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お母様!
まさか、そう思っていただなんて!
そう言えば、想い人に対して詳しく話したことなどなかったんだった。
正直、話したところで、あんな数日のことで、と言われてしまったら、やはり家族にそう言われるととても辛いと思って、話せずだった。
他の誰に言われても、どうも思わないけども、家族に言われてしまうととても辛い。
故に黙っていたのだけども。
そのせいで、お母様は勘違いしていたのね。
「なのに、なのに、調べれば調べるほど出るわ出るわ。これほど社交界から離れていたことを後悔したことはないわ。」
「お母様。」
「私にとって、社交界なんて、地獄でしかないし、金の無駄遣いでしかない所だけども、それでも少しでも出ていれば、私の大事な娘をこんな所に嫁に行かせなかったのに。」
「まあまあ。でも、今はとっても大切にしてくれているじゃないか。」
「今はでしょう!!もう、あなたもミミもお人好しすぎるから困るわ!もちろん、そこがいい所なのだけども、それで人に騙されたりしたら困るから、私がしっかりとしないといけないのよ!」
「そうだね。君がしっかりとしてくれているから、僕は安心して仕事ができるんだよね。ありがとう。」
「もっ、もう!なによなによ!急に!!私だけのおかげでは無いわ!ミミも貴方も人の見る目は確かだから、そんな変な人、勿論、利用しようだなんて人とは関係をもつことはなかったわ。これまで1度も。」
「そうだね。一応、うちの母の血筋だからね。人を見る目は確かなんだよね。だから、ミミだってちゃーんと見ているはずだよ?ねっ、今、君が言った通りにね?」
「あっ。」
流石はお父様だ。
自然にその流れで、お母様を納得させてしまっている。
お母様は悔しそうにだが、頷かないといけない状態になっている。
「うっうぅぅっ!!認めないったら認めないんだからね!!!」
「お母様!」
どうしても頷きたくないお母様は旦那様を指さして、叫んでから部屋を出ていかれてしまった。
嗚呼、この光景はよくお父様に怒られて拗ねてしまった時によく見た光景だわ。
懐かしい。
「嗚呼、行っちゃったね、ミミ、後でフォローしておいてくれるかな?」
「ええ、それは勿論。でも、お父様もしておいてね?」
「勿論だよ。でも、まず、ミミ、君がどれほど幸せなのかを伝えてからだよ。そうしないとお母様も納得しないからね。」
「えぇ、しっかりと話させてもらうわ。ふふふ。」
「すみません、公爵様。うちの妻は少し感情が出やすい性格でしてね。」
「いっいえ。私も覚悟はしてましたから。それだけ酷いことをミミにしてしまったことは。」
「あら?そうでしたっけ?」
私、なにかされましたっけ?
正直、思い返しても思い当たることは一切ないんですよね。
さっきも言いましたけども。
契約自体は納得してですし。
「はははっ、公爵様とミシェルとの中でどうやら大きな食い違いがあるようだ。まぁ、それもこれも公爵様がうちのミシェルを大事にしてくれているからこその食い違いだね。まぁ、うちの子は正直言って普通の貴族娘とはあまりにも違っていますからね。それもこれも、私に領主としての才があまりなく、うまく領地を回せていないからこそ、貧乏で、普通の貴族娘のように育ててあげることができなかったからなんですがね。」
「んー、それは公爵家にお嫁に行ってからよく分かったわ。私って、ちょっと、いや、かなり違っていたってことを他の方々を見て気づいたわ。でも、お父様。私、そのことを不便に思ったり、辛いと思ったことはないわ。正直、貧乏すぎて妹達が困らないかなんてのは心配してたけど、私自身は、皆と畑仕事するのも、狩りに行くのも楽しかったし、それこそお祖母様が率先して弓を教えてくれたから、力も付けれたし。私はお父様達の子どもで良かったなって思うのよ。」
そのおかげで、姫様を助けられたし、悲しい終わり方だったかもしれないけども、金さんにも会えた。
それになにより。
「今の私だから、公爵様、旦那様にお会いすることができたのよ。だから、私は本当にお父様達の子どもで幸せよ。」
「そうか、そうか。ミシェル、お前も公爵様のことを大切に思っているんだな。」
「ふふふ、えぇ。まぁ、その、まだ旦那様と同じぐらいの思いかどうかまでは分からないのだけども。でも、でもね、旦那様と結婚したことを後悔したことはないし、とっても幸せよ。」
「そうか、それなら良かったよ。ミシェル、お前の幸せが何より1番大切だからね。」
「ふふふ、ありがとう。お父様。」
「嗚呼、そのことをしっかりと拗ねてしまったお母様に伝えてくれるかい?」
「ええ!」
そうと決まれば、拗ねてしまったお母様を見つけないと。
拗ねてしまったお母様はいつも、あの場所にいるはずだけども、今もあの場所なのかしら?




