のある者から、獣人族等の種族の違う者、あらゆる方達から慕われています。今も、またその人々は増えていることでしょう。それが母です。その厄介な才能は、家族にとっては大変な面も多くあります。事件に巻き込まれたことも、多くあります。しかし、まぁ、母、本人が解決することができるので、良いですが。そんな厄介な才能やでもミシェルは受け継いでいます。あの子は、とても不思議でしょう?」
「不思議、とは?」
「公爵様とは、始まりは契約結婚。しかも、距離を置いていた。そうセッカからも聞いてます。しかし、今は、ねぇ。何故、そうなったか。それこそ今までも、あの子に対して、否定的な人がいなかった訳ではありません。それこそ、母に連れられていった場所は、母を慕ってはいるが、それ以外は認めないという方も居ました。孫だからと可愛がられているミシェルを認められないという人も居たそうです。しかし、そんな方達も、ミシェルと一緒に過ごしていくうちにミシェルを認め、慕いはじめたのです。」
義父の話から、ミミに冷たい態度で接していた者がいると聞いて、腹が立つ。
しかし、今では慕っていると聞いて、自分と同じではと感じてしまった。
「ミシェルは無意識の内に、周囲の人達が求めている姿になるんです。相手を思うが故に。勿論、演じているわけではありめせん。ミシェルが心の底から相手のことを考えた故に、その姿になるのです。ミシェルは、相手が何を求めているかを感じられる力がとても強い。母から、その力も受け継いだのでしょう。弓の才能とは違って、目には見えぬ力なので、憶測でしかないのですがね。公爵様も何か思い当たるのでは?」
たっ、確かに、ミシェルは俺以外にも、エレナをはじめ、屋敷の者たちにはとても慕われているし。
他にも、沢山。
嗚呼、気づけばミシェルを慕っている者は沢山いる。
「故に、私達はあまり外に出ることをしませんでした。ミシェルを守るという意味も込めて。」
「守る?」
「あの子自身が、その力には一切気づいてはおらず、それこそ知らず知らずなのです。制御しなさいといっても、何をというのですから。そんなミシェルを王都につれていけば、どうなることやら。幸いと言ってもいいのか分かりませんが、うちは色々あって、貧乏でしたから。王都にいくのも無理だとミシェルも思っていたようで、色々なものに参加せずとも理由ができてますから、ミシェルも他の方々も、納得してくれたので、王都に行くことなくいることができました。もし、行っていれば、多分、ミシェルのそのの才能に惹かれた誰かに、それこそ婚約を望まれ、公爵様と会うことなく、結婚していたかも知れません。」
「そんな!」
もしかしたらそんな未来があっただなんて。
いや、考えられないわけではない。
俺と出会うまで婚約もしていなかったことが奇跡なのだから。
ミシェルほど魅力的な人ならば、王都に行ってしまえば数多の数の求婚があったはず。
それこそ、姫にしか目がいっていなかった俺が気づかないうちに。




