12
エレナさんとのお話のせいでねむれなくなってしまった。
私が注目されているだなんて、ありえない。
何度か寝ようと思って目を瞑るが全然眠気がきません。
あれほど疲れていたというのに。
「はぁ、帰りたくなってしまったわ。」
私が注目されるなんて。
もう、絶対に社交界になんて出たくありません。
怖すぎます。
こんな平凡な公爵夫人なんて。
「なら、帰りましょう。お嬢様。」
「へっ?」
誰もいない部屋のはず。
なのに、上から声が。
そっと瞼をあけると目の前に誰がいる。
「私が連れ出しますので、ご安心を。」
「えっ、えっ、えええええーーー???」
思わず大声を出してしまいました。
こんな夜更けなのに。
でも、仕方がありませんよね。
だって、誰も居ないはずの部屋に、まさかの人がいるんですから。
「おっ奥様!!!」
急に明かりがつき、息を切らしたエレナさんが部屋に入ってきます。
その後に数秒遅れて、バタバタとメイドさん達が奥様、奥様といって現れる。
あれあれ、なんか大変なことになってしまいましたね。
「なっ!あなたは!!奥様から離れなさいっ!!」
エレナさんは今まで見たことがない形相を浮かべ、私の上の人を退かす。
そして私を護るように抱きしめている。
私の上の人はサッと避けてベッドの隣りに立ってている。
部屋にやってきたメイドさん達もすごい形相で睨んでいますが。
っというか、あれ?
「エレナさん、その耳は?」
「えっ。」
「それに、皆さんも、耳に尻尾にと。」
「「「あっ。」」」
凄い形相で睨んでいた人達は今気づいたように表情を変え、急いで耳や尻尾を隠そうとしますが見えてしましました。
えっと、あの、もしかして、皆さん。
「この屋敷の者全て獣人族ですよ。お嬢様。」
そう言って答えるのは私の隣に立ってている人。
忌々しそうにエレナさん達を見ている。
嗚呼、やっぱり。
何人かではなく、全員なんですね。
「うっ、それよりもあなたは一体誰です!奥様になんてことを!!奥様を襲おうとしたのですか!?この完璧な屋敷に侵入するなんて!」
そう言って殺気立つ皆さん。
嗚呼、可愛らしい耳がピーンっとたってますね。
って、嗚呼、どうしましょう。
私が大声を出してしまったが故にこんなことに。
「すみません。皆さん。心配をお掛けして。」
「奥様?!何故謝るのです?悪いのはこの侵入者ですし、それを許したこの屋敷の兵たちですわ!!」
本当に役ただずどもめって、怒ってます、エレナさん。
いや、いやいや。
悪いのは私なんですよ?
この屋敷の護衛騎士さん達は、悪くないんですよ。
だって、この人は。
「いいえ、悪いのは私です。まさか、着いてきてただなんて。」
「着いてきた?」
「はい。この子は私の実家のメイドの1人、セッカですわ。」
「メイド?」
「はい、メイドです。」
わなわなと震えて指さす先にいるのは我が家のメイド。
何故か服装は男性のものですし、あんなに長かった髪は短くなっているし、元々背も高かったから男性に見えるかもしれませんが、メイド、女性です。
「しかし、なんで、セッカがここに?」
「お嬢様が心配で荷物に紛れて忍び込んだんです。旦那様達はお人好しのお優しい方達なのであの嘘くさい話に騙されてしまいましたが、どう考えても可笑しい話。きっとお優しいお嬢様は騙されているのではと思い心配して着いてきたのです。」
嗚呼、やっぱり、バレていたのですね。
そりゃそうですよね。
セッカは常日頃私の傍にいましたものね。
私がそんな雰囲気一切ないのを見抜いてますよね。
でも、だからって忍び込むって。
「忍び込む!?この屋敷にですか?言っておきますがこの屋敷はそれこそ王宮よりも厳重な警備なのですが!!どうやって。」
「言ったでしょう?荷物にって。」
「荷物っと言ってもあなたが入れるような大きなものはなかったはずよ!!」
あー、まぁそうですね。
セッカは普通の女性よりも大きいですし、このサイズが入る荷物はありませんでしたよね。
ええ、このサイズなら。
「あの、セッカなんですが、実は皆さんと一緒なのです。」
「一緒って。」
「まだ気づかないのですか?猫の癖に。」
「あっ、この匂い。まさか!!」
「そうです。私は獣人族の鳥の一族の者です。あなたがやってきた日、いえ、あの同族がやってきた日に獣人族っと言うことは分かっておりました。しかし、まさかこの屋敷の者が全てだなんて。」
そういえば、セッカ、クリスさんが来た日も、エレナさんが来てからの数日、隠れるように居ましたね。
だからクリスさんは勿論、エレナさんも会ったことがありませんでした。
一応、私の傍にいたようですけど、この子、元々の生活のせいで隠れるのがとても上手なので。
お二人共気づかなかったようですね。
「お嬢様、この屋敷の者は、みんなお嬢様を騙していたのです。こんな屋敷にお嬢様を置いてはおけません。」
「セッカ?一体何を?騙していただなんて。」
一体なんのことでしょう?
騙していたなんて。
きょとんとしてセッカを見ていれば、セッカは私の肩を掴んできました。
「お嬢様!?」
「はっ、はい??」
「もう、お嬢様はお人好しというか、なんというか。本気でそう思っているからタチが悪い!!いいですか!?あなたは普通の公爵に嫁いだ訳では無いのです!獣人族ばかりの御屋敷をもつ公爵に嫁いだのですよ!!お嬢様にはバレないようにして!こんなの詐欺です!本来、普通の女性なら泣くか、怒るかの事ですよ!」
そうは言われても、別に公爵様が獣人族だった訳でもないのに。
私は一応、公爵様の嫁として参ったものですから、その後御屋敷の人達が獣人族でも詐欺ではないでしょう。
ちゃんと契約したことは守ってくれていますし。