124
「ミミ。」
「私ね、お母様に全てお話したいと思ってきたの。」
「全てを?」
「えぇ、お母様は、きっと全て話さないと旦那様を許してくれないと思ったから。」
「ゆっ、許すつもりは、一切ないわ!私の大事な娘を!!」
「お母様!!落ち着いて。お願いだから、話を聞いて。」
そこからゆっくりと今まであったことを話した。
旦那様達が獣人であることは秘密だから話せなかったけども、そこ以外は全て話した。
旦那様が元々どんな目的でここにやってきて、私に契約を持ちかけたのか、そしてどうして私がその話に乗ったか。
そして屋敷に、行ってからの私の生活。
出会った人のこと。
そして、旦那様がだんだん変わってきたこと。
どうやら、旦那様の初恋の相手が私だったということ。
そして、金さん、想い人にも会って、ちゃんと終わらせることが出来たということを。
それはなによりも旦那様がいてくれたから。
だから、私は今も笑っていられるということ。
そして、そんな旦那様を愛しているということを。
「ふふふ、こう振り替えると結構色々ありました。」
「笑い事じゃないわ!いっ命を狙われていたかもしれないのよ!」
「大丈夫、そこまでのことは姫様もしなかっただろうし、なにより旦那様が守ってくださってるし。」
「そんな、でも、結局、その夜会では間に合ってないじゃない。」
「えぇ?まあ、それは私も1人で解決する力はありますし、それはお母様もしっているでしょう?」
「えぇ、そりゃあ、あのお祖母様達があなたには才能があるって、連れ回して修行をつけてるからあるのはよく知っているけども。」
「私は私に力があるからこそ、今も旦那様といれる自分がとっても嬉しいし、幸福だと感じられるんです。私、守られるだけじゃ嫌です。なんたってお母様の子ですから。」
そう言えば、お母様は目を見開いて、そして、苦笑を浮かべてそうねとため息混じりに呟いた。
「えぇ、えぇ、それはよーくよーく分かるわ。なんたって、私がよーくよーく旦那様に言っていたものね。守られるだけの妻は嫌だと、だからこそ、この小屋を立ててもらって、私なりに家族を守れる力をつけていたのだから。それを幼い時からあなたは見ていたものね。ミミ。」
「えぇ、ずーっとずーっと見ていましたよ。どんなに怒られても止めない諦めの悪いお母様を。」
「あら、酷いわね。」
そう言いながらも、楽しそうに笑うお母様。
そんなお母様が私は大好きだった。
他の貴族の方がどうかは知らないけども、でも、私のお母様が最高のお母様であるってことは今でも確信を持って言える。
だから、そんなお母様だからこそ。
「私は、旦那様と一緒にそばで立っていられることが何よりも幸せだと感じるのです。始まりはそれはあまりいいものだとは言えないことは百も承知のことです。でも、私はそれでも、今、旦那様の隣にこうして居られることが本当に幸せなんです。」
「そう、うぅ、まさか、あの時のお父様とお母様の気持ちを今になって知ることになるとは。可笑しいわね、もう嫁に出したのは数年も前のことだと言うのに。それなのに、今更こんな気持ちを知ることになるなんて。嫁に出すときには、快く送り出したのにね。まさかまさかのどんでん返しよ。こんなに反対することになるなんてね。あの時、お父様達がどれほど言ってもなかなか聞いてくれなくて、腹が立って、家出して、そしてようやく許してもらえて。」
「えぇ!?お母様!家出したのですか!?」
「えぇ、そうよ。私の時には、異国の者に嫁に出す訳にはいかないって、すんごく反対されてね。今までも、草なんか育ててなんて言われていたのに、結婚まで反対されるなんて、本当に腹が立って、1度家出したのよ。そうしたら、1番初めに旦那様が見つけてくれて、それで、ようやくお父様達が許してくれてね。なんで、そこまでいわれなくちゃいけないのって、思っていたわ。私が好きで結婚したいのにって、私がいいなら、いいでしょうって!そう思っていたけども、今になってよーく分かるわ。そう思っているのを知っていても、相手を許せないで反対する気持ち。でも、そうよね、いつまでもしていたって、なーんの解決にもならないし、何よりも、あなたはもう公爵家に嫁に言って、今、ちゃーんと幸せなのよね。」
「ええ、幸せよ。とっても幸せ。」
「そうね、そうよね。ならば、私が引かなきゃね。まぁ、暫く、公爵様のことを恨みがましく見ちゃうかもだけど。もう離婚させるっなんては言わないわ。」
「お母様ー!」
「あらっ!」
嬉しくって、お母様に抱きつけば、お母様はそっと抱き返してくれた。
そして、優しく頭を撫でてくれて。
「ミシェル、あなたが幸せなのが何よりも私達は嬉しいわ。」
「お母様。」
「だからこそ、もし、あの公爵様に泣かされることがあったらすぐさま帰ってきなさい。どんなに旦那様に止められても、このお母様が百倍返ししてあげるからね。全ての力を使ってでもね。」
「もう、お母様ったら。」




